「再び強盗オンラインタクシー事件」(2018年04月30日)

西ジャカルタ市タンボラの南ドゥリ町に住むサンサン(女性24歳)は、タナアバンへ行
くため2018年4月24日午前6時半ごろ、自宅前に呼んだオンラインタクシーのグラ
ブカーに乗り込んだ。

車が動き出すとすぐに最後尾の座席に隠れていたふたりの男が現れて、サンサンの手足を
縛った。そしてハンドバッグから携帯電話器・ATMカード・現金3万ルピアを取り上げ、
サンサンが身に着けていた黄金の腕輪とネックレスを奪った。

更に動けないサンサンをレープしようとして下着に手を掛けたが、メンス中であることが
分かって、レイプは免れた。

一味は家族に電話して身代金を用意させろとサンサンに命じたものの、一家があまり裕福
でないことをサンサンが口を尽くして説明し、サンサンの口座からも53万ルピアしか手
に入らなかったため、一味はその日13時ごろにサンサンが車に乗った場所まで送ってそ
こで下ろしてから逃亡した。


サンサンがグラブタクシーで出かけたあと、姉のサンティがサンサンに電話したところ、
サンサンが電話に出ない。不安に襲われたサンティはグラブカーコールセンターに電話し
て、サンティが乗った車のアイデンティティを問い合わせた。コールセンター側はあまり
協力的でなかったらしい。妹思いの姉はサンサンの友人を誘ってグラブカー本社を訪れ、
サンサンが乗った車に関する情報を集めた。

サンサンが無事な姿で帰って来たことには安堵したが、強盗の被害者になったことはもち
ろん許せるものでない。西ジャカルタ市警に被害の届出がなされた。

警察の調べで一味三人の身元はすぐに判明し、25日14時ごろ北ジャカルタ市プンジャ
リガン地区でふたりが逮捕され、もうひとりは26日午前5時ごろ、西ジャカルタ市クブ
ンジュルッ地区で逮捕時に抵抗したため、射殺された。


射殺された主犯格の男は、実はグラブカーに運転事業パートナーとして登録されている者
でなかった。その男の養父が普段はまともなオンラインタクシー運転手をしていたのであ
る。養子が養父からオンラインタクシー用の車両を借り、仲間ふたりを誘って犯罪を企て
たのが、今回起こった事件の真相だった。

運送事業の職業運転手が代理人を使って車両の稼働効率を高めることはインドネシアでよ
くあることだ。その代理運転手はインドネシア語でソピルテンバッ(sopir tembak)と呼ば
れる。タクシーは言うに及ばず、都バスでもアンコッやバジャイでも行われている。バス
に至っては、15〜6歳の無免許の少年が運転することもざらだ。

ひと昔前の、まだオンラインタクシーが世に存在しなかった時代に頻繁に起こっていた強
盗タクシー事件はほとんどがソピルテンバッのしわざで、この事件もそれと同工異曲だと
いうことになる。

既に政府が指導を進めているオンラインタクシーオペレータの運送事業者化によって運転
手の採用と労務管理における事業者の監督が強化されることになるだろうが、運転手が個
人的に行うソピルテンバッ使用の厳禁も運送事業者が厳格に排除しなければならない項目
のひとつであることを忘れてはならない。