「タバコひと箱5万ルピア(後)」(2016年09月20日) インドネシアではロコプティと呼ばれるシガレットタバコの著名ブランドひと箱当たり価 格は1万6〜7千ルピアで2万ルピアを割っている。子供の小遣いでも買える金額になっ ているということだ。 2016年7月に発表されたインドネシア保健経済ジャーナルの中にひとつのリサーチ結 果が掲載された。それによれば、タバコひと箱の価格が2万5千ルピアになっても喫煙を やめる者は14.5%しかいないが、5万ルピアになれば72%が喫煙をやめると考えて いる。 国民喫煙者を減らす方針は国民保健行政にとって必達のテーマであり、国民健康保障財政 の健全化を促すための重要な政策ではあるものの、タバコの税金による国庫収入が増大す るに従い、大きなジレンマとなって政府にのしかかっている。2005年には32.6兆 ルピアだったタバコの税金収入は2016年に139.6兆という大きな財源に育ってい る。更にはタバコの製造ビジネスが巨大産業になっていることから、その産業を保護する ことで政治家に金銭的なメリットが生じることは目に見えている。インドネシアの政界が マネーポリティクスの様相を濃くしている昨今、政治センターがそのような反生産的な行 動を実践することは考えにくい。更に、タバコ葉生産加工農民や工場で働いているタバコ 製造工員の失業という労働問題も控えている。 おかげでインドネシアのタバコ生産は順風満帆の勢いだ。2005年のシガレット生産数 2,227億本は2015年に3,480億本に増加した。それを国民一人当たりの消費 本数になおせば、ひとり年間1,365本となり、老人から赤児までひとり一日4本のタ バコを吸っていることになる。 インドネシアで大きな問題になっているのは、未成年者喫煙問題だ。タバコ業界の国内販 売戦略は、既に女性と未成年者を重要な販売ターゲットの位置に据え、販売促進をプッシ ュしている。中高生をタバコ常用者に仕立て上げれば、その先数十年のタバコ消費は確保 されることになる。 未成年者へのアルコール飲料販売禁止はあっという間に体制が整えられたというのに、タ バコ販売禁止は遅々として進んでいない。 ASEAN加盟国の国別平均喫煙開始年齢は次のようになっている。ただしこれは、20 09年から2012年までのデータが混在しているので、現在最新のものと言うのはむつ かしいかもしれない。 国名: 喫煙開始年齢(歳) カンボジャ: 21.1 ベトナム: 19,8 シンガポール: 18.0 フィリピン: 17.7 インドネシア: 17.6 タイ: 17.4 マレーシア: 17.2 ラオス: 17.2 [ 完 ]