「進化する結婚観(前)」(2017年11月23日)

結婚の減少が世界的な傾向であるとはいえ、インドネシア社会はまだまだ結婚を通して男
女が共同生活をするという規範が維持されている。ミレニアル世代の若者たちも結婚を望
んでいる。ところがミレニアル世代にとっての結婚は、かれらの上の世代がサバイバルや
愛といったものを結婚の動機に据えたのと異なり、自己実現のためのファシリティだと見
なされている。

ミレニアル世代のセックス行動がよりオープンである反面、結婚への意欲も十分にある。
ただかれらにとっては、結婚生活がもたらす社会的経済的負担が大きい検討項目の位置に
置かれているのである。


2014年2月16日のニューヨークタイムズに掲載されたエリ・フィンケル米国ノース
ウエスタン大学心理学教授の「The All-or-Nothing Marriage」と題する論文によれば、
結婚生活が充実せず離婚が多かった世代と、結婚そのものは低調であっても既婚者の生活
の充実と福祉の向上している世代との比較が指摘されている。その違いは結婚というもの
の本質的な進化を示すものだ。それは時代の変化だけがもたらしているのでなく、文化の
推移にも影響されている。文化というものが、傾向として社会が持つ価値観を包含してい
るからだ。

米国ジョンズホプキンズ大学社会学者で歴史学者でもあるステファニー・クーンツは、ア
メリカには三つの結婚モデルが生まれたと言う。農業が国民生活を支えていた1850年
代以前は、結婚は食糧生産の向上と暴力からの保護が目的だった。1850〜1965年
は農村社会から都市化への移行期にあたり、結婚は性生活の充足が主目的となった。愛し
愛されることが大きな要因として浮上してきたのである。1965年以降の結婚には、自
己表現の要素が濃厚になった。自己のアイデンティティを見出し、自己尊重を高め、自己
啓発を促進させるというものだ。結婚制度は重視されなくなり、各個人のニーズを満たす
ための選択肢というポジションへと傾いて行った。

その変遷が1943年にアブラハム・マズローの提唱した人間の欲求5段階説に合致して
いることをフィンケル教授は強調している。


インドネシアでも、今のミレニアル世代にとっての結婚は自己実現のための道であると言
うことができる。愛を示すためにするものでもなく、ましてや世の中にある文化的社会的
価値観に応じるためにするものでもない。

「結婚するために愛だけでは足りなくなっている。更に他のプラス要素がなければならな
い。」ビナヌサンタラ大学のピンカン・ルモンドル心理学教授は語る。[ 続く ]