「ヴェルテフレーデン(12)」(2020年04月29日)

話をヴェルテフレーデンに戻そう。

ヴァーテルロー広場の南側を占めていたオランダ植民地軍将校と兵員の居住地区9.3H
aを5星級ホテルに変える構想を抱いたスカルノ大統領は1963年にその建設を指令し
た。当初の青写真は6階建て220室だったが、スカルノの立場に取って代わったスハル
トが1965年に更に大型化させるよう命じ、12階建て695室のホテルとして197
4年3月に公式オープンした。

スカルノ大統領はこのホテルをホテルバンテンと命名するつもりだったが、ジャワ人スハ
ルト大統領はボロブドゥルの名称を選択したようだ。


ホテルボロブドゥルの西側のプジャンボンPejambon地区には現在、外務省がある。外務省
敷地内には1830年に建てられた館があり、東インド植民地軍司令官だったヘルトフ・
ベーンハードHertog Bernhardがかつてそこを居所にした。ベーンハード公爵はドイツの
ザクセンワイマーアイゼナッハSachsen-Weimar-Eisenach領主の息子であり、父親の没後、
遺産を得られないことを知ったかれは1834年に蘭領東インドに新天地を求めてヨーロ
ッパを去った。植民地官僚を務めてから軍に入り、1849年には東インド植民地軍司令
官となって1852年までその職を務めた。当時、軍司令官は副総督の地位に就いたから、
かれは新天地で栄光の階段を上り詰めたことになる。

東インド植民地軍司令官の官舎は最初、ヴァーテルロー広場の北側で現在カテドラル教会
Gereja Katedralが建っている場所にあった。1828年12月に植民地政庁はその場所
を2万フルデンでカソリック教団に売却し、広場の南側に新しい司令官官舎を建てた。ベ
ーンハード公爵が住んだ建物だ。しかし1916年に戦争省がバンドンに移転したため司
令官もバンドンに移り、その直後から国民参議会Volksraadがそこを使うようになる。日
本軍政期には独立準備委員会が使用してインドネシア共和国憲法の議決などが行われたこ
とから、今はパンチャシラ館Gedung Pancasilaと名付けられている。パンチャシラ館は外
務省の所属になっていて、外務省が業務で使用している。

ヘルトフ・ベーンハードはその軍司令官官舎に住んだ人々の中のひとりだったはずなのだ
が、かれの名前だけが地名に残されたのは公爵というステータスのおかげだったのだろう
か?このプジャンボン地区にはプジャンボン公園Taman Pejambonがあり、昔はヘルトフス
パルクHertogsparkと呼ばれた。昔、プリブミの間ではクブンサユルKebun Sayurというの
が通称になっていたが、それはその周辺に住んでいたオランダ兵のために野菜がそこで栽
培されていたからだ。

ホテルボロブドゥルの南側は既述通りの、モッスル総督のヴェルテフレーデンカントリー
ハウスが建てられていた場所だ。1836年になって東インド植民地軍ヴェルテフレーデ
ン大病院Groot Militair Hospitaal Weltevredenがそこに建てられた。

この病院はプリブミ医師の養成に貢献し、ついには東インド医師養成学校School tot 
Opleiding van Indische Artsen 略称STOVIAをその付属機関として1898年に開校して
いる。アブドゥラッマンサレAbdul Rachman Saleh通り26番地のSTOVIAの建物は現在、
国民決起博物館Museum Kebangkitan Nasionalになっている。また、軍ヴェルテフレーデ
ン大病院もインドネシア共和国陸軍に引き継がれて、ガトッスブロト陸軍中央病院Rumah 
Sakit Pusat Angkatan Darat (RSPAD) Gatot Subrotoになっている。


更に南でプラパタン通りに面した場所には海兵隊本部や宿舎、警察機動旅団クウィタン司
令部や隊員寮などが連なっている。それらの建物は1800年代初期にまで歴史をさかの
ぼることができる。警察機動旅団クウィタン司令部は共和国独立前、軍病院院長の官舎だ
った。

東インド植民地軍第十歩兵大隊もこのエリアにいて、Batalyon Xという名で知られていた。
最初X大隊司令部は今ホテルボロブドゥルになっているエリアにあり、兵員は軍病院の南
側一帯に住んだ。ずっと後になって、STOVIAがサレンバ地区に移転した後、X大隊司令部
がSTOVIAに入ったこともある。兵員はアンボン人・ティモール人・マナド人で構成されて
いた。アンボン人が住んでいた地区はカンプンアンボンと呼ばれて一般人はその地区に入
って行くのを怖がった。クウィニ2通りJl Kwini IIには海兵隊の司令部や営舎が設けら
れていた。[ 続く ]