「カラバヒの旅(前)」(2017年12月13日) 東ヌサトゥンガラ州アロール県東アロール郡が2015年11月4日、6.2リヒタース ケールの地震に襲われ、多数の建物に被害が出た。その復旧を支援するためにコンパス紙 は読者からの寄付を募っていたが、集まった寄金をティモールレステに近いコブラ村シド マン部落にあるインジリキリスト教会小学校とタンラプイ部落にあるタンラプイ第2国立 小学校の校舎再建のために寄贈することになった。記者はその寄贈式典への出席を目的に して、現地に飛んだ。 その業務を兼ねての観光の旅から生まれたこの旅行記は、インドネシア西部地方の住民、 ましてや外国人、があまり訪れる機会のないインドネシア東部地方の田舎の風情を伝えて くれていて、興味深いものだ。旅行記は物語る。 ジャカルタからアロール(Alor)へ行くのに、たいした苦労は要らなかった。アロール県の 首府カラバヒ(Kalabahi)へ行くジャカルタからの直行便はないものの、東ヌサトゥンガラ の州都クパン(Kupang)へジェット機で3時間飛べば、そこからプロペラ機が1時間でカラ バヒのマリ(Mali)空港まで運んでくれる。 優れたダイビングスポットとして人気が世界的に高まりつつあるアロール諸島には国内外 の観光客が増加しているが、カラバヒには宿泊施設があまりない。観光客の多くはケパ (Kepa)島をはじめとするリゾートホテルを利用している。 17年10月24日 13時半: カラバヒに着いた。まず腹ごしらえだ。国内外観光客に人気のあるレストラ ンはレストママ(Resto Mama)。店はムティアラ湾(Teluk Mutiara)の海上に突き出してい る。人気料理はタマリンドの実を使った魚のスープ。ハタなどのサンゴ礁に棲む魚を使っ た透明なスープがおいしい。ほかにも、さまざまな味覚の調味料を使った焼き魚も人気が ある。 この店で逃してならないのは、パパヤの花とカンクン菜を混ぜた炒め物。パパヤの花の渋 みがあまり強くない。 15時: 訪れた土地の経済状況を実感したければ、在来パサルを訪れるのがよい。レス トママから徒歩5分の所にパサルカレダン(Pasar Kaledang)がある。パサルで品物を売っ ているのはほとんどが女性。太陽が傾きはじめたこの時間なのに、パサルはけっこうな賑 わいだ。ここでは、既婚婦人や娘と見られなくなった女性はみんなママと呼ばれている。 パサルのママたちの多くは、シンコン芋やシンコン葉、鮮魚などを売っている。マンガク ラパ(mangga kelapa)を売るひともいる。その名の通り、ヤシの実ほど大きいマンゴの実 だ。 ピナンの実(ビンロウジ)も売られている。シリの実といっしょに口の中で噛むと口の中 が真っ赤になる、いわゆる噛みタバコだ。ここの女性たちはいまだにその習慣を続けてい る。村々では、小学生の子供までそれを噛んで、口を真っ赤にしている。 東ヌサトゥンガラのひとびとが常食にしているジャグンティティ(jagung titi)と呼ばれ るものもこの市場で実見した。ジャグンティティとはjagung tumbukの意味で、文字通り トウモロコシの粒をひとつひとつ丸い石で押しつぶして薄く平板にする。それを火に載せ て軽く炒る。味付けはお好み次第で。 16時半: ママシャリアッの名前のほうがよく通っているシャリアッ・リバナさん53 歳は海外のほうが知名度が高い。「ママシャリアッの織物ハウス」を訪れる観光客に、か の女はアロール独特の織物について説明してくれる。東ヌサトゥンガラの各地で作られて いる織物はたいてい模様がにぎやかだが、アロール織物は簡素だ。 テルナーテ村一円で女性たちから織物の師と見なされているシャリアッさんは、アロール 織物の展示会をオランダとティモールレステで行い、今度はミラノで実施する予定で、展 示品の布はもう50枚用意されているそうだ。[ 続く ]