「オンラインタクシーの乗車には警戒を」(2017年10月23日)

2017年10月17日深夜23時40分ごろ、バタム島ハーバーベイの客待ちタクシー
駐車エリアに大柄なムラユ系の男がやってきて、タクシーを探した。

客待ちタクシーが並んでいるのに、それには目もくれず、酒臭い息をしながら目当てのタ
クシーを探している。どうやら乗る気ではないらしい。

ついに探し当てたタクシーに向かって男は大股で近付いていくと、運転手に叩きつけるよ
うな口調で話しかけた。売り言葉に買い言葉で、タクシー運転手も怒鳴りはじめる。そし
てふたりの間で手が出て足も出た。

一対一の喧嘩は、大柄な男が勝った。運転手は顔に青あざを作って地面に転がる。それを
見ていたタクシー運転手仲間が集まって来た。物事の是々非々よりも仲間への連帯意識の
ほうを重視するのがインドネシア文化だ。大柄な男は大勢の運転手仲間に吠え掛かって威
嚇する。このままではストリートジャスティスのリンチに発展するかもしれない。

しかし、それよりも早く、バトゥアンパル署のパトカーが慌ただしくやってくると、喧嘩
したふたりを車に押し込んで去って行った。


翌日、バレラン警察本部でその事件の記者発表が行われた。大柄の男はシンガポール国籍
者で、妻と一緒に17日にフェリーでバタムに着いたばかりだった。その夫婦はグラブタ
クシーを呼んで、それに乗った。ところがタクシーに乗り込むときに、在来タクシーの運
転手がふたりの写真を撮ったのである。

シンガポール人夫婦、特に妻の方が得体のしれない不安、というよりも恐怖を抱いた。夫
婦はそのままホテルへ向かったが、夫のほうが捨て置けないと決意したようだ。そして冒
頭のシーンへと移行して行った。

タクシーの運転手はその夫婦を写真に撮る意図はなく、要は客を拾っているグラブタクシ
ーの現場状況の写真を撮っただけであり、乗客が誰であろうが構わなかったらしいのだが、
勝手に写真に撮られるほうはそういう簡単なことにはならない。

メディア報道では、その事件は両者の誤解によって起こったことだ、という警察の軽い説
明が記されているのだが、その雰囲気から法的措置が取られない印象が感じられても、そ
うならない可能性のほうが高い。果たして法的措置へ進むのかどうなのか?どちらにどう
いう罪状を適用するのか?タクシー運転手のカメラに残った画像はどうされるのか?今後
の進展が興味津々たるところである。


インドネシアではいまだにオンラインタクシー事業に対する姿勢が行政側で統一されてお
らず、在来タクシーからの拒否や排斥行動が継続的に行われている。最終的に共存せざる
を得ない状況に向かっているとはいえ、在来タクシー運転手からの感情的反発はまだ強く
残っており、ヨグヤカルタ市のようにオンラインタクシーが客を乗車させてはいけないエ
リアが決められるようになっていく可能性が高い。

たとえばヨグヤのアディスチプト空港はオンラインタクシーが客を乗車させてはならない
場所になっており、そこでは乗せてきた客を下ろすことしか許されない。つまり客がアデ
ィスチプト空港にオンラインタクシーを呼んでも、空港の外へ行ってその車に乗るしかな
いということなのである。