「医者好き社会」(2018年05月31日) 熱がある。咳をする。鼻水だ。あるいはもっと深刻な、痛みが体のどこかにある。インド ネシア人はそんなとき、市販の医薬品を買って飲むことはもちろんするが、自分の健康状 態を診て指示を与えてくれるひと、つまり医者へ行こうとする者も少なくない。 最近になって医療社会保障制度が整備されてきてはいるものの、一切がすべて自己負担だ った時代から、その傾向は維持されてきているのである。健康状態が不調であるとき、ひ とびとが積極的に医者に掛かろうとする傾向を、コンパス紙が報告した。 首都圏ジャボデタベッ地区住民は58.4%が医者に掛かろうとする。地域別を見るなら、 スリブ諸島住民が69.7%で最高値を示し、第二位はボゴール市の68.6%、第三位 はタングラン市の64.2%だった。 医者と言っても、インドネシアには魔術医から開業医、そして大病院までさまざまな選択 肢が待ち受けている。行先のトップはクリニックや一カ所に開業医が集まって営業する一 種の協同組合スタイルをとっている共同医院(Praktik Dokter Bersama)だ。そこを選択す るひとは31.3%いた。第二位が保健所と日本語に訳されている社会保健センター (Puskesmas)で、ここは28.9%を占めた。 第三位が開業医で16.7%、第四位は私立病院11.8%、第五位公立病院8.2%、 伝統型代替医療の1.7%がその次に来た。 医療社会保障制度は国民に加入が義務付けられているものの、病気でもないのに金(つま り掛金)を払うということに抵抗を感じる国民も少なくない。おまけに保障制度でカバー される処置の制限があり、加えて病院側も一日当たりの制度適用患者数を制限するところ が多いため、国民総加入という目標の足を引っ張る要素がさまざまに存在している。 慢性で深刻な病気の治療をこの制度で受けようとすると、制度適用治療担当医が出勤する 曜日にしか検診を受けられず、その日はまだ暗いうちから長蛇の列になる。そして制限人 数に達したら、「また来てください。」になるのである。 仕方なく制度を使わないで検診を申し込めばいつでもOKとなり、一週間入院して治療を 受ければ、数千万から億の請求書を突きつけられることもある。支払いの心配は別にして、 「さすが制度を使わなければ下へも置かない待遇だ」と患者を妙なところで感心させるこ とも起こる。 ジャボデタベッ住民は健康社会保障制度を使って医者に掛かろうとするひとが43.6% しかいない。