「もっとも長い5分間(後)」(2018年05月22日)

本部職員たちが逃げようとするのを、そのふたりは追いかける。一番近くにいた職員のひ
とりが後頭部を斬られて負傷した。だが警備要員たちが即座に集まって来て反撃する。ふ
たりの男に銃弾が降り注がれ、ふたりは倒れた。既に戦闘能力は失われている。

ところが修羅場はそこだけでなかったのだ。玄関から建物沿いに進んだ本部メインルーム
のテラス前でアヴァンザは再びスピードを緩め、またふたりのテロリストを降ろした。テ
ラスに集まっていた職員十数人が蜘蛛の子を散らすように逃げる。そこへまた武装した警
備要員が集まってくるとテロリストに対して銃撃を開始する。

コンパス紙記者は玄関前での戦闘が収束したのを見て、テラスへと向かった。駐車してあ
る車の後ろから現場の様子を見る。ふと気が付くと、他社のテレビ記者とカメラマンが路
上で伏せていた。かれらは玄関で戦闘が始まったのを知って州警本部から離れようとガジ
ャマダ通り側通用門に向かっていたとき、後ろから白色アヴァンザに接触されたそうだ。

襲撃者のひとりはテラス近くで倒れたが、もうひとりは駐車場の方へ逃げてきた。そして
コンパス紙記者のすぐ傍を通ったとき、記者の肝は縮み上がった。だが幸い何も起こらな
かった。別の場所にいる警備要員がその襲撃者に銃口を向けて狙っているのが見えた。銃
が撃たれ、通り過ぎた襲撃者が地面に倒れた。

玄関前で降りたふたり、テラス前で降りたふたり、合計4人のテロ襲撃者がアスファルト
の上に横たわっている。4人はピクリとも動かなかった。その日午前9時5分から始まっ
た戦闘ドラマはほぼ5分間で終わった。コンパス紙記者はその5分間を、これまでの人生
でもっとも長い5分間だったとコメントしている。

この事件での死者はテロリスト4人と正門で警備に就いていた警官1人、そして本部職員
ふたりと報道関係者ふたりが負傷した。[ 完 ]