「盗漁外国漁船爆沈方針はそろそろおしまいか?」(2018年02月05日)

インドネシアの領海に侵入して無許可捕獲漁業を行っている外国漁船を拿捕し、爆破や炎
上させて海中に沈める処罰はインドネシアの漁業法に則した対応であり、一大臣が自分の
意思で行えることではない。ましてや、政府首班の意向に合致した政策を遂行してその方
針を実現させるのがアシスタントとしての大臣の責務なのだから。

違法漁船の「爆沈」や「沈没」などといった言葉が自分の名前にまとわりついている現象
に関連して、スシ・プジアストゥティ海洋漁業大臣は従来から自己の立場についてそのよ
うに説明してきた。

それは確かにジョコウィ大統領が望んでいる政策であり、もしも大統領がそれに反対であ
るなら、かの女はとおの昔に大臣を解任されていただろう。その意味で、大統領は自分の
意思にきわめてピントの合った人物を大臣に起用したと言えるにちがいない。


世界中の多くの国が快挙と見なしたその方針によって、2014年から2017年11月
までの間に363隻の違法外国漁船が海中に沈められた。船籍別明細は次のようになって
いる。
ベトナム 190隻
フィリピン 76隻
マレーシア 50隻
タイ    21隻
インドネシア 21隻
パプアニューギニア 2隻
中国     1隻
ベリーゼ   1隻
無船籍    1隻

船籍がどの国であろうと、インドネシア人でさえ許認可を得て行っている捕獲漁業である
というのに、外国人がインドネシア国内に密入国して国内の財産である漁業資源を盗んで
行く行為は明らかに犯罪であるため、インドネシア官憲が犯罪者を捕らえ、裁判にかけて
処罰するというステップがその爆沈の前に踏まれている。

犯行に使われたツールである漁船を「沈没させよ」という判決が裁判で下されたために爆
沈が行われているのであって、これは法律行為であり、インドネシアは無法国家ではない
という主張が政府側にはある。


この「爆沈」政策が開始される前、インドネシアの領海は無法の漁場だった。近隣諸国の
漁民が大量に領海侵犯してインドネシアの漁業資源を臆面もなく奪い取っては帰国して行
った。そんな状況にしてしまったのもインドネシア政府なのだ。

盗漁漁船にインドネシア海軍艦艇が発砲して外国人漁民に使者が出た事件で外交筋から苦
情がねじこまれ、それを受けた政府が海軍上層部に非を求めた結果、国内に盗漁に入って
くる外国漁船がアンタッチャブルになってしまったのである。国益を護持しようとして国
政上層部から非難されるというおかしなことのツケが回されたのだ。

起死回生の大逆転をはかるために、ジョコウィ大統領はそのショック療法を開始した。そ
れがショック療法であるためには、できるだけ派手に行って派手に宣伝し、状況の変化と
直面するだろうリスクを盗漁者とその国の政府に認識させることに尽きる。

こうして三年間行われてきたショック療法もそろそろ十分に認知されたようだから、もっ
と利益に貢献する形に変えて行こう、という意向が政府部内で固まって来た。拿捕した漁
船は国民に使用させて漁獲量を増やし、輸出増大に貢献させよう、というのがその新たな
方針だ。

もちろん、政府部内から「爆沈は一切やめる」という言葉は聞こえて来ない。盗漁外国漁
船に対する処分を、これまでは沈めることに焦点を当てて来たが、今後は国内水産業の振
興に焦点を移して処分方法を広げて行くという、含みのある言葉が聞こえている。