「家出?誘拐?詐欺?人買?(1)」(2016年11月30日)

イスラム教徒の国で、少女たちがミニスカートに生足をさらし、舞台の上で歌い踊ってい
る姿に驚くひとが少なくないそうだが、田舎へ行くと、とてもそんなものなど足元にも及
ばない現実を認識することができる。

たとえば、ユーチューブで「dangdut kampung vulgar」「dangdut kampung hot」などの
キーワードで検索をかけ、出て来た動画を見ていただければ、きっと納得していただける
にちがいない。そう、それがインドネシアなのだ。


インドネシアには、そのようなダンドゥッステージのドサ回りがたくさんいる。そういう
環境の中で歌唱力に磨きをかけ、都に上って大スターになったひとも少なくない。もちろ
ん、都のスターとして勝負するときは、あのセクシーな振りはご法度になるのが普通だが。
ドサ回りのダンドゥッステージに若い女のダンサーがたくさん登場すれば、村の青年たち
の人気が高まり、ステージのショーへの観客動員力も倍増し、熱狂的な雰囲気の中で観客
の金遣いも荒くなろうというものだ。観客が大いに金を使ってくれなければ、ステージ主
催者の持ち出しになってしまうかもしれない。それではこの商売を行う意味がないではな
いか。

しかし若い女のダンサーをリクルートするのはむつかしい。若い身空のかの女たちには、
まだまだ恥じらいや外聞への躊躇心がたっぷり残されている。自分がそんなことをして、
もしも両親がそれを知ったらどんなに怒られるか、ましてや親不孝者の烙印を捺されたな
ら、近所に顔出しすらできなくなってしまう。

こうしてダンドゥッステージ主催者は詐欺犯罪と呼んでもおかしくない騙し行為を若い娘
に仕掛けていくようになる。それと同じことはおぼこな娘たちを騙して売春宿に売り飛ば
す人売行為での常套手段にもなっているのだ。


2016年11月20日、リアウ島嶼州サグルン警察署に住民から届出があった。13歳
・15歳・17歳・18歳・19歳の、それぞれ家庭が異なる5人の娘の親たちからの、
娘が行方不明になったという届出だ。

サグルン署員はすぐに捜査を開始し、情報を集めてその5人がどこで何をしているのかを
突き止めた。娘たちを連れ去った関係者三人(18歳・28歳・41歳の男)も11月2
3日に逮捕されている。

この事件は決して誘拐・拉致・かどわかしといった内容のものではない。犯人は貧困家庭
の娘たちに焦点を当て、食堂や食べ物売り場で働く仕事があって、勤務時間は短く、給料
は高い、というでっち上げ話をして娘たちを誘った。5人の娘たちはそれに飛びついてき
たというわけだ。娘たちが親の承認を取ろうとしなかったのがそもそもの間違いの元なの
だろうが、言えば反対されるに決まっていると娘たちは考えたのかもしれない。[ 続く ]