「GWK像が完成(後)」(2018年08月10日)

そしてレジームが替わり、旧レジームを激しい非難の渦が包み込んでしまったことから、
そのプロジェクトは新レジームの中で見向きもされなくなる。プロジェクトの核になって
いたニョマン・ヌアルタ氏の資金は底をつき、プロジェクト推進会社の4百人を超える従
業員に給与を支払うことすら困難な状況に陥った。ヌアルタ氏はGWKの実現を諦めるこ
とまで考えたと言う。

だが運はかれを見放さなかった。不動産セクターの有力者テ・ニンキン氏の知遇を得てヌ
アルタ氏が苦境を物語ると、テ氏は協力を約束した。そしてGWK推進会社PTガルーダ
アディマトラインドネシアを買収したのである。買収したのはアラムストラニュータウン
の開発運営を行っているPTアラムストラレアルティだ。ヌアルタ氏はGWKのオーナー
としての地位に執着せず、芸術家として作品の完成を目指した。

バリ島の新しいアイコンとして巨大な文化建造物がついに完成した。インドネシア民族が
持っている巨大な文化建造物はヘリテージがほとんどすべてだ。そこに最新テクノロジー
を使った新しい文化遺産が加わったことは、過去の偉大な息吹が現代にまで伝えられてい
ることを証明するものだ。それは民族の偉大さを再発見する契機になりうるものなのであ
る。

ヌアルタ氏の説明によれば、像の構造は中心部が鋼鉄で、外面の起伏は加工しやすいため
に銅が使われているが、銅は温度変化に弱いため補強が必要になる。そもそも高さ5メー
トルで予定していたものが75メートルに拡大されたのだから、その対応が一苦労だ。そ
のため成形した像の表面を三角形に切り、黄銅を貼って補強する方法が執られた。この方
法を用いると、拡大が容易に行えるそうだ。最終的に像は754のモジュールに分けられ、
それが現場で組み立てられた。像の表面積は2万5千平米になった。重量は3千トンに達
する。銅で作られた像の中で、GWKは世界最大のものではないかという声もある。

この像の胸の部分に展望台が設けられることになっており、台座の下から22階までリフ
トで上がると展望台だ。耐震性はM7.5を想定限度としており、耐風圧性も時速250
キロを限界にしている。ウィスヌの胸の展望台に早く登ってみたいものだ。[ 完 ]