「マリン(前)」(2022年09月29日)

ライター: 文化人、ヤコブ・スマルジョ
ソース: 2004年12月11日付けコンパス紙 "Maling" 

インドネシア語のmalingは他人の所有物を取る人間を意味している。同義語はpencuriだ。
マリンはジャワ語源の言葉であり、ジャワ人の文化の中でマリンの語は20を超える種類
を表すのに使われる。

もちろん本質はすべて同じものであり、自分の所有でない物を取ることに共通点が置かれ
ている。種類の違いはその方法のスタイルによる。本質はマリンだがプンチュリに見えな
いものさえある。方法の様式はマリン行為の前、マリン実施方法、マリン行為の後に分か
れる。また、マリンの対象物品の違いでも分けられる。ジャワ文化の中にあって豊かさあ
ふれるマリンの諸概念を見てみることにしよう。


あなたが誰かから品物を借りてそれを返却するのを忘れたとしよう。するとあなたはマリ
ンのひとりになるのだ。あるいは誰かから品物を借りてから、それを壊れた状態で返却し
た場合もmaling arepという名のマリンになる。

個人から借りようが組織や機関から借りようが、借り物を集めることを一生懸命行ってい
るひとは、自分が大泥棒maling besarと呼ばれても驚いてはいけない。一方、国家の所有
物を自宅に集めても、ケチな量であればmaling kecilになるだろう。

マリン取得物品を貯えたり売ったりする者はmaling caluwedと呼ばれる。現代法律用語で
は故買業者に当たる。それと同じカテゴリーに属すものとして、maling raja peniという
のがある。これは上級役職者・組織機関・役所などに与えられる支給品をくすねる行為を
指す。民から税を取り立てて1兆を集めた者が王に半兆だけを差し出すとこのマリンラジ
ャペニの敬称が与えられるのだ。王の所有に帰する麗しき品物をマリンする人間なのであ
る。


maling kebunanはmaling kena embunを意味している。だれかがマリンを企てた。ところ
が事前に発覚するとかれはこのマリンクブナンに区分される。たとえば貴金属宝石店へ行
って商品をくすねようとしたところ、店の者が早々に勘付いて警戒を厳重にしたから、買
うふりをして大きく値切り、あきらめたふりをして店を後にするというのがこの露濡れマ
リンである。

偽ドゥクンもこのカテゴリーに入る。秘法を使って患者を治療できるようなふりをしなが
ら、患者から金をせびるだけ。あるいは低品質の品物を高品質と偽って高値で売る。そん
な悪徳商法もみんなマリンと呼ばれる。

建築労働者が陥るマリンは建築資材を家に持ち帰ったり売り払ったりする行為だ。これは
maling timpuhと呼ばれる。普通は小泥棒だが、中には長年かけてあっちで少しこっちで
少しと建築資材を持ち帰り、それで大豪邸を作る者もいる。こうなれば大型マリンティン
プの称号を授けられることになる。

借りて住んだ家のオーナーがマリンだったりすると、とばっちりを受けて自分もマリンと
言われかねない。maling tunggal labetがその呼び名だ。現代のコンテキストに合わせる
なら、こんなことになる。たとえば腐敗役所として誰もが知っている政府機関に雇われた
としよう。あなた自身は何ひとつ曲がったことをしていなくとも、ひとびとはあなたをマ
リントゥンガルラベッと呼ぶのである。

マリンの同盟者maling sakutuは自分で行為を行わないものの、実践者に技術を教えたり
官憲の手にかからないような安全な手法を教えたりする者を指す。税務コンサルタントが
税金逃れの方法を教えて脱税分を山分けするようなのはこの区分に入る。

新聞にもっとも頻繁に登場するのがmaling saduだ。これは心誠実にして聖なる美徳を世
に打ち立て、同胞を助けて貧困を克服しようとする人間を装うマリンを指している。世の
荒波にもまれて苦難にあえいでいるひとびとに対して憐みと慈しみの心を抱いたようなふ
りをして出現するのがかれらだ。何かの災厄が起こると、マリンサドゥは続々と出現する。
苦難の重石をそれに喘いでいるひとびとの上から取り除いてあげようとかれらは申し出る。
ところがその結末は、助けてやるどころかひとびとから搾り取るのである。わたしはその
例をここに挙げない。だがもちろんマリンサドゥは、日々われわれの周囲を徘徊している
のだ。[ 続く ]