「家出?誘拐?詐欺?人買?(終)」(2016年12月02日) 警察の記者発表によれば、警察に保護されるまで、娘たちはバタム島南部海岸地区の村々 で開催されるダンドゥッステージに数回出演していたとのことだ。もちろん肉体のライン を浮き立たせるような衣装を着せられたものの、一応上半身はすべて覆われており、決し て乳房の一部やへそ、あるいは背腰などの肌を露出するようなポルノチックなものではな かったという警察の説明だったが、肉体のラインをくっきりと浮き出すものはポルノチッ クでないというのがインドネシア人の感覚なのだろうか? かの女たちのダンサーの仕事は歩合制だ。固定給などもらえるわけがない。ドサ回りダン ドゥッステージは、広場や野原でも屋内でも開催され、場所を問わない。 さて、ダンドゥッステージに集まって来た客の全員から入場料を取ることは不可能なので ある。それがどうしてかは、ユーチューブのビデオをご覧になれば、理由が想像できるは ずだ。 それが商売になるのは、歌をリクエストしたり、歌手と一緒に踊りたい観客に一回(一曲) 6千ルピアのチケットを販売するという仕組みになっているためだ。だから野原のダンド ゥッステージで、大勢の男ばかりの聴衆の間の入って何時間も踊り狂い、1ルピアも使わ ずに帰宅する者もいれば、ステージに上がってセクシーな歌手やダンサー相手に踊り狂い、 女たちの胸元にサウェラン(saweran)と呼ばれるご祝儀を差し込んで、何十万ルピアもの 金を使って帰宅する者もいる。 お気に入りの歌手や踊り子ができると、何十万どころか、何百万もの金を惚れたかの女に 注ぎ込む男も現れる。大枚の金を女に与えるのは、その女の価値をその金額で評価してい ることなのだそうだ。男が値踏みする自分の価値が気に入れば、女が男に自分を与えるこ とも起こりうる。決して自分のセックスを金で男に売り渡すのではないという判りにくい ロジックがそこに介在する。互いに家庭を持ち、伴侶がいても、一夜の親睦は起こりうる ものだったらしい。 一方で、男の妻たちは夫のそんな行動を快く思うはずがない。だからドサ回りステージ女 性歌手や伝統芸能の踊り子たちは、かの女たちの心意気とは裏腹に、世間から半ば売春婦 扱いされてきた。きっと、日本に昔あった河原者の世界に通じると思われるそんな環境が、 インドネシアの地方部にはいまだに存在しているということなのかもしれない。 で、ドサ回りステージのダンサーにされた5人の娘たちは、6千ルピアで売れたチケット 販売収入から、チケット一枚につき2千ルピアが支給されたそうだ。一日のステージでい ったい何枚のチケットが売れるのか、わたしにはわからないのだが・・・・。[ 完 ]