インドネシア外国人管理情報2015〜16年


「不安を呼ぶアフガン難民」(2015年1月7日)
東カリマンタン州バリッパパン市イミグレーション事務所は不法外国人の抑留を抑留所と事務所で行なっている。普通は不法入国や不法滞在あるいは不法就労の外国人を短期間収容し、処分が決まれば国外追放を含めて他の土地に移すのだから収容者の回転は早いのだが、どういう背景なのかわけのわからないまま多数の長期滞留者を抱え込まされてしまったため、事務所長の愚痴と立腹はなかなか納まらない。
去る10月、ジャカルタからバリッパパン空港に到着した国内線航空機内から大勢の外国人がぞろぞろと降りてきて、空港内ロビーに溜まった。空港側の調べでかれらはアフガニスタンからインドネシアに密入国した難民であることが判明し、急遽バリッパパン市イミグレーションに引き渡された。そういうことが数波に渡って繰り返され、イミグレーション抑留所にいる難民147人中の131人がアフガニスタン人で、またイミグレーション事務所に収容されているアフガニスタン人も155人いる状態になっていたが、事務所に収容されていた長期滞留者は12月18日に抑留所に移された。おかげで抑留所内は過密状態になり、パレスチナ人15人、アフガニスタン人286人、イラン人とパキスタン人各ひとりの総勢303人が、収容能力144人の空間に詰め込まれている。
インドネシアで国内線航空機に乗るためには身分証明書を示さなければならないのだが、難民は難民証明書しか持っていない。そして各航空会社に対しては、難民証明書を身分証明書扱いしてはならないという通達が出されているというのに、アフガニスタン難民はジャカルタで飛行機に乗ることができた。そこに何らかの政治的な圧力がからんでいることは容易に想像がつく。バリッパパン市イミグレーション事務所長は市行政上層部や市議会との間で合意を結び、今後空港に到着した難民は空港で拘束し、ジャカルタに送り返すということを決めた。イミグレーション事務所長にとっては、難民抑留者の増加をとどめることがこれで期待できるようになったわけだ。
しかし、既に入っている難民たちをどうするか。もちろん法務人権省にかれらを引き取ってもらわなければならないため、その運動を積極化させることも市行政側と合意しているが、定員の二倍を超える長期滞留者を毎日食わせ、水浴させ、着るものの世話までしなければならない。その費用がイミグレーション事務所の支出計画の中に含まれていないことは自明の理だ。
そういう台所問題ばかりか、アフガニスタン人難民の存在がバリッパパン市民の間に不安の霧を広げていることが明らかになっている。東カリマンタン州バリッパパン市は2011年に宗教大臣から異宗徒間の宥和協調が優れているとして表彰された実績を誇っており、またムスリムの間でも、インドネシア国内で異端とされているシーア・マシタ・アフマディヤの諸派は抑えこまれて姿を見せないため、宗派間抗争が起こる余地もないのだが、大量にアフガニスタン人難民が送り込まれ来ていることに対する揣摩憶測が生じているのも事実のようだ。一部の市民は、かれらが何らかの宗教的使命を携えているか、もしくは何者かの何らかの目的に使われようとしているのではないかという疑惑を抱いている。
事務所に収容されている難民たちは自由に行動することが許されているようで、ある日かれらは連れ立って砂浜へ徒歩で遊びに出かけた。市民の行楽地であるその砂浜は入口に入浜料徴収小屋が建っているのだが、全員が二十代の男性であるその難民グループは小屋に番人がいるのをまったく無視して通り過ぎようとした。番人は周辺にいる難民たちに「入浜料3千ルピアを払え」と言い、先にどんどん浜に入って行った者には大声で「金を払え」と叫んだが、通り過ぎた難民たちはそれを完璧に無視した。通り過ぎようとして止められた者の中にはポケットから金を出した者もあるが、汚い1千ルピア紙幣が一枚だけ。「これだけしか金はないよ」。大部分は無視し、わずか数人がまったく足りない金を出し、そして全員が浜に向かって通り過ぎて行った。「なんだ、こいつらは!好き勝手に・・・」とうめく番人の舌打ちが響いた。


「ロンボッ島でも不法在留外国人」(2015年1月12日)
西ヌサトゥンガラ州ロンボッ島でマタラム市イミグレーション事務所が6人の外国人を逮捕した。6人の出身国はミャンマー、レバノン、ナイジェリア、オランダ、オーストラリアで、違反行為は入国許可期限を超えて滞在しているオーバーステイがメイン。中には地元の会社に雇われて無許可就労していた者もいる。
イミグレーション事務所は違反者に国外追放処分を与える意向だが、しかしミャンマー人シャビルだけは例外で、かれはすでに中部ロンボッ県プラヤ在住のインドネシア人女性と結婚して子供を複数設けており、インドネシアの居住許可手続きを行なわせる方針をイミグレーション事務所は立てている。シャビルはマレーシアに出稼ぎに来た妻のインドネシア女性とマレーシアで結婚し、妻の帰国に伴ってインドネシアに入国した。そして入国期限を超えてもう何年も滞在しているのが発見されたということだ。かれは難民高等弁務官事務所の難民リコメンデーション状を所有しているため、難民としてのインドネシア居住許可を取らせることをイミグレーション側は計画している。
マタラム市イミグレーション事務所は最初、違反者7人を捕らえる予定だったが、オーストラリア人一名が逮捕の網をかいくぐって逃走したため、成果は6人にとどまった。逃走したひとりは指名手配がなされている。


「ジャカルタ東郊の工場駐在員たち」(2015年2月12・13日)
ジャカルタから東へ向かうチカンペッ自動車専用道。その沿線に工業団地が連なる。MM2100、リッポチカラン、ジャバベカ、グリーンランドインターナショナルインダストリアルセンター、カラワンインターナショナルインダストリアルシティ、コタブキッティンダ工業団地・・・・
2011年に日本で起こった大災害とタイで起こった災害と政治クライシスの結果、日本・韓国・中国の企業が怒涛のようにインドネシアに、そしてそれらの工業団地一帯に押寄せてきた。2011年に全国で1,200Haの工場用地が稼動しはじめたが、そのうちの9割はブカシ〜カラワン地区のものだった、とコリエールズインターナショナルは報告している。その流れはその後の数年間、持続し、東アジア三国の外資系工場が操業を開始したとき、大量の外国人向け住居需要が巻き起こった。
本国にいる家族を帯同してきた者やインドネシア人を妻にして新たな家庭を築く者などその背景はさまざまだが、家族向け住居の需要は単身者向けに劣るものではない。工業団地周辺に続々と生まれていた住宅地にもその需要の波が押寄せてきた。かつては、ジャカルタ南部地区が駐在外国人の人気地区であり、そこが飽和状態になるにつれてもっと南のデポッ市やスルポン地区に新規住宅地が広がって行ったのとは趣を異にする状況がブカシ〜カラワン地区で展開されているということらしい。
そのビジネスチャンスを捉えようとしてリッポチカランは日系不動産会社と共同で日本人向けレジデンスを設けて運営を開始している。日本料理店・日本の商品を置いているスーパー・アスレチックセンター・大浴場・24時間勤務の日本語ができるコンシェルジュ・工場や空港への送迎などサービスは至れる尽くせりというところ。リッポチカラン工業団地に入居している日系工場は8百を超え、この工業団地で日常を送っている日本人と韓国人はそれぞれ3千から5千人いるそうだから、1万人近いエクスパットのための住居がリッポチカランだけで必要とされている。
カラワン県西部にある3星級ホテルのレストランで、日本料理がメニューに入っていないところは今や稀有の状態だ。ホテル内は日本風韓国風の雰囲気を出すことに努め、ホテル従業員はスマイルと共に日本語の挨拶を発する。宿泊客のふたりにひとりは日本から出張してきた工場メンテナンス技術者らしい。
リッポチカランに作られたような日本人向けレジデンスに日本人駐在員がみんな入れるわけでもない。さまざまな要因のために、中には近隣のミドルクラス向け住宅地で借家する者もいる。アパートメントに住む者もいれば、戸建ての借家に住む者もいる。そういう外国人向けの住居賃貸相場はインドネシア人向けより高めに設定されるのが普通であり、利益の大きいビジネスに食指を動かさないインドネシア人はいない。ましてや、需要を抱える外国人の身近で毎日仕事している人間は、半ば客が着いているのも同然となる。イギリス資本の工場でルート販売業務を担当しているP氏は、立地条件の良い住宅地に敷地110平米建坪55平米の家屋を購入した。実生活でそんな資金余裕のないP氏がそれをローンで買ったのは、外国人駐在員に継続的に貸せる見込みを立てた上でのことだ。一年の賃貸料金3〜4千万ルピアを前金でもらい、それをローン返済に充てていけば、いつかはその家賃が満額自分のものになる。
借家住まいの外国人が増えれば、外国人客をターゲットに据えた商店やサービス業者が出現する。工業団地内のレストランに日本料理や韓国料理の店が増え、住宅地近辺の商業地区にも同じことが起こり、更にはカラオケやスパそして日本や韓国の商品を置くスーパーが出現する。
しかし、日常生活の中でエクスパットたちと接触するインドネシア人の中には、外国人の存在をこころよく思っていないひとびともいる。インドネシアの住民管理行政は末端がRT(隣組)そしてその上にRW(字)という住民自治機構で形成されている。自治機構内で住民相互監視が行なわれ、コミュニティの秩序維持がはかられるという形態がそれであり、このRT制度は日本軍政期に日本が植えつけたものだからその意味合いはすぐにわかるはずだ。
それを常識にしているインドネシア人住民だから、RTの自治会合であれ、親睦会であれ、地域住民の集まりにまったく顔を出さず、人的交流をしようとしない外国人住民に良い顔をするはずがない。ましてやテロリストや犯罪者の増加が世情不安を煽っている昨今、地域内の不審な住民に対するRTの監視機能を官憲はあてにしており、地域住民からの報告でテロリストが摘発されることも頻繁に起こっている。
更に不法就労外国人事件も時おりニュースの中に混じって流されているため、外国人が身近にいてその正体を地元民に示そうとしないのだから、地元民はかえって不審と好奇心を刺激されるようになる。住民の中には、時おり当局者がかれらエクスパット住民の家を訪れて、在留手続き等が合法的になされていることを確認するようにしてほしい、という希望を語る者もある。
もうひとつあるのは、エクスパット家庭に個人的に雇われている人間からの苦情だ。運転手はたいてい会社がつけるから、個人的に雇われている人間というのはほとんどが家政婦、いわゆる家庭プンバントゥ、となる。実はこの世界、苦情たらたらのプンバントゥもいれば、ほくほく顔で苦情などなにひとつ言わないプンバントゥもいるため、一概に言えるものではないものの、言葉と習慣という文化の壁に直面したプンバントゥは、雇い主を非難するケースが多い。
中には住み込みで午前6時半から23時まで働き詰めを余儀なくされている者もいるそうだ。雇い主は家事を一切せず、すべてをそのプンバントゥにやるように命令するだけらしく、報酬については特に言及されていないが、毎日それを強いられるなら、報酬にどれほど色をつけられようとも納得できないということになるだろう。そういう雇い主に限って、使用人に暴力を振るう傾向が高いようで、プンバントゥは怯えを打ち払って家政婦同盟に訴え出たらしい。
他にも、アパートメント入居者に雇われているプンバントゥたちは情報交換や親睦のために寄り集まることを習慣にしているが、アパートメント管理者は敷地の中でそういうことが行なわれるのを禁止した。プンバントゥたちはその非道を家政婦同盟に訴え出たようだが、それには同盟としてもなす術がなかったようだ。プンバントゥたちは仕方なく、アパートメントユニットの表の通路や非常階段で身を隠しながら集うようになった。かの女たちはその非人道的な仕打ちに怒りを向けている。


「インドネシア語が就労許可必須条件に」(2015年2月18日)
インドネシアで働きたい外国人に対する就労許可プロセスの中で政府労働省は、その外国人がインドネシア語実用能力を持っていることを必須条件にする方針。これは2015年末のアセアン域内自由化に対する自国民の保護をその基本目的にするものであるとはいえ、特定国民を対象にするような差別的規則にはされない。
労働省労働力配備育成総局長が2015年2月13日に明らかにしたところによると、そのアセアン域内自由化という環境の変化により即した就労許可プロセスの改定が現在再編の最中にあり、大臣規則の形で遅くとも4月までには制定される予定である由。その大臣規則の中に、インドネシア語実用能力条件が盛り込まれることになっている。
実用能力というのは、ただ「スラマッパギ」という挨拶ができるというようなレベルではなく、就労業務がインドネシア語で行なえるレベルが求められている。これは新規の就労許可申請だけでなく、既に就労許可を得て働いている外国人の許可延長申請にも適用されることになる。必然的に、外国人を雇用するインドネシアの法人は雇用予定者に対してこの条件を通知する義務が負わされる。言うまでもなくそのインドネシアの法人というカテゴリーの中には、駐在員事務所も含まれる。外国人がインドネシアで就労する際の受け皿になるすべての民間機関がその対象になるということだ。
また2003年法律第13号労働法第八章第45条で、外国人就労者はインドネシア人同僚に対する技術と知識の移転が義務付けられているにも関わらず、その実態はほとんど目に見える成果が出ていない。この問題についても労働省は監督をさらに厳しくしていく意向。
インドネシア政府の外国人就労に関する基本原則はインドネシア人労働力の活性化を第一優先にしており、ある職種の特定業務を行なう能力がインドネシア人にある場合は外国人にその仕事を与えないというのが帰結になる。インドネシア人にその業務を遂行できる者がいないという特殊な状況に限って外国人に就労の機会が与えられ、その外国人はインドネシア人同僚にその業務の知識と技術を移転してインドネシアから去ってもらうというのがシナリオだ。つまり就労許可延長はその技術移転次第というのがそこにある考え方である。この原理の中で用いられている技術や知識といった業務遂行能力はクオリティレベルへの認識が加味されていないため、外国人とインドネシア人の両方が特定業務を行えるがクオリティは天地の差があるから外国人をというロジックは排除されており、そのコンセプトに対する雇用者自身の協力姿勢をぬるま湯にしている。
ともあれ、外国人就労許可はいつか期限を迎える。就労許可が延長されなければ、外国人はインドネシアから去らなければならず、EPO(Exit Permit Only)と呼ばれる手続きが待ち構えている。就労許可期限をベースにした暫定居住許可(KITAS)の期限を超えれば、不法滞在が発生する。そこに由来する犯罪化現象を防ぐためにEPOは交付日から14日間という猶予期間を外国人本人のインドネシア滞在に与えていたが、その期間を利用して仕事を継続したり、あるいは就職運動を行っている外国人が存在していた。出国前の準備期間として与えている14日間を悪用する者がいることを政府は重視し、法務省イミグレーション総局はEPO日数を7日間に半減させた。総局側はさらにモニターを続けて、日数を2日間にまで短縮させたい意向。


「法規不服従で利を得る者」(2015年3月6日)
2014年11月24日付けコンパス紙への投書"Tenaga Kerja Tiongkok di Suwalwesi"から
拝啓、編集部殿。ジョコ・ウィドド大統領が最近中国を公式訪問した際に、インドネシアには廉価で豊富な労働力があると語って中国資本のインドネシア投資を勧めました。中部スラウェシ州モロワリブンクで起こっている実態は、それに正反対のことです。
今現在その地域ではニッケル工場、蒸気発電所、埠頭などが建設されていますが、建設工事の最末端部の力仕事をする工事人足をはじめ、工事にかかわるあらゆる人間が中国からやってきているのです。おまけに、インドネシアは石炭産出国であるというのに、石炭までもが中国から輸入されています。
実に皮肉です。鉱物資源も労働力も豊かなインドネシアが、石炭や労働力を輸入しているなんて。ジョコウィ政府は現在行われている工場や埠頭の建設を再チェックしてください。地面を掘り、セメントをかき混ぜるようなことをするために外国人労働力を使うことが本当に妥当であるのかどうかを。インドネシアにはまだたくさんの失業者がいるではありませんか。[ 西ジャカルタ市在住、バンバン・ヘルマント ]


「また中国人の不法就労」(2015年3月10日)
南スマトラ州ムシ・バニュアシン県バユンルンチルで建設工事中のムルッタンバン蒸気発電所は中国国家開発銀行から3.18億米ドルの融資を得て行なわれているもので、中国電力工程有限公司から設備機械のすべてが送り込まれている。 その機械据付から試運転やメンテナンスのために、どうやら中国人技術者や雑用の労働力が延べ3百人、現場に送り込まれていた、という情報を関係機関がつかんだのは最近のこと。3百人の大半が観光旅行者として入国し、観光旅行者として出国していたから、所轄のイミグレーション事務所の業務怠慢にスポットライトが当たっている。
シナルマスグループが組んだこのプロジェクトの建設工事は2013年5月から開始され、計画では2x150Mwの能力で2015年中に操業を開始し、PLNが25年間に渡って電力を買い上げる契約になっている。
2015年3月6日、ジャンビ州のスルタンタハ空港に貸し切りバス2台でやってきた中国人48人に不審を抱いたイミグレーション職員が職務質問したところ、かれらは建設工事現場から空港に来たことが明らかになり、かれらのパスポートには労働許可が一切ないことから、48人は取調べのためにイミグレーション事務所に拘留された。
取調べによれば、その48人は一年前から建設工事現場で働いており、二ヶ月前から給料が不配になったため、ジャカルタの中国大使館に請願して故国に送り返してもらおうと考え、その日ジャンビ空港からジャカルタへ向かうつもりだったとのこと。
パレンバンのイミグレーション地方事務所長はこの事件について、建設工事が行なわれている地元自治体がまず所在する外国人の詳細を把握していなければならないのに、一体何をしていたのか、と不満を述べている。ムシバニュアシン副県令は、県の監視体制が正しく機能しておらず、実態把握がおろそかになっていたとイミグレーション地方事務所長の言葉を肯定した。「機械設備のほとんどが中国からのものだったから、技術者の必要性は理解できるが、労働許可手続きに違反することは許されない。プロジェクト責任者を呼んで調査を行なう意向だ。」と副県令は述べている。
この事件の前に、南スマトラ州ラハッで行なわれている蒸気発電所建設工事で中国人労働力293人が不法就労していた事件が摘発され、2015年2月に強制出国させられている。


「労相が違法就労者をお縄に」(2015年3月19日)
南カリマンタン州バンジャル県スガイピナンにある石炭採掘会社PTマージエナジーソースデベロップメント社をハニフ・ダキリ労相が2015年3月14日に抜打ち視察した。そして、社内で働いている外国人5人の姿が大臣一行の目についた。外国人雇用の合法性を会社は大臣ご一行に証明しなければならないのだが、外国人雇用許可に関する書類は何ひとつ提示されない。そして中国人であることが明らかになったその5人の身分も、就労や居住の許認可を何ひとつ得ていないままその会社で働いていることが明らかになったから、5人の身柄は即刻拘束されてバンジャルバルにあるバンジャルマシン一級イミグレーション事務所抑留所に連行された。タテマエではインドネシア側雇用者が許認可手続きを行なってはじめて外国人の就労が可能になる形を採っていながら、違法雇用〜違法就労が摘発されると外国人への処罰が優先し、無許可で違法雇用していた法人に対する処罰がうやむやのうちに事件が終わってしまうという奇妙な展開はいつものことだ。
大臣はこの事件に関連して、これまで外国人就労についてはサービスが優先されるばかりで違法行為の監督が同じウエイトでなされていなかったきらいがあるため、法執行を確立させるために外国人就労者の監督をもっと厳格に行なわなければならない、とコメントした。そのため政府は、国内に在留している外国人の監視監督を厳重にし、労働省は行政機構内の関連諸機関と合同チームを組んで違法就労外国人摘発に注力する意向。関連諸機関とはイミグレーションや警察を指している。
本来的に外国人居住者の監視監督は、住民管理行政を行なう地元自治体が業務の一部としてその主体者となるべきものであり、今回のような事件は地元政府が先に掌握していなければならなかったはずのものだ、と南カリマンタン州出身国会議員は州政府の怠慢を非難している。しかし、ここ数ヶ月間に不法就労外国人摘発事件は何度も報道されているが、州・県政府労働局が主導的に摘発したものがあった印象はない。


「インドネシア入国ビザ免除はまだまだ」(2015年3月23日)
インドネシアへの観光入国ビザフリーが与えられているのは、タイ・マレーシア・シンガポール・ブルネイ・フィリピン・ベトナム・カンボジア・ラオス・ミャンマー・香港・マカオ・チリ・モロッコ・ペルー・エクアドルの15カ国しかない。
東南アジアで国家間の観光事業競争を行なっている近隣諸国はもっとたくさんの国にビザフリーを与えている。そして、その帰結としての入国観光客数はインドネシアとは大違いになっている。ちなみに、近隣諸国と比較すると、次のような仮説ができあがる。(国名:ビザフリー対象国 観光客数2014年/2013年/2012年ー数字は万人単位)
マレーシア 164カ国 2,743/2,572/2,503
タイ 56カ国 2,477/2,654/2,235
シンガポール 約50カ国を除く全世界 1,508/1,556/1,449
インドネシア 15カ国 943/880/804
ジョコウィ政権が発足してから、外国人観光客誘致を目的にして中国・日本・オーストラリア・韓国・ロシアの5カ国国民に観光入国のためのビザを免除する方針を立て、それを公表した。それが実現したらビザ免除対象国は20カ国になっていただろうが、その観光振興方針に対する反論が続出した。
まず、インドネシア共和国に害を為す者たちに安易な入国をさせるリスク。直接的な害悪は為さないまでも、不法在留者が激増するリスク。これも間接的に国益を損なうものとなる。そしてこれまで得ていたビザ収入が大幅減になることも問題で、2015年度予算執行は当初計画通りにできるのか、という疑問。更には、本来互恵を原則としている国際外交で、インドネシア国民は容易にビザをもらえないのに、どうしてその相手国国民を優遇してやるのかという民族主義がかった意見。
結果として、政府は2015年1月1日から実施すると言っていた5カ国国民へのビザフリー制度変更を、口をつぐんだままずるずると延期してきた。しかし、大統領の熱意は変わらない。
ジョコウィ大統領は、世界には150カ国を相手にしてビザを免除している国があるというのに、インドネシアがわずか15では観光振興など絵に描いた餅でしかなく、観光立国ができるわけがない、とこの問題について不満を表明したから、閣僚たちはその問題の抜本的な見直しを行なった。国内での外国人がらみの治安問題や不法在留者の対処は警察やイミグレーションが励行して当然だとの大統領見解のため、そこは担当政府機構にまかせるとして、外務省が出してきた案は、次の30カ国に対してビザフリーを与えようというもの。
中国・日本・韓国・アメリカ・カナダ・ニュージーランド・メキシコ・ロシア・イギリス・フランス・ドイツ・オランダ・イタリア・スペイン・スイス・ベルギー・スエーデン・オーストリア・デンマーク・ノルウエー・フィンランド・ポーランド・ハンガリー・チェコ・カタール・UAE・バーレイン・オマン・南アフリカなど。このリストからオーストラリアが消えているのは、興味深い。
外相はそれらの国の国民にビザフリーを与えることに関して、それらの国から何らかのメリットを得て互恵の形にもっていくことを考えているようだ。だからそのリストに転変の起きる可能性はまだまだあるにちがいないだろう。また政府収支の問題もからむため、2015年度に開始できたとしても、ビザ収入減による今年度予算への影響についての見通しが把握できる時期まで難しいのではないだろうか?


「外国人就労と国民能力向上の矛盾」(2015年4月3日)
今や国際共通語と化した観のある英語の修得を、英語を母語としない国々が国民に熱心に勧めている。最近アメリカのボストンで開催された言語教育改革フォーラムで、ブラジルとメキシコが国をあげて若年世代国民への英語修得振興に取り組んでいる事実が明らかにされた。
ブラジル政府は二年半前から国民の英語修得レベルアップに取り組んでおり、学校教育での英語教師との対面会話レッスンからオンラインによる教育、更には外国留学で実力を高めさせるといった総合的な英語教育政策を実施し、2011年からの5年間に10万1千人の生徒を留学生として送り出す動きが行なわれている。
メキシコ政府も国民の英語修得に熱を入れており、毎年4万人前後を米国に英語修得を目的として送り出している。メキシコは決して豊かな国ではないが、国民に対する人材クオリティ向上のための予算は惜しまない、とフォーラムに出席したメキシコ代表者は胸を張った。
言うまでもなく、インドネシアも国民の英語力向上の重要性をひしひしと感じており、このフォーラムに出席した教育文化省インフォーマル・ノンフォーマル・早期教育総局官房官は、アセアン統合経済ソサエティ開始を目前に控えたいま、国民の英語使用能力向上は力を入れていかなければならない柱のひとつだ、とコメントした。
しかし、ブラジルやメキシコのような国民の英語修得を邁進させようという国家方針をインドネシア政府が打ち出しているわけでもなく、ましてや具体的な支援は国民と現場での意欲を後押しするというレベルのものにとどまっている。この時流に乗っている英語学習塾や会話教育機関はインドネシア人の英語修得に貢献できる位置を占めているにもかかわらず、インドネシア政府はそれに対する理解を潤沢に持っているとは言えない、と現状に関する不満を関係者が述べた。
英語教育機関EFのインドネシア担当カントリーダイレクターは、インドネシア政府労働省が2013年に制定した外国人勤労者の利用手続きに関する大臣規則第12号の条件が厳しいために英語ネイティブスピーカー教員雇用に障害を受けており、私的な部門ではあるがインドネシア国民への英語教育邁進に貢献できる機会を狭められているのが実態であると表明した。大臣規則によれば、インドネシアの法人が特定職務に外国人を就労させる場合、その職務に就くためにはその分野での学歴を示すサーティフィケートが必要で、加えてその職務をこなせる職業能力があることを示す認定証が提示できること、さもなければその分野での5年間の職歴を持っていること、という条件が付けられている。
EFは2014年にインドネシア各地の英語教室に勤務させるための外国人教員募集を行なったが、2,205人の応募者の中でインドネシア政府の条件を満たせた者は215人しかおらず、最終的に雇用できたのは26人しかいなかった、とインドネシア政府の外国人就労方針がグローバルな時流に適合していない現状への不満を述べている。


「バリ島で違法就労者に強制出国措置」(2015年4月20日)
バリ州バドン県グラライ特別第一級イミグレーション事務所がカナダ人4人とアメリカ人11人の合計15人に強制出国措置を取った。その15人はフォトモデルと付き人たちで、スミニャッのビラをはじめバリ島内の数ヶ所で行なわれたパラダイスチャレンジという催しの写真コンテスト部門にモデルとして出演したのを、イミグレーション職員が現行犯逮捕した。
そのモデルたちは2015年4月1日から14日まで、観光入国のためのビザで入国しながら違法就労していた、とイミグレーション事務所監視処分課長は説明している。逮捕に際しては、三日かけて違法就労である事実をつかみ、逮捕実施は一般人を装って現場に入り、機を見て行なった、とのこと。


「外国人旅行者が銀行口座破り」(2015年4月27日)
南ジャカルタ市クマン地区クマンラヤ通りのBNI銀行ATMで口座破りを行なっていたブルガリア人旅行者ふたりが南ジャカルタ市警に逮捕された。
2015年4月10日18時ごろ、外国人ふたりがATMブースを不安な表情で出たり入ったりしているのに不審を抱いた銀行警備員がふたりに事情を尋ねるため声をかけたところ、ふたりはいきなり手にした多数のルピア紙幣をブースの一帯にばら撒きながら逃走したため、群衆に取り押えられた。
ふたりは44歳のブルガリア国籍者で、所有パスポート内のビザページには6日間のインドネシア訪問が許可されていることが示されていた。ふたりは4月8日からクマンのホテルに滞在しており、警察はかれらの部屋から7千5百万ルピアの現金、茶色いブランクATMカード162枚、携帯電話機、パスポート2通、ノートパソコン1台、スキマー1台を押収した。
ふたりの犯行手口は、まずATM機の外側にスキマーを取り付けてATM機利用者のデータを盗み、PIN番号はその利用者がキーに打ち込むものを目視や監視カメラで盗み、盗んだデータをスキマーからパソコンを通してブランクATMカードに記録させ、そのコピーカードとPIN番号で口座から現金を引き出すという方式で、既に何度か犯行が行なわれていたようだ。
かれらの犯行に対して警察は、刑法典第363条による7年の入獄、あるいは電子取引と情報に関する法律の第2条にある禁固10年間のいずれかを適用して送検する意向。


「バリ島でオーストラリア人逮捕」(2015年5月11日)
デンパサル市庁がサヌール地区で外国人の入国許可資格外活動の取締りを行い、2015年4月29日にオーストラリア国籍女性シンシア・ルイーザ・ピセラを逮捕した。かの女は観光ビザで入国してから三年間バリ島に滞在し、10人を雇用して飲料品を小売販売する店を運営していた。かの女のパスポートが押収され、身柄は移民局収容所に入れられた。
この取締りは市庁関係当局・移民局・警察・国軍で構成される実施班が地域を巡回して行なっている。入国資格外違法就労者発見の実例があがったことから、地元地域を管轄する村役場は法規の執行をもっと正しく行なうように、と市庁芸術文化宗教民族統一政治保全係長がサヌール地区の各村役場を叱咤した。
一方、5月5日にはバタム市内スカジャディ高級住宅地区内の民家で不審な外国人が大勢活動している、という市民からの情報をもとに関係当局が出動して取り調べたところ、そこにいた22人の中国人の中でパスポートを移民局職員に提示できたのは8人しかおらず、14人は入国関連書類がまったくないことが判明した。22人中9人は女性で残りは男性。かれらは一様に携帯電話やノートパソコンでかれら同士あるいは遠距離者と連絡を取っていたようだ。捜査官が取調べのためにその民家を訪れたとき、かれらの中に、捜査官に金を渡して見逃してもらおうとした者がいたとのことで、それは拒絶されている。
移民局と警察は、かれらがいったいどのようにしてインドネシアに入国することができたのか、またバタムに滞在して何をしようとしていたのか、ということの捜査に取り掛かっている。
2014年3月には6人の中華系マレーシア人がバタムで国内の3銀行を対象に銀行破りサイバー犯罪を行い、バタムセンターフェリー港から出国しようとしていたところをバタム市警が逮捕している。あるいは、多数の中国人を集めて民家に住まわせ、インドネシアの国内外で詐欺をメインとするサイバー犯罪を行なわせていた事件も全国各地で頻繁に摘発されており、今回バタムで逮捕された22人の犯罪が立証できなくとも、違法入国者として国外追放されるのは間違いないところだ。


「マレーシア人がバタムで殺人」(2015年5月12日)
2015年4月24日夜、リアウ島嶼州バタム市にあるBCCホテルの裏で男がひとり死んでいるのが見つかった。ホテル所有の荷物用カートの中にあったその死体はホテルの宿泊客で、1616号室に泊まっていたマレーシア国籍者アマル・アスワンであることがすぐに判明した。
アマルと一緒にそのホテルに投宿していた4人のマレーシア国籍者がただちに重要参考人として浮かび上がった。4人がアマルの死体を運んでいる映像がホテルの監視カメラに写っており、おまけにその4人はホテルから逃げ出して行方をくらましていたのだから、疑わないほうがおかしい。バタム市警本部は即座にフェリー港に非常線を張った。そして監視カメラから4人の顔写真を手に入れた警察は、その夜のうちに全員を逮捕したのである。
案の定、ハーバーベイ港でマレーシア行きのフェリーに乗ろうとしていたふたりが逮捕され、次いでバタムセンターから既に出港したジョホールバル行きフェリー「ブルリアンティガ」号に別のふたりが乗っていることが明らかになった。捜査員がバタムセンターの出入国審査官に顔写真を見せると、審査官はそのうちのふたりの写真を指差した。殺人事件容疑者が乗っているのでバタムセンターに帰港するよう警察が「ブルリアンティガ」号運航クルーに要請したところ、船が港に戻ってきたので、他のふたりも警察に逮捕された。
警察が4人を取り調べた結果、酔った挙句の喧嘩による偶発的殺人事件だったことが判明した。その夜、5人は連れ立ってディスコ「プラネット2」へ遊びに出かけた。5人はまずディスコで飲んでいたが、かなりできあがってから、中のひとりゴン・ソンチューが踊り出した。するとアマルがゴンの頭を殴った。ふたりの間で口喧嘩が始まる。アマルが激しく乱れたので、一行はホテルのアマルの部屋に戻ったが、アマルが荒れ狂い続けるので、同室のカリザタンが他の三人を1619号のかれらの部屋に戻らせた。するとアマルは凶暴性を帯びて、室内のテレビを殴り始めたから、カリザタンはアマルを抑え、他の三人を呼び戻した。やってきた三人はアマルの様子に我慢できず、おとなしくさせようとしてリンチを加え、アマルが大声で叫びはじめたために手で口を抑えた。アマルがおとなしくなったとき、4人は殺人を犯したことに気付いて動転した。
死体を部屋に置いておくわけにいかないから、4人で死体を担ぎ出し、リフトの前まで運んだ。そして警備員に、仲間が酔っ払って薬をやりすぎたと言って荷物用カートを借り、ホテルの裏に運んで置き去りにし、4人はその夜のうちにマレーシアに戻ることにして港に向かったというのが事件の一部始終だ。


「外人売春婦がバタムに」(2015年5月13日)
バタム市警とバタムイミグレーション事務所はベトナム人売春婦4人を市内二ヶ所で逮捕した。警察は売春国際シンジケートがバタム島内に存在していると見て、シンジケート摘発に更に注力する意向。
バタム市警とイミグレーションは複数の外国人売春婦が組織的に動いているとの情報を得て、その捜査を開始した。そして覆面捜査を行なっていたイミグレーション捜査官が外国人売春婦斡旋者とのコンタクトに成功し、囮捜査を行なった。
捜査官はオファーされた一時間300米ドルという料金で市内のホテルに売春婦を届けるようオーダーし、そこでベトナム人女性ひとりが逮捕された。捜査班は時を移さず逮捕された女性に仲間の居場所を教えるよう要請し、市内の別の場所にいた同じベトナム人売春婦3人を一網打尽にした。
捜査班がこれまでに得た情報によれば、売春婦はベトナムだけでなくその他複数の国の女性が混じっていること、シンジケートには国内のさまざまな勢力が関与している可能性が高いこと、などを十分に推測させるものである由。
女性と児童保護国家コミッション役員によれば、バタムは売春センターのひとつであり、従来からも国内各地を出身地とする女性たちが性搾取の被害者になっていたが、今回の逮捕事件で外国人女性までもがその被害者になっていることが立証された、とコメントしている。


「また中国人を集団逮捕」(2015年5月18日)
南ジャカルタ市パサルミングの東チランダッ町クナガ通りにある一軒の豪邸で2015年5月6日20時ごろ、首都警察が強制立入捜査を実施し、その邸内にいた中国人男性19人女性14人を逮捕した。その中の中国人男性25歳一名は逮捕を免れようとして邸宅の2階バルコニーから飛び降り、そこで死亡した。
警察はその豪邸でかれらが使っていたノートパソコン7台、タブレット14台、携帯電話機54台、固定電話機64台、計算機15台、ポートインターフェース36基、モデム、プリンター、ページャーなどを押収している。
続いて5月12日未明、首都警察は北ジャカルタ市プンジャリガンのパンタイインダカプッ(PIK)住宅地内の邸宅に踏み込み、そこにいた中国人20人、台湾人10人を逮捕した。この邸宅からは、かれらが使っていた携帯電話機53台、固定電話機64台、ノートパソコン5台、プリンター3台、民間銀行ロゴの入ったロール紙10本、クレジットカードリーダーなどが押収されている。
首都警察一般犯罪捜査局犯罪暴力次局長は、多数の外国人が民家に住んで違法活動を行うというパターンの事件はあちらこちらで摘発されており、過去一年間で547人の外国人が逮捕されている、と述べている。この種の事件は首都圏ばかりか、全国の他の都市でも続発しており、その種の違法行為がインドネシアで活発に行なわれているのは疑いない。
チランダッ町の豪邸にいた中国人はすべて合法的な手続きを経てインドネシアに入国したようだが、到着時ビザ(VOA)では許可されていない活動を行なっていたことや、オーバーステイなどのイミグレーション規則に対する違反は間違いないところだ。その豪邸の隣に住む住民の話では、2014年から大勢の外国人がそこに住み着いていたとのこと。
PIKの邸宅で逮捕された中華系入国者30人についても、警察が押収したパスポートは9冊で、多数がパスポートを持っておらず、またインドネシア入国時に与えられる滞在期限の切れたものが多かった。
チランダッ豪邸で逮捕した中国人の取り調べ結果を公表した首都警察は、かれらは本国で見た求人募集に応募してインドネシアへやってきた者たちだと説明した。その求人募集では、インドネシアにあるホテルやレストランでのサービス職の仕事がオファーされ、その期待でスカルノハッタ空港に到着したら、迎えに来た者がパスポートを渡すよう要求し、本人はその豪邸に連れてこられた。そこで何をするのかについての説明を受け、仕方なく、先に来てそこで働いている先輩たちに混じって犯罪を行なうようになる。
多数の中国人がそこで行っていたのは中国在住の中国人をターゲットにするサイバークライムで、クレジットカード番号と名義人のアイデンティティを手に入れるためにその銀行のコールセンター従業員になりすまして中国に国際電話し、得た情報を使ってカーディング詐欺を行い、詐欺行為の中で複数の人間が銀行職員・警察・データアナリストなどに扮して芝居を打つ。
インドネシアにそのような犯罪基地を設け、中国人を本国からわざわざ呼び込んで犯罪を行なわせるのは、情報テクノロジー機器を駆使して犯罪の足跡を隠蔽し、本国警察の捜査を困難にさせて逮捕される可能性を小さくすることが第一の目的であり、また一般人を犯罪に巻き込んで犯罪者側への加担を継続させるのも容易であるといった要素に犯罪首謀者が着目しているためであるようだ。おまけにインドネシアで犯罪実行者が逮捕される場合、イミグレーション法規違反という罪状で国外追放されるのがオチであり、犯罪実行者が担うリスクも小さい。
この犯罪のアイデアは中国で発生するのが自然なものであり、つまりは中国側が母体となってインドネシアで出先基地の設営と活動が行なわれていると見るのが順当であるように思われる。警察はこの国際シンジケートのインドネシア側組織の摘発に力を注ぎ始めているが、捜査はインターポールあるいは中国の警察機関を巻き込んで行なわれるべきだ、との有識者の意見が強い。
デジタル犯罪専門家はその犯罪パターンについて、「犯罪遂行者が捕まっても国外追放されて一定期間インドネシアに再入国できなくなるという罰しか受けないため、抑止効果が薄い」とますます盛んになっている状況を分析している。かれは2011年に警察の捜査に協力して177人の逮捕を実現させた。昔はVOIPを使って詐欺や恐喝を行なうのがほとんどだったが、今やカーディングまでもがそこに取り込まれるようになった、と犯罪内容の深化を指摘した。銀行職員に扮して被害者を騙す場合に、電話をかける者はコンピュータのキーボードを叩いてまるでオフィスの中から電話してきているような雰囲気を出し、相手を信用させている、と細かいテクニックが使われていることも明らかにしている。


「違法在留外国人の取締りが活発化」(2015年5月18日)
イミグレーション法規に違反する在留や活動を行なっている外国人入国者が増加し、多数の中国人入国者が各地で摘発されている事態を重視した法務省移民局は、国内にいる外国人の違反行為摘発に力を入れている。
2015年5月7日未明にスカルノハッタ空港イミグレーション事務所は空港周辺の宿泊施設に対する検問を実施し、外国人26人とインドネシア人を自称している2人を捕らえて拘留した。身柄を拘留された外国人はナイジェリア、イラン、パキスタンおよび中国の国籍者で、パスポートを持っていない者、持っているパスポートに問題がある者、パスポートに付されているビザに問題がある者など、逮捕理由はさまざま。
また、ブカシ県チカランのデルタマス工業団地内で行なわれたイミグレーションブカシ地方事務所の検問では、国籍が日本、中国、韓国の4人が拘留された。入国許可に違反する活動を行なっていたのが拘留の理由。
同じ5月7日にイミグレーション北ジャカルタ地方事務所は市内クラパガディンのアパートメント「ガディンリバービュー」で外国人を3人捕らえた。その3人はスロヴェニア、イラク、ナイジェリアの国籍者で、かれらはイミグレーション捜査官にパスポートを提示できなかったために拘留されている。


「ドイツ人が国外追放に」(2015年5月27日)
東カリマンタン州バリッパパン移民局地方事務所は、ドイツ人アンドレアス・ヴィルツ46歳に強制出国処分を与えた。観光ビザでインドネシアに入国したかれが犯した違反行為とはこういう内容だ。
バリッパパン市内には、ヴィルツの友人である地元民が経営する学習センターがある。そこでは、さまざまなレッスンが行なわれ、また学習塾もその中にある。さまざまなレッスンには語学トレーニングもあり、ヴィルツはそこでドイツ語会話を教えるようその友人に請われてバリッパパンに来た。その友人の奥さんはドイツ人だ。
先生がやってきたので、学習センター側は生徒募集したが、ヴィルツがイミグレーション捜査官に逮捕されるまでのほぼひと月間、生徒はひとりしかいなかったそうだ。なお、ヴィルツはその仕事を無給で行なっていた。
移民局側の取調べで、ヴィルツは正式なドイツ語教師資格を持っていなかったことが明らかになっている。
ただし、無給であろうと、教師免状を持っていようと、そのようなことは問題外なのである。ヴィルツが行なっていたのは観光入国許可で認められていない活動なのであり、入国資格違反というのがその強制出国処分の理由なのだから。


「再び中国人集団逮捕」(2015年6月1日)
大勢の中国人が豪邸に住み着いて毎日不審な行動をしている、という警察へのタレこみが頻度を増しているようだ。今度は南ジャカルタ市の高級住宅地ポンドッキンダ(Pondok Indah)のスコラドゥタ通りにある一軒の豪邸がその舞台になった。首都警察は2015年5月24日、その豪邸に対する強制捜査を行い、その場にいた中国人と台湾人29人を取調べのために連行した。また、かれらの一味と見られる中国人5人も、西ジャカルタ市チュンカレンの住宅地グリーンガーデンの一軒の家から連行された。
既に頻繁に報道されているように、この種の事件は何者かがインドネシアを舞台にして中国あるいは台湾の国民を詐欺や恐喝にかけることを目的に、騙してインドネシアに来させた中国人や台湾人を使って犯罪を行なわせているという、きわめて国際性豊かなもので、インドネシア当局はこれまでこの犯罪企画者の思惑通り、犯罪実行者たちをイミグレーション法規違反として国外追放する措置しか採っていなかった。
しかし、摘発を何度繰り返しても後を絶たないこのパターンの事件に業を煮やした警察は、捕らえた中国人や台湾人にインドネシアの国法を適用して刑罰を与える方向に態度を変えた。今回捕らえた34人が最初の事例となる。
首都警察一般犯罪捜査局長の談によれば、犯罪企画者は借家にした豪邸に強力な通信機材を設置してインドネシア政府の許可を得ずに使用しているほか、盗聴を行って強請りのタネを探すようなこともしているとのこと。借家の屋根の上には大型のアンテナが設置されている。通信機材無許可使用や盗聴などの行為はインドネシアの「電子取引と情報」に関する法律に抵触するものであり、取調べの内容いかんで犯罪化できるものが見つかればまた検討するとして、当面はその法律に違反している行動という面から送検するかまえのようだ。
その34人についての警察の調べでは、かれらは製品のセールスの仕事をするものと思い込んでインドネシアにやってきたそうだ。かれらの中には、三年前に入国してときどき出入国を行なっている者もいれば、二ヶ月前に入国した者もおり、全員が観光ビザで入国しているとのこと。かれらはインドネシアにやってきて宿舎に入ったあと、これからインドネシアで行なう仕事、つまり詐欺や恐喝など、の内容と作業手順を監督者から叩き込まれているので、その犯罪行為を理解し、そして主体的な意識と認識を持ってその実行に従事していると見ることができる、と局長は述べている。


「ついにビザフリー措置が実現」(2015年6月16日)
インドネシア共和国政府は「訪問ビザ免除」に関する2015年大統領規則第69号を2015年6月10日付けで制定した。ジョコウィ大統領が署名したのは6月9日で、子息の結婚式に立ち会うためにソロに滞在中のことであり、そのとき大統領はジャワ式結婚式のプロセスの渦中に時間を割いて十数件の国事書類にサインしたそうだ。国家官房はその書類をその日ジャカルタに持ち帰り、翌日各書類に必要な事務手続きが行なわれ、「訪問ビザ免除」に関する大統領規則は翌10日中に事務手続きが完了してその日の制定となった。2015年大統領規則第69号第9条に、「この規則は制定日から施行される」と記されているので、発効したのは6月10日であり、大統領がサインしたときでもなければ、政府が公式発表を行なった6月12日でもない。
今回の措置で、観光のみを目的とする入国に際して従来必要とされていた訪問ビザを次の30カ国国民に対し免除することをインドネシア政府は確定させた。30カ国とは次の諸国を指している。
中国・ロシア・韓国・日本・アメリカ・カナダ・ニュージーランド・メキシコ・イギリス・ドイツ・フランス・オランダ・イタリア・スペイン・スイス・ベルギー・スエーデン・オーストリア・デンマーク・ノルウエー・フィンランド・ポーランド・ハンガリー・チェコ・カタール・アラブ首長国連邦・クエート・バーレイン・オマン・南アフリカ。
それらの国民がビザフリーでインドネシアに入国することを希望する場合、特定入国ポイントにあるイミグレーション窓口を通らなければならない。その特定入国ポイントとは;
ジャカルタのスカルノハッタ空港、バリのグラライ空港、メダンのクアラナム空港、スラバヤのジュアンダ空港、バタムのハンナディム空港の5空港、およびリアウ州とリアウ島嶼州にあるスリビンタン海港、スクパン海港、バタムセンター海港、タンジュンウバン海港の4海港。
またこのビザフリー制度を利用する場合においても、インドネシアから出国するための航空券を入国時に所持していなければならないのはこれまでと同じだ。「イミグレーション」に関する2013年政令第31号第2部第1パラグラフ第4条に、インドネシアへ入国する外国人は国外に出るための航空券を所持していなければならないと記されており、それが入国に関する基本条件となっている。どのビザがどうという概念でなく、基本条件を免除するかしないかというのが実際の対応になっているため、ビザフリー制度にその免除条項が記載されていない以上、この新制度も適用対象になると見なすのが順当だろう。またパスポートに6ヶ月以上の残存期間があることや、白紙ページが十分にあることも、従来同様に適用されるとのこと。
ところで、ちょっと解りにくいことがらが今回の措置にからまっている。それは何かと言うと、従来どおりの有料VOA(到着時ビザ)も上の30カ国国民に適用されているのだ。何が違うかと言えば、顕著な違いは次のようなものだろう。
*ビザフリー入国は有効期限が最長30日間で、延長も他のビザへの切り替えもできないが、VOAの場合は最長30日間の延長が一回だけ可能になっていること。もちろんVOAでも他のビザへの切り替えはできない。
つまり、希望する滞在期間次第でその選択が入国者に委ねられているということが言えるにちがいない。
*訪問ビザの一部である今回のビザフリー措置は観光のみを目的とする入国に限定されており、これまでの到着時もしくは事前に取得するビザで許されていた商談等の活動は禁止されることになる。到着時もしくは事前に取得していたビザで許されていた観光以外の活動を行なう場合はこれまでと同様に有料でビザを取得しなければならない。
*なお、今回の30カ国に対するビザフリー措置適用前からビザフリーが適用されていた、タイ・マレーシア・シンガポール・ブルネイ・フィリピン・ベトナム・カンボジャ・ラオス・ミャンマー・チリ・ペルー・エクアドル・モロッコ・香港・マカオの15カ国および行政地域国民に対する処遇は何ら変更なく継続されるので、それらの国民はインドネシアのどの入国ポイントからでもビザフリーで入国でき、また政府活動・教育・社会文化・観光・ビジネス・親族・報道・トランジットなどの活動も自由に行なうことができる。つまり、新規30カ国国民に対する処遇はその15カ国国民とはかなり異なるものになるのである。
ともあれ、ジョコウィ大統領の長男の華燭の宴の中でついに実現された観光入国ビザフリー制度は、あたかもその実現を切望していた大統領からの引き出物であるかのようだ。


「インドネシアに出稼ぎするナイジェリア人」(2015年6月26日)
ナイジェリアシンジケートはジャボデタベッ地区でシャブビジネスをますます活発化させている。インドネシアに入り込んだナルコバ出稼ぎナイジェリア人は、まずインドネシアの女性を陥落させる。そして精神的・経済的・性的に自分の相棒にしたインドネシア女性を使って、ナルコバビジネスを展開するのである。
たとえば、2015年6月10日にブカシで逮捕されたナイジェリア人スティーブン30歳とインドネシア人シスカ31歳のカップルはその一例だ。ジャカルタ空港税関が宅配便小包みの中にシャブ20.88キロが隠されているのを発見し、国家麻薬庁捜査官がその小包みを届けて受け取ったシスカと相棒のスティーブンを逮捕した。国家麻薬庁は続いて、ナイジェリア人キングスレーにフェイスブックを通して陥落されたインドネシア人女性45歳がシャブの運び人として使われているのを、これも両者そろえて逮捕した。更に17日には、やはりナイジェリア人に陥落されたインドネシア人女性31歳が中国から送られてきたマッサージ機器を輸入品倉庫に受け取りに来たところを首都警察が逮捕し、相手のナイジェリア人もその女性の手引きで逮捕された。シャブ16キロが仕込まれたマッサージ機器は輸入通関時に税関の知るところとなり、その受取人が倉庫に現れるのを警察は手ぐすね引いて待っていた。この女性は相手の男に言われて中国から送られてくるマッサージ機器の宛先人に名前を使われ、届いた品物を受け取りに行くという損な役割を強いられていたということになる。
かれらナイジェリアシンジケートがインドネシアの非合法活動で得た金をどのようにロンダリングしているのか、その実態はまだ解明されていないが、インドネシアで稼いだ金でかれらはナイジェリアに商店やホテルを建てたり、あるいは種々の事業を興すといった合法的な経済活動を行なっているという未確認情報を国家麻薬庁は得ており、ナイジェリアシンジケートの身上がおぼろげなから見えはじめている感触を得ているとのこと。ナイジェリアにちらほらと登場し始めた新興成金の多くはインドネシアでのナルコバビジネスを資金源にしているというのである。
スティーブンとシスカはブカシのブミサトリアクンチャナ住宅地に住み、その一帯のエリアでシャブ常習者を作り出す活動に精を出していた。その地域に住むアッパーミドル層家庭の若者が、かれらの標的にされた。地元情報によれば、その地区で2014年にナルコバのために30人の若者が生命を失っている。
シスカは取調べに対し、自分はただスティーブンの行動を手伝っていただけであり、スティーブンに篭絡され、2千万ルピアの金をもらえるという約束でスティーブンの言うことに従っていただけだと供述している。シスカは6ヶ月間に二度、シンジケートから送られてきた中国産シャブを受け取って保管し、その報酬として5百万ルピアをもらっただけだった。
一方のスティーブンは、インドネシアに住み着いたのは一年前で、中央ジャカルタ市プタンブランに住み、シンジケートが行なうシャブの流通販売を行なっていただけだ、と供述している。シャブの密輸には携わっておらず、シャブの販売が仕事で、1キロ捌けば百万ルピアの報酬になったとのこと。
ナイジェリアシンジケートはだれかをキーパースンとする密輸入方式をやめてしまい、小包みにしてジャカルタに送り込む方式に変えた。品物の原産地は中国で、中国のローカル港から小分けされた品物がマレーシアに運ばれ、マレーシアからジャカルタの住所宛にクーリエ小包みの形で送られてきている。


「外国人医師の就労条件」(2015年8月25日)
アセアン域内開放で職業自由化が行なわれ、アセアン加盟国の間で勤労者の移住が活発化することが予想されている。これまで外国人医師の就労を法規上シャットアウトしていたインドネシアも、建前上は加盟国の医師の就労を受け入れる体制作りを余儀なくされている。そのとき、外国人医師の就労にどのような条件を課すのかが重要な問題になる。2015年末には自由化がスタートするため、条件の法制化を早急に進めなければならない。インドネシア医学カウンシルによれば、資格・能力・経歴・分野に関わる条件が計画されているとのこと。
1)職業経験ミニマム5年
2)インドネシア語が話せる
3)僻地での医療活動を拒まない
自由化が開始されると、大勢の医師や歯科医師が教育・リサーチ・サービス・社会奉仕などのルートでインドネシアに入ってくることが予想されており、インドネシア国内で医療活動を行なうことを希望する場合は、一ヶ月以上前にカウンシルに申請を提出しなければならない。カウンシルはその医師が国にメリットをもたらすかどうかを審査し、判断する。そのための期間が最低一ヶ月ということだそうだ。
インドネシア人医師保護のために、外国人医師には厳しい条件を課さなければならない。カウンシルの審査ポイントは、インドネシアにとって希少価値のある医師であるのかどうか、知識移転が可能であるかどうか、受け入れて勤務させる病院が確定しているのかどうか、といったものにしたいとのこと。そして就労期限は一年間をカウンシルは希望している。
2015年7月時点でカウンシルに登録され、またサティフィケートが発行されている国内のインドネシア人医師は、一般医106,556人、専門医28,428人、歯科医26,529人、歯科専門医2,633人となっており、カウンシルはかれらの仕事場が確保されるように努める責務を負っているのである。


「入国ビザフリーの第二波」(2015年9月7日)
もともと15カ国国民に入国ビザ免除を与えていた政府は、15年6月9日に日本を含む30カ国国民を対象にして観光目的に限定した入国ビザ免除を与えた。ジョコウィ大統領の観光客誘致方針の基本戦略であるビザフリー政策に沿って、2016年に観光目的入国ビザ免除対象国が更に増やされる計画になっていたが、その時期は15年10月に早められ、10月から更に47カ国国民がビザフリーの恩典に浴すことができるようになる。
2015年9月1日に政府が発表した、10月から入国ビザフリーが適用される国は次の通り。
オーストラリア・インド・台湾・サウジアラビア・ティモールレステ・アイルランド・ブラジル・ポルトガル・トルコ・エジプト・ルーマニア・イエーメン・アルゼンチン・ブルガリア・ギリシャ・カザフスタン・スロバキア・スロベニア・チュニジア・エストニア・クロアチア・リトアニア・ヨルダン・アルジェリア・レバノン・ラトビア・ルクセンブルグ・アイスランド・ベラルーシ・タンザニア・モルディブ・ベネズエラ・キプロス・フィージー・マルタ・アゼルバイジャン・ガーナ・キルギスタン・スリナム・パナマ・ドミニカ・セイシェル・アンゴラ・モナコ・サンマリノ・バチカン
政府はアグレッシブな観光客誘致と観光収入増加目標を立てている。それによれば、2015年から2019年までの間に、観光客誘致目標を1千万人から2千万人に倍増させ、観光収入も100億米ドルから200億米ドルに膨らませた。観光セクター就労者数はもっと意欲的に、3百万人から7百万人へという数値になっている。
内閣リシャッフルで海洋統括大臣の座に就いたリザル・ラムリ氏は新規47カ国の選抜について、ドラッグ・不安定・過激派のリスクが高い国は除外してある、とコメントしている。また観光大臣はこの10月から観光入国ビザフリー対象国が92カ国になるのに鑑みて、2016年10月までの一年間で観光客120万人外貨収入120億ドルのアップを目標に据えた、と語っている。大臣の目算は、ビザフリー対象国民が総観光客数の6割を占めることを踏まえたもの。中でも、オーストラリア人120万人、インド人30万人、台湾人20万人という実績が、ビザフリーになることでどれだけ増加するかというのがその点に関するポイントのようだ。


「外国人就労者を制限せよ」(2015年9月8・9日)
インドネシア人ができる仕事の就労許可は絶対に外国人におろさないのが建前になっているというのに、現実はそれと大違いだという苦情が国内あちこち、特に現場レベルから出てきている。
東ジャワ州労働者同盟コーディネータはスラバヤで、現場の実態はますます法規との齟齬が拡大しており、もはや制御不可能な状態になりかかっている、とアピールした。不法就労違反者が発見されても、本人に行政罰として罰金を科すだけで終わってしまい、法執行が正しく行なわれていない、とかれは言う。
東ジャワ州庁労働トランスミグラシ住民管理局のデータによれば、州内のさまざまな企業が雇用している外国人は1万4千人となっている。出自国は中国・台湾・アセアン諸国・日本といった順番だそうだ。
中部スラウェシ州パル市では、もっと驚くようなことが起こっている。パル市マンティクローレ郡ポボヤ町に、国民に開放されている金鉱山がある。地方自治体の管理のもとに、国民はそこで金鉱を掘ることが許されているのである。その黄金採掘場で黄金を掘っている肉体労働者たちに混じって、5人の中国人が立ち働いているのが見つかった。インドネシア語が話せないのだから、外国人であることはすぐにわかる。民衆金鉱山で黄金を掘る権利はインドネシア国民にしか与えられておらず、外国人がそこに割り込むのは明らかに鉱業法への違反行為だ。その外国人の存在を関知したイミグレーション事務所から取締官がやってきて、5人を抑留所に引っ立てていった。
パル市イミグレーション事務所によれば、その5人は年齢45歳がふたり、42歳・35歳・32歳が各ひとりの中国籍者で、中国の貴州居住者であり、インドネシアのスポンサーが付いてインドネシアに就労者として入国したことまではかれらの供述で明らかになっているものの、パスポートも持っていなければ入国許可や居住許可を示す書類もなにひとつ持っていない。そして、かれらはどのようなルートで民衆金鉱山にやってきて、いったい何のために働いていたのかといった状況もすべてが曖昧模糊としている。イミグレーション事務所の調べによれば、5人はおよそひと月前にポボヤの金山にやってきて、岩を削る仕事に精出していたようだ。イミグレーション事務所ができる違反者への処罰は国外追放であり、その5人を国外追放するために諸方面との調整が進められているのだが、中部ジャワ州鉱業法律ネットワーク理事は外国人の国内法規違反という犯罪を、ただの国外追放措置で終わらせてはならない、と強く主張している。出入国法規違反だけで処理するのでなく、別の法規の違反も裁かなければならず、警察を関与させて送検・起訴の法的プロセスをも行なえ、というのがその主張だ。
外国人をインドネシア国内で就労させるために国内法人がスポンサー雇用者となり、正規の手続きで外国人を国内に呼び入れたものの、国内に入った外国人に許可を得た職種でない仕事をさせている実態にメスを入れ、その法人の違反行為を裁かなければならない。そうすることで、スポンサー雇用者が外国人就労者に関して持たされている国家に対する責任が首尾一貫することになるはずだ。州警察は理事の主張を取り上げ、今回の事件に対する法的プロセスを採る意向であることを表明している。
2014年11月にも、パル市ウルジャディ郡ワトゥサンプ町の鉱山で岩石切削機を自ら取扱って作業していた中国籍者5人をイミグレーション事務所が摘発した前例がある。そのときの5人はパスポートとKITASを持っており、かれらの入国と就労に関わる状況は明白だったが、就労許可によれば、かれらはジャカルタとスカブミで就労する内容になっており、パル市イミグレーション事務所は二週間後にかれらを中国に向けて国外追放している。
「鉱業セクターの外国人就労許可は往々にして電気作業の仕事に流用される傾向が従来からあり、さらには専門性を必要としない仕事に就かせることもさまざまに起こっている。たとえば運転手のような仕事だ。専門性を必要としない仕事に外国人を絶対に就かせてはならない。政府はそのような違反行為を是正しなければならない。専門性の不要な仕事には地元民を雇用させよ。国民の労働の権利を守ることが大切なのだ。」インドネシア資源戦略研究センター理事はそう語る。
中部ジャワ州チラチャップ県で、中国資本による種々のインフラ工事が行なわれている。工事の現場監督はもちろん専門性が必要だと言えるだろうが、インドネシア人の現場監督はたくさん巷を徘徊している。ところが中国資本の工事現場では、中国人が現場監督をしている。これは外国人雇用に関する国法への違反行為ではないか、とチラチャップ県鉱業化学産業労働者連盟委員長は語る。外国投資プロジェクトでは、外国人就労者は許可された仕事の内容から外れた、もっと下のレベルの仕事をしているケースがいろいろ見受けられる。工事現場の監督もそのひとつだ、と委員長は述べている。おまけに、同じ工事現場監督の仕事なのに、その仕事をしている中国人は月給3千万ルピアであり、同じ業務をしているインドネシア人の月給は3百万ルピアでしかない。プロジェクトのひとつである火力発電所建設工事は2012年から行なわれているが、その工事に雇用されている2千人の中で中国人就労者は25%近くを占めている。
一方西カリマンタン州クタパンでも、大型外国投資プロジェクトが勧められている。ボーキサイトのスメルター建設工事がそれで、中国の鉱業会社を主体にインドネシア企業を交えた三社が工事を進めている。1千3百人が工事に関わり、そのうちの230人が中国からやってきた就労者だ。かれらが作業現場で力仕事をまったくしていないのであれば、インドネシアの法規は守られていることになるのだが。
労働省は、外国人就労を2015年労働大臣規則第16号に則して制限しようとしている。しかし、外国からの直接投資を増やしたい方針との狭間にあって、思うに任せない。だから政府は、国民就労人口との対比で外国人就労者の総数をコントロールする方向に傾いている。外国人就労者人口は7万人おり、それは国民就労人口の1%にも満たない。2015年の7ヶ月間に労働省がスポンサー雇用者に与えたIMTA(外国人雇用許可)は被雇用者の国籍別に、中国13,034件、日本10,128件、韓国5,384件、インド3,462件、マレーシア2,814件、アメリカ2,323件、タイ2,312件といった順位になっている。
2015年労働大臣規則第16号に定められているように、国内法人の外国人雇用は専門性を必要とする職種に限定され、その仕事に使えるインドネシア人が本当にいないことが前提とされている。そして、外国人を雇用した法人に対しては、インドネシア人の雇用を増やすように指導される。外国人を雇用するならインドネシア人も抱き合わせて雇用せよ、というのがどうやら労働省の言っているコントロールという言葉の内容らしい。


「外国人旅行者の銀行口座開設」(2015年9月14日)
世界的な不況に巻き込まれているインドネシアを更にルピアレートの軟化が鞭打っている。脆弱な体質の国内産業はその相乗効果がもたらす悪影響に青息吐息のありさまだ。既に1米ドル1万4千3百ルピア台まで滑り落ちてきたルピアレートのジリ貧を止めなければ国内産業の体勢立て直しすら難しいことに鑑みて政府はさまざまな手を打っているものの、ルピアレートのジリ貧はとどまる気配を見せない。国内外為市場でのドル買い意欲が依然として強い中、国内市場での外貨の絶対量が不足しているのだから外貨が値上がっていくのは当然であり、市場での外貨量を増やすために政府は国民、特に企業、が海外に置いている外貨をすべて国内で売らせるように努めているにもかかわらず、どうやら面従腹背の返し技に落とされているような感触だ。中銀は市中外為銀行界に対し、企業顧客が外国に置いている外貨を国内に引き戻させるとともに、企業のドル建て取引はすべてルピア建てに変更させるよう誘導していけとの指導を与えた。それはもちろん銀行界にとってもメリットのあることがらには違いないものの、そう簡単に企業顧客が銀行の言いなりになって自社の振舞いを変えるものかどうか?
それとは別に政府金融サービスオーソリティは、外国人旅行者に外貨をインドネシアに持ち込ませる方策を考え付いた。従来から、居住許可を得ている外国人にしか銀行口座開設を認めなかった通貨オーソリティが一転して手のひらを返すように、外貨集めを裏に秘めた自由化を考案したかっこうだ。
2015年9月9日にジョコウィ大統領が公表した9月経済政策パッケージ第一弾内の一要項として、外国人旅行者はパスポートを提示するだけで、国内の市中外為銀行でドル口座を開設できるようにするという内容が示された。金融サービスオーソリティ長官はその方針が来週からでもスタートできるように、今週中に銀行界に通達を出す意向であることを表明している。
閣議に提案したその内容の根拠について金融サービスオーソリティ長官は、年間1千から1千2百万人の外国人ツーリストがインドネシアを訪れており、その中にリピート訪問者が含まれている、と言う。「ビジネスか、商売か、ファミリー訪問か、留学か、あるいは他のどんな理由であれ、インドネシアに繰り返しやってくる外国人がいる。たとえばそれを全体の2割だと仮定するなら、240万人はインドネシアの銀行に自分の個人口座を持つことを望んでいるにちがいない。だからかれらに自分の口座を開く便宜を提供すれば、かれらは外貨を持ち込んできてくれる。」
そういう構想のもとに、外国人旅行者がパスポートだけで個人口座を開設できる方針が定められた。ただし、その口座は初回入金が2千米ドル以上であり、口座残高は2千から5万米ドルの間で維持されなければならない。2千ドルを下回っても、あるいは5万ドルを上回ってもいけないという条件が付けられている。また、残高が1万米ドルを下回った場合の口座維持費用は高く設定される。
もし5万米ドルの上限をはずしたければ、外国人はもうひとつ別の書類を用意しなければならない。それは次のようなものになる。
* 居住地証明書 Surat Keterangan Domisili Setempat
* 暫定居住許可証 KITAS
* インドネシアでの住居賃貸契約書コピー
* インドネシア国籍者である妻のアイデンティティ証明書
* 本国の銀行からの紹介状
最初の三つは旅行者には無縁のものであり、長官は多分、外国人居住者と外国人旅行者を横並びにして上限なし口座開設の条件を語ったように思われる。
旅行者が残高10万米ドルの口座を開設する場合、開設時に求められる条件は5万米ドル超のものと同じだが、いくつかの条件が付されることになる。たとえば口座開設銀行が限定されてくる。つまり、その大口口座開設を受け付けない市中外為銀行があるということだ。一方、それを受け付けてくれる銀行は、残高の規模次第で金利所得税を軽減してくれる。金額が大きくなればなるほど、金利からカットされる所得税は法定の20%よりも小さくなっていくとのこと。
この外国人旅行者の銀行口座開設は、顧客デユーデリジェンスが前提条件となっており、金利は各銀行の預金金利率が適用されて、所得税が課税される。そして預貯金保証機関による法規に定められた内容での口座保証対象となる。預貯金保証機関はその時期に応じて妥当な金利率を指定し、その金利率を超えない預貯金に対して本人がその銀行に預けた元利を保証するものであり、元利合計の上限も定められている。たとえば今であれば、2015年5月15日から9月14日までの妥当な外貨金利率は1.5%で、元利合計は20億ルピアとなっている。


「観光ビザ免除適用海港が増加」(2015年9月14日)
インドネシアへの観光目的入国ビザフリー対象国が増やされ、15年10月から92カ国国民がビザなしでインドネシアへ入国できるようになるが、しかしそれは特定の空港海港のみ(5空港4海港)という制限条件が付けられている。
その中で、バタム・ビンタン・カリムンというリゾート地にシンガポールやマレーシアからやってくる観光客はもっとたくさんの海港から入国しており、ビザフリー対象国民にとってはかえって不便さを感じる原因になる。外国人観光客を増やすというせっかくの政府方針が不完全燃焼するのではもったいないのでもっと増やして欲しい、という要請がリアウ島嶼州庁から出されていた。
政府はリアウ島嶼州の要請に応えて8月31日付けで2015年法務人権大臣規則第22号を出し、海港を次の9つに増やした
1) Sri Bintan Pura Tanjungpinang
2) Sekupang Batam
3) Batam Centre Batam
4) Nongsa Terminal Bahari
5) Marina Teluk Senimba
6) Citra Tri Tunas
7) Bandar Bentan Telani Lagoi
8) Bandar Seri Udana Lobam
9) Tanjung Balai Karimun
空港はジャカルタのスカルノハッタ空港、バリのグラライ空港、メダンのクアラナム空港、スラバヤのジュアンダ空港、バタムのハンナディム空港の5空港で変化ない。


「インドネシア語会話能力」(2015年9月28日)
2015年9月12日付けコンパス紙への投書"Mampu Berbahasa Indonesia"から
拝啓、編集部殿。2015年8月21日金曜日にジョコ・ウィドド大統領は「インドネシアで就労しようとする外国人はインドネシア語の会話能力があること」という規定を公式に取り消しました。
それは実に驚くべき方針です。外国からの投資を押し上げたいという理由で大統領は、「インドネシア語でコミュニケーションができる」と明記されている2013年労働トランスミグラシ大臣規則第12号第26条(1)項(d)を無効にしたのです。政府はいったいどんな投資を期待しているのですか?投資は雇用を増やして国民が就労できるようにするためのものではないのですか?
ところが、インドネシア語会話能力条件を抹消し、この年末にアセアン経済コミュニティがスタートすれば、外国人労働力が続々とインドネシアへやってきます。インドネシア語会話能力条件の抹消は、外国人労働力がインドネシア人の働き口を奪うことを放置するのに他なりません。それは国民を殺すようなものです。
中下層の仕事まで外国人に入り込まれたら、国民はどうすればよいのですか?米蔵の中で死ぬようなものではありませんか?職業に就く機会を国民に確保することもなければ、地元民への職業指導もありません。大卒者ですら大勢が失業者になっています。もっと低学歴の者はどうなるのですか?
政府は投資高ばかりに関心を払うのでなく、将来どのようなリスクが待ち受けているかということまで考えるようにしてください。[ 東ジャワ州マラン在住、マシト ]


「入出国カード廃止」(2015年10月13日)
2015年7月20日付けコンパス紙への投書"Formulir Imigrasi dan Cukai"から
拝啓、編集部殿。政府は再びビザフリー恩典を30カ国に与える計画をしています。それが実現すれば、75カ国がビザフリーを享受することになります。156カ国にビザフリーを提供しているマレーシアほどではありませんが、これは間違いなく優れたブレイクスルーです。
マレーシアのように、ビザフリーと一緒に入出国時の書類記入(イミグレーションと税関)もなくしてほしいものです。そうすることで、わが国を訪れる外国人観光客の面倒が減るわけですから。わたしが最近ホーチミン市を訪れた際、そのような待遇を享受することができました。ベトナムでさえ書類記入なしにしているというのに、わが国は入国者に書類記入の手間を継続させて、いったい何を心配しているのですか?
X線チェックの装置の横に立っている空港税関職員の態度を見てご覧なさい。入国者が手渡す税関申告書類の内容を、かれらは見ようともしません。税関職員が見ようともしない申告書類を入国者に記入させて入国時の手間を増やしているのは、いったい何のためなのでしょうか?
一方、イミグレーションについては、入出国カードをやめるだけでなく、担当官にもっとフレンドリーな対人接触を訓練してください。中国の例がひとつの参考になるでしょう。中国の空港では、個々の入国手続きブースのカウンターに、担当官の評価を入国者がインプットするするための装置が置かれています。入国者はイミグレ担当官のサービスがよかったかどうかの判定を、その装置で管理者に通知できるわけです。[ バンドン在住、ウィスヌ・ワルダナ ]
2015年7月29日付けコンパス紙に掲載されたイミグレーション総局からの回答
拝啓、編集部殿。ウィスヌ・ワルダナさんからの7月20日付けコンパス紙に掲載された入国時の書類に関する投書について次の通りお知らせします。
Arrival & Departure Card (A/D Card)あるいはEmbarcation/Disembarcation Card と呼ばれている入出国イミグレーション書類は、BCM(Border Control Management)が開始されて以来、使われなくなっています。BCMとは、インドネシア領土に出入りする人間の動きをイミグレーション面から調べて記録するシステムで、すべての出入国ポイントにあるイミグレーション検査場所で既に実施されています。つまり、国境通過ポイントを除く、国際開港になっている空港と海港のすべてです。
空港のイミグレーション検査官に対する評価は、入国者のために満足度インデックスマシーンが設置されています。[ 法務人権省イミグレーション総局広報管理課長、ヘリヤント ]


「外国人就労者の監視を強化」(2015年11月19日)
南カリマンタン州議会労働特別委員会が州政府に対し、州内で不法就労している外国人労働者の取締りを強めるよう求めた。委員会は二週間前にタバロン県で操業しているPTコンクサウスカリマンタンセメント社を抜き打ち訪問し、同社で働いている外国人の就労許可を調べた。すると中国人5人が、IMTAもなければKITASも所持しておらず、不法就労であることが明らかになったため、違反者5人をバンジャルマシン一級イミグレーション事務所に引き渡した。その5人は数日後に国外追放されている。
この事実に注目し、州政府は州内にいる外国人就労者の監視を強め、その合法非合法を厳しくチェックし、違反者に対する法執行を確実に行っていかなければならない、と委員会委員長は州政府に発破をかけた。


「不法就労者取締りを真似る強請り屋」(2015年12月1日)
総犯罪者化社会では、一般市民は山のようにある法規の網のどこかに引っかかる可能性が高く、おまけにやはり山のようにある許認可と登録を証明する行政管理が的確に行われていないために、その面も総犯罪者化社会の形成に一役買っており、なければならない書類を調べ上げていけば、やはりどこかに足をすくう穴が口を開いている可能性が高い。
その状況と不法徴収金をゆすり取る体質は表裏の関係にあり、その基盤に横たわっているものが中世的なホモホミニルプス精神であり、そこに構築されるものが腐敗構造であるという見解は的外れでないだろう。
違反行為に罰金が科されるのが常識化しているため、犯罪者にされる側にいる市民はすべてを金で片付けようとする心理傾向を持つ。その結果が「金はイージーカム・イージ−ゴー」という金銭観を基本観念の中に植えつけることになるのだが、金を天下の回りものと見て執着しない姿勢は良いとしても、倫理面からの正邪のアプローチがそこに関わってこないのは、やはり恐ろしい気がする。
ともあれ、総犯罪者化社会では犯罪を取り締まる官憲が常に市民より優位に立つのは疑いがなく、おかげで官憲になりすまして一般市民から搾り取ろうとするならず者の出現はあとを絶たない。その中に外国人就労者をターゲットにする者がいる。
現実に、インドネシアの就労許可規則に違反して滞在し、働いている外国人の場合、なりすまし役人にアプローチされると金で解決しようとするのが当たり前であり、なりすまし役人は当然金を搾ろうとしてそうしているのだから、かれらが脅かす抑留所や留置場に入れて国外追放などというせりふが実行されるわけがない。そんな連中に金を渡してインドネシアの役人はみんな腐っているなどと言うのは、正確さという視点から見るなら、誤解だと言えるだろう。
かれらはターゲットにできそうな外国人を発見すると、しばらくその人間の日常行動を観察する。そして脅しに使うためのいろいろな情報を手に入れると、その人間にアプローチをかける。その人間の居所を4人くらいでいきなり訪問する手段が普通だ。もちろん、もっとインスタントに、街中でたまたま行き逢った外国人にからんでいく手口がないわけでもないが、成功確率は大幅に違うはずだ。
ターゲットの居所にやってきたかれらは、本人の名前や仕事などの情報を散りばめて、あたかも相手を熟知しているような話をし、就労やイミグレ関連の書類を提示させ、その中から違反行為として突っ込んでいけるものを探し出す。そして違反者への罰をあれこれ語って威嚇し、追い込んでいく。
鉱業会社で働く中国人シュー・シーチャオ氏41歳がその手合いのターゲットにされた。イミグレ捜査官だ、首都警察捜査員だ、国家諜報庁員だ、などと名乗る男たち4人に取り調べられ、「あなたは違反を犯している。パスポートに問題がある。これだとあなたは留置場に入ることになり、取調べのあとで国外追放だ。あなたがインドネシアに持っている資産はすべて置いていかなければならない。」などと脅かされたが、永くインドネシアで働いていて外国人管理法規にも詳しいシュー氏は、かれらのアプローチが言いがかりであることを見破った。
すくみあがって、金で見逃してもらおうとするのを期待していたそのなりすましグループは、犯行が失敗したことを覚り、実力行使に出た。4人がかりでシュー氏を押さえつけ、暴力をふるい、シュー氏のクレジットカードと携帯電話機を奪ってその場を去った。シュー氏の届出によって首都警察が捜査を進め、一味のふたりを逮捕し、もうふたりを追跡中。
「この種の犯罪の被害者になったエクスパットはもっと大勢いるはずだが、ほとんど警察に届けを出してこない。被害を受けた外国人はどんどん警察に届け出てください。」と首都警察側は表明しているが、偶然にせよ被害者が不法就労者であった場合、届出などするはずがないだろう。かれを恐喝した者が腐敗したホンモノ役人か、あるいはなりすましニセモノ役人であるか、そのいずれにせよ、被害者も法規違反の弱みを持っているのだから、警察を避けようとする心理が働くのは言うまでもあるまい。


「強請られるガイジンエクスパット」(2015年12月2日)
台湾人ユアン・ミンシー氏はインドネシアに設立された台湾系資本鉄鋼加工工場の取締役だ。2015年10月のある日、マジャラプンバルアンと称する雑誌の編集部から名指しで手紙が届いた。
「あなたの工場ではさまざまな法規違反が行われているとの情報があるので、取材インタビューしたい。」ユアン氏は無視した。
10月27日、ユアン氏はセックスフレンドのノフィ31歳に誘われてチブブルにあるホテル「チブブルイン」に泊まった。ノフィとの関係は2008年から続いている。
ふたりは16号室に入り、ベッドインした。ところが、ユアン氏がいざ事に及ぼうとすると、ノフィは体を閉ざす。そのとき、部屋の扉がノックされた。ノフィが扉を開くと、いきなり四人の男たちが闖入してきた。そして、イミグレーション捜査官・法務人権省職員・警察・新聞記者と名乗る四人は、夫婦でない男女の性行為は刑法に触れる犯罪行為であると言い立て、この犯罪事件は国家警察本部で取り扱われ、新聞種になり、おまえは国外追放される、とユアン氏を脅し、それがいやなら百億ルピアの金を用意しろ、と迫ったのである。
かれらの言うことに従うほうがすべてうまくいくから、とノフィはユアン氏を慰めて金でかたをつける方向にユアン氏の心理を誘導した。逮捕されて世間に恥をさらすことを恐れたユアン氏は現金20億ルピアと80億ルピアの小切手を恐喝者に渡した。
実際にインドネシアの刑法典第284条には、不倫行為は婚姻の神聖さを穢す犯罪であり、不倫を行った夫婦のいずれかとその相手は最長9ヶ月の入獄が科されると記されている。インドネシアの法体系で売春は非合法とされておらず、美人局行為が刑法犯罪とされている程度だから、不倫はしないで売春婦を買えという方向を社会が指向していると言うことができそうだ。ここにもインドネシアの特異性をわれわれは見ることになる。
ユアン氏は自分が陥った状況を見直し、また友人たちからも情報を集め、恐喝者たちが本物なのかナリスマシなのかは判然としないものの、自分が犯罪の餌食になったことは間違いないと確信した上で、11月16日、国家警察本部にこの事件を届け出た。国警本部は事件捜査を首都警察に命じた。
首都警察は三日間でその事件の全貌を洗い出し、19日にチブブルのBCA銀行で額面80億ルピアの小切手を現金化しようとしていたヨガ31歳と仲間ふたりを逮捕した。続いて30分後に雑誌記者ミングス51歳をボゴール県チケアスで逮捕し、13時に中央ジャカルタ市イミグレーション総局事務所で職員アジ29歳を逮捕。更に19時には法務人権省職員デニー36歳をクマヨランで、20時には雑誌社編集部職員ボイク70歳を南ジャカルタのタンジュンバラッで逮捕した。
実は、ユアン氏とノフィの濡れ場に踏み込んだ四人の男たちは国警職員を名乗ったヨガだけがナリスマシで、他の三人は実の職業を名乗っており、腐敗役人と強請り屋の混成部隊だったのである。さらに奇妙なことに、警察はユアン氏の情婦ノフィをも逮捕した。ユアン氏強請り事件の黒幕として。
この事件の裏側には、このようなストーリーが展開されていたのである。ユアン氏とノフィの性友関係は永い。ノフィの言い分によれば、ユアン氏は「邸宅を買ってやる」「高級車を買ってやる」「10万ドルの現金をおまえにあげよう」などといろいろ約束したそうだ。ところがそのすべてはペペサンコソン(空手形)で、この8年間一度も実現したことがない。
普段からユアン氏の身近に接しているため、かれの経済状況は手に取るようにわかっている。つまり、できるのにしようとしない、ということが。そのためにこの男についてきたのに、すっぽかされたのでは許せない。この男に金を出させるには、怖がりで世間体を気にする性格を利用して、一泡吹かせてやる手が一番だ。
実行を決意したノフィはチブブルのモールチプトラに友人のヨガを呼び出し、アイデアを話した。自分にも分け前が手に入るのだから、ヨガが友達甲斐を示すのは当たり前だ。ヨガが行動を開始する。まず、ノフィはユアン氏の勤める工場でさまざまな規則違反が行われているとでっちあげ、そのネタで強請ろうと考えた。ヨガはゴロツキ記者のミングスとその親分格のボイクを仲間に誘い込み、工場のユアン氏に手紙を送る。しかし、まったく反応を示さないユアン氏の態度に、ノフィは作戦を変えた。「わたしとの不倫行為をネタにして強請るのよ。」
エクスパットを攻めるのなら、イミグレだな。ヨガはそう考えてノフィとシナリオを練り、そして不良イミグレ職員と法務人権省外人管理部門職員その他雑用の世話をする者たち7人をリクルートした。ユアン氏強請りチームはノフィを含めて11人に膨れ上がった。仲間は多いほどよく、心強い、というインドネシアの価値観が躍如としている。
そうして、10月27日の本番となったわけだ。
首都警察は11月19日に風のような台湾人エクスパット強請りチーム捕縛作戦を実施してノフィを含む8人を逮捕した。他の脇役3人は男ふたり女ひとりで、警察はその三人を追跡中。


「ビザフリー入国者が逮捕される」(2015年12月15日)
メダン市特別一級イミグレーション事務所が、市内のホテルでカードの説明販売会を行っていたマレーシア人13人とフィリピン人1人を逮捕し、入国許可違反で抑留した。
かれらが販売していたカードは、ネガティブイオンを含んでいるため健康改善・節電・自動車燃油の節約が可能になる、という触れ込みで一枚75万ルピアの値付けがなされ、MLM方式でメダンを中心にそのカードの販売ネットワークを築くことが目標とされていたようだ。
かれらはビザフリーで入国しており、以前から政府が与えていたタイ・マレーシア・シンガポール・ブルネイ・フィリピン・ベトナム・カンボジャ・ラオス・ミャンマー・チリ・ペルー・エクアドル・モロッコ・香港・マカオ国民に対する短期訪問ビザフリー制度は商談までは認められているが、実際の物品販売は認められていない。
この内容は2015年6月10日付け大統領規則第69号以来、多数諸国に与えられているビザフリーと異なっており、こちらの制度では純然たる観光活動しか許されておらず、商談やビジネス訪問もできない。


「外国人の住居所有」(2016年1月21・22日)
3年ほど前から、リアウ島嶼州バタム島で高級住宅地の建設が盛んに行われている。バタム島にビジネスのかかわりを持つインドネシア人向けであるのは言うまでもないが、週末にリゾート暮らしを愉しみたいシンガポール人やマレーシア人をも、デベロッパーはターゲットにしている。
中には、海岸どころか海上にモダンな邸宅を並べているところもあるし、映画撮影所の雰囲気を備えて謳い文句にしているところもある。シナルマスランドがノンサ地区に228Haの広さで開発しているノヴァサベイは、穏やかで開放的なリゾートライフの雰囲気と実質的な日常生活を組み合わせた理想郷を居住者に提供するというテーマを追求している。モルディブのようなリゾートの愉しみと、シンガポールまで高速艇でわずか35分という移動の便利さというメリットは、単なるリゾート地の域を超えたものだ。空港へも海港へも10分の距離。日常の生活活動に不便さはなく、帰宅すればリゾートライフが待ち受けている。
ノヴァサベイの住宅エリアは100Haで、70Haがゴルフ場、58Haはマングローブ自然林のまま残されて、豊かな自然がリゾートライフに付加されることになる。ノヴァサベイの戸建て住宅価格は2百億ルピアで、バタム島内での最高価格を更新した。既に30軒以上、予約が入っているそうだ。
一方、ノンサ港に接する200Haの地所をランドスターデベロップメントが開発している。東南アジア最大の映画スタジオである「インフィニットスタジオ」がすぐ隣だ。ハリウッドの町とヨーロッパの都市の雰囲気に包まれる構想が、この住宅地「ザシーン」の身上。地所の半分に戸建て住宅と5階建てコンドミニアムが建設される。コンドのスタジオタイプはユニット価格が13億ルピア。
ノヴァサベイもザシーンも、バタム在住のエクスパットに加えて、シンガポールやマレーシアあるいは他の諸国に住む外国人をターゲットにしている。ただし割り当ては20%。割り当てをつけておかなければ、外国人が全部買い占めてしまうだろう、とデベロッパー経営者は語っている。たとえばシンガポールのプレミアム物件は70平米のアパートメントユニットで90億ルピアする。この相場はここ数年間シンガポールの不動産業界が沈滞しているため、維持されている。バタムで不動産を求めれば、90億ルピアで床面積150平米のアパートが3ユニット手に入る。ファシリティが整い、地の利と交通の便がよく、造りと快適さが十分なレベルに達していれば、外国人が買い占めてしまうに決まっている、と業界者は考えている。
マレーシアでは外国人が35億ルピアで戸建て住宅を買える。しかしシンガポールでは、居住者であろうがなかろうが、だれでも不動産を買うことができる。土地のステータスもきわめてシンプルだ。一方インドネシアの法規では、外国人にとってあまりにも条件が複雑で厳しく感じられるため、外国人消費者に対する売込みがたいへん困難だ、とデベロッパー経営者たちは口をそろえる。
バタム島は土地所有権がまだ与えられていない。バタム島の土地はすべて建築物使用権(HGB)ステータスであり、インドネシア人であっても土地所有権が持てないのは外国人と変わらない。HGBは期限が30年間であり、もちろん延長が繰り返されるわけだが、多くの外国人はその仕組みに保証が欠けている印象を強く感じている。シンガポールでは99年間の使用権利が与えられ、マレーシアでは外国人にすら所有権が与えられているのに比べて、インドネシアは条件が悪いと誰もが言う。
政府はその状況を少しでも改善させようとして、外国人の住居所有に関する政令を2015年12月28日付けで制定した。この「外国人の住居所有」に関する2015年政令第103号はこれまでの法規で曖昧だった定義を明確化させ、また外国人に不利な印象を強く感じさせていたことがらを緩和させて外国人に対する不動産市場の開放に一歩近づく内容になっている。
土地ステータスが土地使用権(hak pakai)になっている家屋しか所有できないことはこれまでと同じだが、使用権の期限年数が建築物使用権(hak guna bangunan)と同じ30年〜20年〜30年に変更されたこと、また外国人でもその遺産相続人になれること、などが明確に規定されたことによって、インドネシアの不動産を購入したい外国人により大きい安心感がもたらされることが期待されている。

「インドネシアにポジションを持つ外国人の居住のための家屋あるいは住居の所有」
に関する2015年政令第103号の全訳は     ⇒⇒⇒ こちら

外国人の住居購入が増加すれば、新しい融資マーケットが金融界の新規ビジネスを促すようになる。外国人がインドネシアで住居を購入する場合、インドネシアの滞在許可がその条件となる。その関連で滞在許可発行対象者のカテゴリーが緩和の方向に向かうことも、副次効果として期待できるかもしれない。
外国人の不動産購入に関しては、外国の一般的な購買力に対してインドネシアの不動産はたいへん廉いという相対的メリットがあるため、大量の資金流入が期待される。しかし社会文化面からは、国民にまだまだ大量の住宅を用意しなければならないという国民福祉政策の遂行に外国人の不動産購入の条件緩和が障害をもたらすとが懸念されている。その点に関する交通整理をはかるために、外国人が購入できる物件の最低金額設定や、外国人に対するアパートメントユニットの割当制度などが行われることになりそう。
不動産業界者は今回出された政令を歓迎してはいるものの、土地ステータスがいつまでも土地使用権に限定されているあり方が現実性を目減りさせている、というのが業界一般の反応だ。デベロッパーはアパートメントを建築物使用権ステータスの土地に建てるのが従来からの常識であり、外国人向け販売のためにわざわざ使用権ステータスの土地に建てることの合理性に確信が持てない。土地ステータスが何であれ、建てたアパートメントのマジョリティ購入者はインドネシア人にしなければならないのだ。そのために外国人に対する割当制度が用意されることになっている。すると今度は、インドネシア人消費者が建築物使用権より条件の劣る使用権ステータスのアパートメントを買うだろうか、という問題に立ち至る。
業界側はその根本問題を整理しなければどこかに不合理の溜り場ができてしまうことを訴えているのだが、外国人の土地所有に関する植民地時代のトラウマが一部国民の間にいまだに強く根を張っており、外国人が関わることのできる土地ステータスは使用権だけという土地基本法の内容を維持しようとするコンセンサスが軟化するには、もっと永い時間が必要とされているのかもしれない。
これまで外国人を伴侶に持つインドネシア人が購入する土地に所有権が与えられなかったのは、土地が共有財産とされた場合に外国人が土地所有に関わることになるからだ。しかしそれは明白な国民差別政策であり、国際結婚をしたインドネシア人からその差別に対して強い批判が出されていたのは当然のことだ。今回の政令でその差別が撤廃されたのはひとつの前進だと言えよう。しかし夫婦の共有財産にはできないという条件をつけて、依然として外国人の土地所有への関与は排除されている。マレーシアですらこの種のアレルギーは既に過去のものになっており、インドネシアも徐々にそのあとを追っていくのだろうが・・・・


「エジプト人犯罪者に刑法適用」(2016年2月2日)
南ジャカルタイミグレーション事務所がエジプト人ひとりを逮捕した。このエジプト人は南ジャカルタ市クニガンのタマンラスナアパートメントに居住し、偽造の家族登録証、KITAS、KTPを所持し、また違法化粧品の販売に携わっていた疑いが持たれている。
かれの居所から、瓶入りのナイトクリーム、デイクリーム、クレンジングクリームなど数十本が発見されたが、その包装箱にはBPOM番号がなく、また成分明細、消費期限、ハラルラベルなどもついていない。
イミグレーション捜査官が入国許可や滞在許可の合法書類の提示を求めたが、かれはそれに応じることができず、おまけに逃走をはかったために手錠で拘束することを余儀なくされた、とイミグレーション捜査部門責任者は語っている。首都警察南ジャカルタ市警犯罪捜査ユニット長代理は、かれは入獄6年の刑で送検されるだろう、と述べている。


「執拗な中国人詐欺団」(2016年2月10日)
豪邸を借りてそこをオフィスにし、何十人もの中国人に虚偽の就労斡旋をしてインドネシアに来させ、そのオフィスで電話による詐欺活動を行わせる詐欺団は過去にもう何度も摘発されているが、首都警察特殊犯罪捜査局が16年2月1日、またまた同じパターンの一味を逮捕したことを発表した。
この一味はスラバヤで豪邸を借り、そこから中国に住んでいるターゲットに電話をかけて金を搾り取る犯行を過去一年以上にわたって続けていた。逮捕されたのは中国国籍者8人、台湾国籍1人、インドネシア国籍3人で、かれらが使っていた多数の電話機・携帯電話機・コンピュータなどが押収され、また50億ルピアが入っているかれらの銀行口座もブロックされた。
この一味はインドネシアのインターネットプロバイダーを使い、中国にはVoIPを通して電話していたが、IPアドレスが中国の警察に判明するのを防ぐためにインドネシア人IT専門家を雇ってデータ操作を行っていた。首都警察はそのIT専門家も1月26日にジャカルタで逮捕している。
かれらの犯罪手口は、中国に住んでいる中国人をターゲットにして電話をかけ、「あなたが賞品に当籤したので賞品を渡したいが、手続費用として130万元を納めてください」とか、「あなたの銀行口座がマネーロンダリングの関連でブロックされます。今ある残高は当面、引き出すことができません。この措置に猶予をもらいたいのなら、わたしに金を払ってください」といった詐欺行為がメイン。
この一味の逮捕は、インターポールを経由した中国警察からの捜査依頼に端を発しており、中国警察は詐欺師が被害者にコンタクトした際に使われたIPアドレスがインドネシアのものであることを突き止めたことから、その捜査依頼が出された、と首都警察特殊犯罪捜査局長は述べている。


「MM2100で不法就労者」(2016年3月24日)
去る16年3月10日、西ジャワ州ブカシ県西チカラン郡MM2100工業団地内で操業しているTV部品製造会社で働いていた中国人9人をブカシ三級イミグレーション事務所が拘留した。
その朝、イミグレーション事務所担当官はMM2100工業団地内の現場検問に出動し、入居企業にやってくる外国人の動向を観察した。そして、すでに廃業して工場内資産の整理を行っているはずのLPディスプレイ社の表に挙動不審な数名の外国人がいるのに注意を引かれた。
担当官が同社の社内検問を行った結果、工場内で作業を行っている中国人が9人発見され、かれらは就労許可を取得しておらず、就労が許されないビザで入国し、すでにひと月間、その工場で仕事をしていたことが明らかになった。ブカシ三級イミグレーション事務所長はこの件について、その9人の中国人は2011年法律第6号「イミグレーション法」第122条A項の規定に違反しており、最長5年の入獄刑に服すことになるだろう、と語っている。
そのうちの5人は到着時ビザで入国しており、そのビザで仕事をすることは禁止されている。イミグレーションはまた、その不法就労に会社側がどのように関与したのかを取り調べており、違反行為が見つかれば、会社側からもこの事件に連座する人間が出る可能性がある。


「違法在留外国人摘発チーム発足」(2016年3月31日)
イミグレーション法規に違反した外国人は、逮捕されるとまず抑留所に収容される。そして国外追放されるケースと、法廷に引き出されて裁判を受け、インドネシアの刑務所に入獄するケースがある。しかしインドネシアの刑務所はもうずっと以前から定員オーバーの状態になっていて、国民犯罪者の受け入れで手一杯だから、イミグレ法規違反外国人に対しては国外追放措置を取る傾向が強まっているようだ。
ともあれ、それらの処分が進まないまま、不法外国人がどんどんイミグレーションに逮捕されて抑留所へ送られると、抑留所内は定員オーバーとなり、不法外国人はあまり優雅でない抑留所暮らしを強いられることになる。西ジャカルタ外国人抑留所でいま、それが起こっている。
西ジャカルタ抑留所は定員80人、無理をして85人というところなのに、2016年3月現在115人が収容されている。2015年は一年間で128人の抑留者が西ジャカルタ抑留所から国外追放された。しかし中には、一年以上抑留所生活を続けている古参者もいる。
定員をはるかに超える人数では、まずベッド数が不足する。新入り抑留者は夜寝る場所すら確保するのが困難で、結局玄関廂の下の床で寝ているありさまだそうだ。
すでにそんな状況になっているというのに、行政側はイミグレ法規に違反してインドネシア国内にいる外国人の摘発逮捕体制を強化しはじめた。なにしろ169か国国民に観光入国ビザフリー恩典を与えたのだから、国は外国人観光客が増加してくれなければ、やりがいがない。2015年の入国観光客数1千万人は2016年に二割増しの1千2百万人という目標値を立てた。入国者が増えれば、違反者も増えるにちがいない、と現場役人はみんな思っている。
こうして、西ジャカルタ市は外国人監視部隊であるチームPoraを結成した。PoraとはPengawasan ORang Asingを略した言葉で、外国人監視を意味している。市庁とイミグレーションがチームの中核をなし、関連する諸政府機関と呼応しながらイミグレ法規違反外国人を洗い出して行こうという目論見だ。違反容疑者はまず拘留してその国の大使館に問い合わせをかけ、その者のバックグラウンドを確認していくとのこと。
西ジャカルタ市にいる在留外国人の多くはアパートメント・コス・宿泊施設などにおり、買物・ビジネス・学習などの活動を行っているが、中にはナルコバや詐欺などの犯罪に関わっている者もいるとのこと。


「外国人の住居所有詳細規定」(2016年4月25・26日)
2016年土地国土計画大臣/国土庁長官規則第13号は「インドネシアにポジションを持つ外国人の居住のための家屋あるいは住居の所有に対する権利の付与・解除・譲渡手続き」に関するもので、16年3月21日付けで定められ、即日施行された。この規則の施行によって、「外国人の居住のための家屋あるいは住居の所有条件」に関する1996年土地国土計画大臣/国土庁長官規則第7号とその改訂規則は廃止された。
この規則は先に出された「インドネシアにポジションを持つ外国人の居住のための家屋あるいは住居の所有」に関する 2015年インドネシア共和国政令第103号の具体的な実施規則となる。
この大臣/長官規則第13号第一条(2)項で;
インドネシアにポジションを持つ外国人は、
a.土地使用権ステータスの国有地、経営権・所有権ステータスの土地に建てられた戸建て住宅、もしくは
b.土地使用権ステータスの国有地もしくは経営権ステータスの土地に建てられたアパートメントユニットを購入することができる、と定められ、
所有権ステータスの土地に建てられた戸建て住宅については、外国人と土地所有権保有者の間で、土地証書作成官(Pejabat Pembuat Akta Tanah)の公正証書を伴って作られる、所有権に使用権をかぶせる契約にもとづいて購入がなされることとなっている。
第二条では、外国人が購入できる戸建て住宅もしくはアパートメントユニットは新築で初回売買されるものでなければならず、また購入はデベロッパーもしくは土地所有者との間で直接なされなければならず、第三者を経由してはならないと定められている。
第四条では、外国人が購入した物件に抵当権が与えられることが定められているが、抵当権には土地所有者の承認が伴われなければならない。
物件が遺産相続される場合、相続人はインドネシアの居住許可を取得しなければならず、相続人が居住許可を喪失した場合や土地使用権の期限が終了した場合、国有地に建てられた物件は政府が競売に付してその売却金が相続人に与えられるものの、それ以外の土地に建てられた物件の場合は土地所有者もしくは土地経営権者の所有に帰すとなっている。
政府はまた、外国人が購入できる居住のための家屋あるいは住居の最低購入金額を定め、2016年土地国土計画大臣/国土庁長官規則第13号の付表として公表した。その内容は次の通り。
外国人が購入できる居住のための家屋あるいは住居の最低購入金額は行政管区別に次のように定められている。
[戸建て住宅]
ジャカルタ首都特別区 100億ルピア以上
バンテン州 50億ルピア以上
西ジャワ州 50億ルピア以上
中部ジャワ州 30億ルピア以上
ヨグヤカルタ特別州 30億ルピア以上
東ジャワ州 50億ルピア以上
バリ州 30億ルピア以上
西ヌサトゥンガラ州 20億ルピア以上
北スマトラ州 20億ルピア以上
東カリマンタン州 20億ルピア以上
南スラウェシ州 20億ルピア以上
その他地域 10億ルピア以上
[アパートメントユニット]
ジャカルタ首都特別区 50億ルピア以上
バンテン州 10億ルピア以上
西ジャワ州 10億ルピア以上
中部ジャワ州 10億ルピア以上
ヨグヤカルタ特別州 10億ルピア以上
東ジャワ州 15億ルピア以上
バリ州 20億ルピア以上
西ヌサトゥンガラ州 10億ルピア以上
北スマトラ州 10億ルピア以上
東カリマンタン州 10億ルピア以上
南スラウェシ州 10億ルピア以上
その他地域 7.5億ルピア以上


「ビザフリー入国に再び規制緩和」(2016年4月27〜29日)
政府は2016年3月2日付けで大統領規則第21号を出し、観光訪問ビザフリー対象国を世界169か国まで増やした。同時に、法務人権省イミグレーション総局はビザフリー入国者イミグレーション審査場所をほぼ全国に拡大させたようだ。イミグレーション総局のホームページによれば、次の外国人入国通過ポイントで観光訪問入国者の入国と出国ができるような記載になっている。
[空港]
Adi Soemarmo, Surakarta
Adi Sucipto, Yogyakarta
Ahmad Yani, Semarang
Bandara International Lombok, Mataram
Belitung, Tanjung Pandan
Binaka, Sibolga
El Tari, Kupang
Frans Kaisiepo, Biak
Halim Perdana Kusuma, DKI Jakarta
Hang Nadim, Batam
Husein Sastranegara, Bandung
I Gusti Ngurah Rai, Bali
Juanda, Surabaya
Kuala Namu, Medan
Maimun Saleh, Sabang
Minangkabau, Padang
Mopah, Merauke
Mozes Kilangi, Tembaga Pura
Pattimura, Ambon
Polonia, medan
Sam ratulangi, manado
Sepinggan, balikpapan
Soekarno Hatta, Banten
Sultan Hassanudin, Makassar
Sultan Iskandar Muda, Banda Aceh
Sultan Mahmud Badarudin II, Palembang
Sultan Syarif Kasim II, Pekanbaru
Supadio, Pontianak
Tarakan, Tarakan
[海港]
Achmad Yani, Ternate
Amamapare, Tembaga Pura
Anggrek, Gorontalo
Bagan Siapi-api, Bagan Siapi-api
Badar Bentan Telani Lagoi, Tanjung Uban
Bandar Seri Udana Lobam, Tanjung Uban
Bandar Seri Setia Raja, Bengkalis
Batam Center, Batam
Batu Ampar, Batam
Belakang Padang, Belakang Padang
Belawan, Belawan
Benete, Sumbawa Besar
Biak, Biak
Boom Baru, Palembang
Celukan Bawang, Singaraja
Citra Tri Tunas, Batam
Ciwandan, Cilegon
Dumai, Dumai
Dwi Kora, Pontianak
Gunung Sitoli, Sibolga
Jambi, Jambi
Jayapura, Jayapura
Kabil, Batam
Kendari, Kendari
Kota Baru, Kota Baru
Kuala Enok, Tembilahan
Kuala Langsa, Aceh
Kuala Tanjung, Tanjung Balai Asahan
Kuala Tungkal, Jambi
Lauren Say, Maumere
Lembar, Mataram
Lhokseumawe, Lhokseumawe
Malahayati, Aceh
Malundung, Tarakan
Manado, Manado
Marina Teluk Senimba, Batam
Marore, Tahuna
Merauke, Merauke
Miangas, Tahuna
Nongsa Terminal Bahari, Batam
Nusantara, Pare-pare
Nusantara, tahuna
Padang Bai, Singaraja
Panarukan, Panarukan
Pangkal Balam, Pangkal Pinang
Panjang, Bandar Lampung
Pantoloan, Palu
Pasuruan, Pasuruan
Pemangkat, Sambas
Probolinggo, Probolinggo
Pulau Baai, Bengkulu
Sabang, Aceh
Samarinda, samarinda
Sampit, Sampit
Samudera, Bitung
Sekupang, batam
Selat lampa, Ranai
Semayang, Balikpapan
Siak Sri Indrapura, Siak
Sibolga, Sibolga
Sintete, Sambas
Soekarno Hatta, Makassar
Sorong, Sorong
Sri Bayintan, Tanjung Pinang
Sri Bintan Pura, Tanjung Pinang
Sungai Guntung, Tembilahan
Tanjung Balai Karimun, Tanjung Balai Karimun
Tanjung Benoa, Denpasar
Tanjung Emas, Semarang
Tanjung Gudang, Pangkal Pinang
Tanjung Harapan, Selat Panjang
Tanjung Intan, Cilacap
Tanjung Kelian, Pangkal Pinang
Tanjung Lontar, Kupang
Tanjung Pandan, Bangka Belitung
Tanjung Perak, Surabaya
Tanjung Priok, DKI Jakarta
Tanjung Uban, Tanjung Uban
Tanjung Wangi, Jember
Tarempa, Tarempa
Teluk Bayur, Padang
Teluk Nibung, Tanjung Balai Asahan
Tembilaha, Tembilahan
Tri Sakti, Banjarmasin
Tual, Tual
Tunon Taka, Nunukan
Yos Sudarso, Ambon
Yos Sudarso, Cirebon
[国境通過ポスト]
Aruk, Sambas
Entikong, entikong
Metamauk, Atambua
Mota’ain, Atambua
Nanga Badaum Sanggau
Napan, Atambua
Skouw, Jayapura
この状態になる前は、「ビザフリー入国イミグレーション審査場所」に関する2015年法務人権大臣規則第31号に定められている;
[入国審査の行われる空港]
Hang Nadim, Batam
Juanda, Surabaya
Kuala Namu, Medan
I Gusti Ngurah Rai, Bali
Soekarno Hatta, Banten
[入国審査の行われる海港]
Badar Bentan Telani Lagoi, Tanjung Uban
Bandar Seri Udana Lobam, Tanjung Uban
Batam Center, Batam
Citra Tri Tunas, Batam
Marina Teluk Senimba, Batam
Nongsa Terminal Bahari, Batam
Sekupang, batam
Sri Bintan Pura, Tanjung Pinang
Tanjung Balai Karimun, Tanjung Balai Karimun
という内容であり、そして出国審査は上の長大なリストの場所すべてで行われるとなっていた。出国審査が行えるのなら入国審査も行えておかしくないという論理の当然の帰結がその答えだろうと思われるが、このように持って回ったようなことをするのは、インドネシア特有の「それなり」の事情というものが存在しているという想像が容易につく。ともあれ、こうして落ち着くべき姿に落ち着いたのだから、原則的にはOKということだろう。
あとはイミグレ担当官のサービス性向上を期待するばかりだ。


「中国人労働者」(2016年6月7・8日)
ライター: 元経済通貨工業統括大臣、ギナンジャル・カルタサスミタ
ソース: 2016年5月12日付けコンパス紙 "Tenaga Kerja Tiongkok"

ガルーダ航空の機内で、わたしは「ジエコノミスト」2016年4月23日号をめくっていた。そしてミャンマーと中国の関係を解説した記事がわたしの興味を惹いた。
その記事は、互いに国境を接し、長い歴史の中で種々の関わり合いを持ち、最近は新たなフェーズに入ったミャンマーと中国がどのような関係にあるのかを分析したものだ。過日の総選挙でアウン・サン・スー・チー率いるNLDが勝利し、ミャンマーの民主化プロセスが開始された。この記事はそれに関連したものだ。
ただし、わたしがもっとも興味を惹かれたのは、将軍たちの軍事政権時代に深まった両国の経済関係がミャンマー経済の中で中国の役割をますます強固にしていることだ。大規模インフラプロジェクトへの投資の洪水は、国民の怒りを引き起こしている。中国の投資が何万人もの中国人労働者を伴ってやってきていることがどれほどミャンマー国民の不安を掻き立てているか、ということがそこに述べられている。そのうちにミャンマーは中国の一省にされるのではないかという国民の不安だ。
中国の経済支援がミャンマーにとっての負債に姿を変えつつあることを、将軍たちも悟り始めている。だから2012年にテイン・セイン大統領はイラワジ川上流のミッソンダム建設大型プロジェクトを突然キャンセルした。銅鉱山や中国雲南省とベンガル湾をつなぐ鉄道といった他の大型プロジェクトもいくつかキャンセルされた。
わたしは数日前、中国人労働者がジャカルタのハリムプルダナクスマ空軍基地内の土地を掘削した事件が国民からの激しいレスポンスを引き起こして大騒ぎになるまで、その記事をそれほど気にしていなかった。
そのふたつのことがらは、わたしの頭の中で自動的に結びつけられた。中国の経済協力は、ミャンマーとインドネシアに対して、どうやら同じパターンで行われているようだ。以前にも、インフラプロジェクトが何万人もの労働者と共にやって来たり、治安が悪いという理由で軍隊までもが同行してくるなど、アフリカの諸国で中国がどれほど大きな存在となっているか、という話を聞かされている。
わたしがこの論説を書いているのは、わたし自身が中国人労働者問題を体験しているからだ。およそ30年前、バンテン州のあるプロジェクトで数百人の中国人労働者がやってきた。かれらのほとんどは建設作業者であり、料理人までもがその中にいた。当時の政府はそれらの労働者を帰国させ、投資者に対してインドネシア人が行える作業にはインドネシア人を使うよう要請した。
最近、中国の投資プロジェクトはインドネシアでますます増加している。そのこと自体が問題なのではない。しかし引退後のわたしには、ミャンマーやアフリカあるいは30年前にインドネシアでも行われようとしたパターンが、レフォルマシ時代の現在、継続されているのかどうかがよくわからない。
最近のニュースは、そのパターンが続けられ、もっと密度の濃い形で行われていることを示しているようだ。空軍治安要員が現行犯逮捕していなければ、その事実を知る者はいなかっただろう。いや、いたとしても、知っていながら無関心でいたにちがいない。
< 懸念 >
ハリム事件では、不安を招くことがらが少なくとも三つ見つかった。
一、中国人労働者が地質サンプルを得るために土地の掘削を行うというたいへんシンプルな仕事を行っていたこと。インドネシア人にその作業ができないはずがない。
高速鉄道プロジェクトでは、インドネシア人が行える程度の作業のために数千人の外国人労働者がやってくる兆候が見られる。投資者がだれで資金がどこから出ていようが、建設プロジェクトにはインドネシア人労働者を使うことが義務付けられるべきだ。もしもインドネシアに専門家がいないか、あるいは不足している場合に限って、投資者はスーパーバイザーを連れてくるだけで十分である。
日本を含む西洋諸国の大規模投資者が低技能労働者を送り込んで来たことはない。費用が高くなるのが当然だからだ。一方中国は、人口過多で労賃レベルが低いため、かれらはプロジェクトに自国労働者を連れてくる。
わが国がいまだに海外出稼ぎ者を送り出している一方で、自国内の就労機会を外国人に奪われるというのは実に皮肉な話だ。2015年の中国人労働者数は?公式に12,800人となっており、外国人就労者総数の23%を占めた。それは韓国人や日本人就労者よりはるかに多く、出身国別就労者数でトップになっている。しかしもっと懸念されるのは、公式手続きを踏まない不法就労者の数がその数倍にのぼっていることだ。上の数字ははるかに大きい氷山の一角でしかないように思われる。
二、保安問題。どこの国であっても、主権と国家保安は最重要事項である。軍事施設内で外国人が何らかの活動を行うようなことは常識で考えれられない。どの国でも、そんなことは不可能なはずだ。中国自身も、そんなことを許可するはずがない。
軍事施設内でそれを行ったことを中国人労働者が知らなかったはずがない。かれらにはインドネシア人のガイドがついていたのであり、ハリムが空軍基地であることを知らないインドネシア人がいるはずがないのだから。
その事件の裏側に異なる動機が潜んでいるのではないかと疑う人間をクセノフォビアとか陰謀論信奉者と見なす必要はない。ましてや中国がいかに南シナ海をわが物にしようとアグレッシブに動いており、アセアンメンバー国が領海としている海域に入り込もうとしているかを見るならば。中国は領土紛争が決着していない島々に艦隊を送って基地を建設している。共産主義強硬路線政治イデオロギーに回帰した習近平国家主席の動きからわれわれは中国の姿勢を読むことができると思う。それは「ジエコノミスト」2016年4月23日号の中でも報じられていることだ。
歴史を見ても、中国はきわめて拡張的でアグレッシブだった。巨大な国家で長い文明史を持つ国にとって、それは当然なことだ。われわれも、われわれの領土を支配下に置き、われわれを臣下にしようとした中国の攻撃を受けたことがある。13世紀にクビライカーンはシンガサリ王国を征服するため、2万人から3万人の軍勢を船に載せて派遣して来た、と歴史の授業で学んだ。しかしその目論見は、のちにマジャパヒッ王国を興したラデン・ウィジャヤによって失敗する。ブンカルノが言う通り、歴史を決して忘れてはならない。
三、責任者はだれなのか?その事件の責任者がだれなのかははっきりしない。高速鉄道プロジェクトのスポンサーになった高官の反応は実に嘆かわしいかぎりだ。われわれが最初に耳にした反応は「誤解があった」であり、「間違いがあった」ではなかったのだ。上のふたつのポイントに関連して「大きなミス」があったと認める言葉は完璧にゼロ。つまり誰にでもできるような仕事のために外国人を招へいし、軍事基地内で届出もなしに作業を行わせたこと。
わたしがこの論説を書いているのは他でもなく、われわれ全員に注意を呼びかけるためだ。特に、この民族を統率する任に就いているひとびとが、もっと感受性を強め、問題を他人事にせず、より強い責任感を持つために。


「インドネシアには留学ビザ制度がない」(2016年6月29日)
インドネシア人の中国留学熱は年々高まっており、留学生の数は1万4千人に達した。ところが、中国からインドネシアへ留学する者はきわめてわずかで、9百人に満たない状況だ。
「インドネシアには留学ビザが存在しない。インドネシアへの留学生数が伸びない原因の一つがそれだ。今留学している者のほとんどは社会訪問ビザを取得している。」在北京インドネシア大使館教育文化アタシェはそう語る。
インドネシア政府はダルマシスワプログラムで毎年25〜30人の中国人留学生枠を提供している。かれらの多くはインドネシアの大学でインドネシア文学を専攻する。一方中国には、インドネシア語教育プログラムを持っている大学が8校あり、インドネシア文化、特にインドネシア語に対する関心の高さを物語っている。
ところがインドネシアには留学ビザあるいは学生ビザが存在しないためにソーシャルビザが使われるケースが多く、6ヵ月ごとにビザの延長手続きを余儀なくされている。留学ビザが設けられたなら、修士課程や博士課程を終えるまで、留学生をインドネシアに滞在させることもできるだろう。中国人の海外留学意欲はとても旺盛で、たとえばオーストラリアには19万5千人が留学している。インドネシアに中国人留学生が増えない理由のもうひとつは、国際プログラムを行っている大学が少ないことだ。在中国教育文化アタシェはそう付け加えている。


「追いつかない不法就労者取締り体制」(2016年7月12日)
外国人の国内不法就労やインドネシア人の国外違法出稼ぎなど、国際的な分野における労働監督に必要とされている要員数は2,580人だが、労働省労働監督育成労働安全衛生総局が確保できている人数は1,918人しかいない。この体制不備のために、2016年Q1に発生した取調べ指示書7千8百件のうちで指示遂行がなされたものはまだ1千件台でしかない。
取調べ案件の中には労働法規違反や社会保障制度悪用、外国人雇用許可(IMTA)違反や無届での外国人雇用などが含まれている。外国人雇用に関する違反で増加傾向にあると労働省が見ているのは、正式許可をまったく無視して無届で外国人をビジネスに使う違反行為であり、サービス業・商業・雑貨製造などの業種がメインになっている由。
国会も政府のこの体制不備を問題視しており、労働省労働監督育成労働安全衛生総局・国家警察・法務人権省・国家諜報庁から代表者が召喚されて、体制作り長期計画に関する方針を早急に煮詰めるよう求められている。


「ビザフリー政策は成功!」(2016年7月21日)
インドネシア政府は2016年3月の大統領規則第21号で、世界中のほとんどの国をカバーする169カ国の国民に観光目的の入国に際してビザを免除するビザフリー恩典を与えた。その169カ国の中には、互恵原則に従って昔からビザフリーを与えていた国もあれば、相手国はインドネシア国民にその種の恩典を与えていないが、他のなんらかの面で友好待遇をはかるような外交上の合意を得ている国もあり、まったくの片想いになっている相手国もある。この記事のソース情報に従えば、相互にビザフリーを与えあっている国は15あり、インドネシアが一方的に恩典を与えている相手は144あるとのこと。
過去8か月間の外国人観光客誘致実績を見ると、互恵原則国民のインドネシア来訪は409.5万人で、非互恵原則国民は288.2万人となっている。中には、ビザフリー待遇をインドネシアが一方的に与えたにも関わらず、ひとりとしてインドネシアへやってこない国が10カ国ある由。
アンティグア・バミューダ・ブルンジ・チェコ・ガボン・ハイチ・マーシャル群島・キリバス・レソト・プエルトリコ・サンタルシアがそれで、外務省はそれらの国の在外公館を通して、インドネシアへの観光訪問呼びかけを行う計画。
ともあれ、159カ国からはインドネシアへ観光に訪れるひとがいるというのだから、ビザフリー制度というのは観光客誘致のたいへんな切り札になると言えるかもしれない。少なくとも、そこに目を付けたジョコウィ現大統領の目端の利きようをほめるべきか、あるいはドキドキハラハラと見守るべきか、そのどちらだろうか?
問題は、下がった敷居に乗じて入国し、犯罪を含む不法就労や治安攪乱・テロ行為を行う、招かざる客の存在だ。昔からこの問題が観光産業盛立てより上位に置かれていたためにジョコウィ大統領のような政策をどの大統領もあえて行わなかったというだけの話なのだが・・・・
人権法務省イミグレーション総局によれば、2016年6月までに入出国管理制度に関わる違反行為が4,715件発生しており、ビザフリー入国条件違反者は117人となっている。


「外国ヨットの来航手続き簡素化」(2016年7月22日)
ジョコ・ウィドド大統領は「外国ヨットのインドネシア来航」に関する2015年?大統領規則第105号を制定して、それまで激しいビューロクラシーにまとわりつかれていた外国船のインドネシアへの観光来航手続きを簡素化した。種々の許認可プロセスを来航の3ヵ月前からはじめ、船体については仮輸入手続きを踏んで保証金を積み、多数の関係官庁からの許認可をそろえてはじめてインドネシアの港に来航できるが、許認可の有効期間は3ヵ月を超えない。
それが今ではがらりと様相を変えた。税関総局バタム島事務所は2016年1月から、来航ヨット管理ソフトを開発して使用を開始した。そのおかげで、船体仮輸入手続きは数分で完了するようになり、インドネシアへの来航希望者は携帯電話機を使ってこのプロセスをクリヤーできるようになっている。このシステムは今のところバタム島税関専用で、他地域税関では使われていないが、他地域の港に入りたい外国船がバタム島税関に申請してきたときは、それを受けて担当地域税関に通知する方法が採られている。
この新方式によって、インドネシア領海の外まで来ているヨットの船上から、インドネシアへの入港許可手続きが行えるようになった。かつてはインドネシア国外にある在外公館で種々の手続きを行い、最後は上陸して船体仮輸入手続きをしなければ不法入国で船を没収されかねなかったことに比べれば、雲泥の違いがある。加えて、世界169カ国の国民に観光入国ビザフリー制度が適用されているのだから、海からのインドネシア入国の敷居も大幅に下がったことになる。かつては、入国手続きだけであんなに煩瑣だったのだから、ヨットでインドネシアに入ろうなどと考える外国人はきわめて限られていた。この手続き簡素化のおかげで、2016年の1〜5月に来航した外国船は前年同期の4倍に達しており、バタム島税関が16年1〜6月に処理した外国ヨットの入国手続きは358隻にのぼっている。
2015年大統領規則第105号では、インドネシアへの観光来航船に対して管理上の便宜を図る港が全国で18カ所指定された。
アチェ州サバンSabang港
北スマトラ州ブラワンBelawan港
西スマトラ州トゥルッバユルTeluk Bayur港
リアウ島嶼州ノンサポイントマリーナNongsa Point Marina
リアウ島嶼州バンダルビンタントゥラニBandar Bintan Telani港
バンカブリトゥン州タンジュンパンダンTanjung Pandan港
ジャカルタ首都特別区スンダクラパSunda Kelapa港
ジャカルタ首都特別区マリーナアンチョルMarina Ancol
バリ州ブノアBenoa港
東ヌサトゥンガラ州テナウTenau港
中部カリマンタン州クマイKumai港
東カリマンタン州ヌヌカンNunukan港
東カリマンタン州タラカンTarakan港
マルク州アンボンAmbon港
マルク州トゥアルTual港
マルク州サウムラキSaumlaki港
西パプア州ソロンSorong港
パプア州ビアッBiak港
ヨットの来航がたいへん楽になったということをインドネシア政府が世界にアピールするために、ヨット愛好者を集める催しが行われている。リアウ島嶼州はジャンビ州・バンカブリトゥン州・西カリマンタン州と共同でセイルカリマタ海峡を開催し、その一環として16年10月20〜30日にフェステイバルバハリケプリがリアウ島嶼州で開催されることになっている。
カリマタ海峡を取り巻く参加4州はそれぞれがこの催しの一環として催事を行うことになっており、ジャンビ州は8月25日、西カリマンタン州は10月15日、バンカブリトゥン州は10月22日にそれぞれのプログラムのピークが予定されている。


「中国人就労者1千万人がインドネシアに」(2016年7月28日)
西ヌサトゥンガラ州ロンボッ島マタラムイミグレーション事務所は2016年の7ヵ月間に外国籍者60人を国外追放した。60人中の39人は中国籍で、そのうちの36人は東ロンボッのサンブリアで建設中の火力発電所工事現場で逮捕された者。例によって、インドネシアの労働許可制度を無視し、観光ビザで入国して働くという中国方式が使われているようだ。他の中国人3人は西ロンボッのスコトン観光地区、中部ロンボッのマンダリカリゾートなどの観光地で逮捕されている。
中国人以外に国外追放された者の国籍は、ドイツ・マレ−シア・イギリス・スイス・ロシアとのこと。
そのような傍若無人の中国方式を腹に据えかねたネティズンの間から、「インドネシア全土で1千万人の中国国籍者が働いている」という書き込みが出現して社会問題含みとなったため、労働省がそれを否定する声明を出した。インドネシアで就労している外国人は7万人しかいない、と労働省労働力配備育成総局長は言う。
「労働省が交付しているIMTKA(外国人勤労者雇用許可書)のデータでは、国内で就労している全ての国籍の外国人は2011年が77,307人、2012年72,427人、2013年68,957人、2014年68,762人、2015年69,027人であり、2016年は6月までで43,816件の交付がある。インドネシア政府は国内の企業に対して、できるかぎりインドネシア人を雇用し、外国人の雇用を避けるように指導し、また雇用条件を厳しくしている。
2003年法律第13号労働法第42条に定められているように、外国人を雇用できるのは株式会社・財団・?協同組合などの法人に限られており、個人は認められていない。外国人雇用計画には会社名・役職名・雇用期間・就労地域名が記載されなければならず、また雇用される本人に対する承認であるIMTKAの申請には、職業能力認定書・最終学歴を証明する修業証書・就業経験5年以上・技術移転を承諾する表明書が添付されなければならず、そしてインドネシア国籍者の代わりに外国人を雇用するということで補償金毎月100米ドルの国庫への納入が義務付けられている。」
例によって、かみ合わない議論がここにも見られるわけだが、非合法就労中国籍者摘発のニュースが頻発していることに鑑みても、合法非合法を合算した全中国人就労者1千万人説を完璧に否定できる根拠はどこにもないようだ。


「ビザフリー制度見直しは来年」(2016年7月29日)
世界169ヵ国の国民に対する観光入国ビザフリー制度は外国人観光客の増加という顕著な成果をあげているものの、その弊害であるオーバーステイや不法就労も目に余る規模で増加しており、観光客数の増加や観光収入増といった数字の大きさを追い求めるために国家主権や国家保安といった国家存立にきわめて重要なものを犠牲にしてはならない、という声が諸方面からあがっている。
法務人権省イミグレーション総局のデータによれば、2016年1〜7月間に摘発されたビザフリー入国者の違反件数は中国人が最大の1,180件、次いでアフガニスタン人411件、バングラデシュ人172件、フィリピン人151件、イラク人127件、続いてマレーシア、ベトナム、ミャンマー、インド、韓国がトップ10に入っている。違反者に対する措置は国外追放がメインを占め、今年の7か月間に2,856人がその処分を受けた。
特に中国人については、中国が獲得したインフラ建設工事は国内のどこであろうと中国人の姿が管理業務から現場作業に至るまでひしめいており、地方議会が抜き打ち査察を行って中国人の数が多すぎることに呆れている姿がTVニュースで報道された。現場作業については、たいていのインドネシア国民ができる仕事であるために就労ビザが下りる可能性はなく、中国人作業者はビザ規定に違反していることが明らかだ。しかし管理業務については、労働省が厳しい規則を定めているにも関わらず、遠い地方自治体まで徹底しきれていない可能性は依然として残されている。
国会第1委員会PDI−P会派議員は、イミグレーション規則とビザフリー制度の違反の多さについて、政府は真剣な関心を払わなければならず、ビザフリー制度は早急に見直しされなければならない、と語る。
「この問題は国家主権を浸食しはじめている。外国人労働者、特に中国人が工場で多数働いているのが発見されており、わが国民の就労機会を奪っている。政府は数を誇るのをやめ、国家主権を護持しなければならない。」
国会第9委員会議員も、「アセアン経済ソサエティがインドネシア国民の公平感を損なうことになってはならないが、中国人はそのモメンタムをとらえ、ビザフリー制度に乗じてインドネシアに入国し、期限を超えて滞在しながらインドネシアで働いている。」と述べている。
国会等からのビザフリー制度見直し要請に対してヤソンナ・ラオリ法務人権相は、この制度を実施して一年経過すれば、見直しが行われる計画になっている、と言う。「もちろん、一定期間を経過すれば、政策は見なおしされる。国によっては、観光入国者数があまりなく、反対にイミグレーション規則違反や国益にそぐわないリスクの方が高いところがある。だから、ビザフリー制度を悪用してインドネシアに滞在し、働いている人間の多い国に関する見直しは当然行われる。もうひとつは、観光入国者があまりいない国で、経済貢献度が期待にそぐわないものも見なおしがなされる。
中国については、中国人観光客が多数訪問することを政府は期待しており、現実に中国人観光客数は顕著に増加している。その一方で、イミグレ法規違反者も増加しているということだ。政府はその軽重を慎重に検討する意向であり、ただ中国人違反者が増えているから中国人へのビザフリーを取り消すというような単純なことではない。」
政府は現在も相応の関心を払っており、総合的な政策見直しは来年はじめになされる予定であることを大臣は説明している。


「外国人監視強化」(2016年8月1日)
西ジャワ州チレボン県二級イミグレーション事務所は、外国人の監視を厳しくする計画。イミグレ法規に違反して滞在する外国人を早急に摘発するために、人権法務省イミグレーション事務所は郡役所の協力を仰いで、より現場に密着した監視体制の構築を進めている。
アセアン域内自由市場のスタート、観光訪問ビザフリー制度実施、首都ジャカルタと陸路で直結するチコポ〜パリマナン自動車専用道の開通、そしてマジャレンカに建設が予定されている西ジャワ州大型国際空港など、ソフト面ハード面の環境が整備向上されることが、これまでにも増して多数の外国人の来訪を促すことは間違いないと見られている。増加する外国人が違反を行ったり、あるいは刑事犯罪を行うのを放置してはならず、そのためには今から効果的な監視体制を構築する必要がある。
チレボン県二級イミグレーション事務所のデータによれば、2015年1月から2016年7月までに取り扱われた違反事件は4件で、バングラデシュ人2人、ネパール人とフィリピン人各ひとりの合計4人が措置を受けている。単なる滞在ステータス違反だけでなく、チレボン市内に住んでサイバークライムを行い、中国居住者にクレジットカード詐欺を行っていた者もある。
2015年データでは、チレボン市に居住する外国人は95人、チレボン県・インドラマユ県・クニ~ガン県・マジャレンカ県居住外国人数は179人となっている。
郡役所は管下の町役場を通して村落部に駐在している村落指導官(babinsa)および社会保安秩序指導官(bhabinkamtibmas)による外国人監視活動を活発化させ、イミグレーション事務所は定期的なコーディネーションを行って問題を早期に吸い上げる体制を作っていく意向。上のバビンサは軍人であり、バビンカムティブマスは警察。
それとは別に、ホテルや宿泊施設は宿泊外国人の届けを励行するよう、イミグレーション事務所からの通達が回されている。また外国人監視チーム(Timpora)には専用アプリケーションが用意され、住民からの不審な外国人に関する届出に便宜がはかられることになっている。


「外国人勤労者監視方針」(2016年8月3・4日)
ライター: 学術公共政策研究センター理事、インドネシア大学・ジュアンダ大学教官、エディ・プリヨノ
ソース: 2016年8月1日付けコンパス紙 "Pengendalian Tenaga Kerja Asing di Indonesia"

中国人労働者1千万人が国内に入って来たという噂が、公共政策論議を再び揺さぶっている。1千万という数字は明らかにオーバーだが、それがインドネシアの外国人勤労者雇用統制問題の緊急性を打ち消すものでもない。
外国人勤労者の存在が常にネガティブなニュアンスを伴っているわけではない。外国人勤労者がインドネシアにやってくるということは、インドネシア国民勤労者の福祉がかれら外国人の本国のそれと比較して、決して劣っていないことを間接的に示しているのだ。そうでないなら、何のためにかれらがわざわざインドネシアまで働きに来るだろうか?
それとは別に、外国人勤労者がやってくるのは、外国直接投資に関わっている面がある。雇用面から見るなら、内国事業投資だけに頼っているよりも国民勤労者への雇用機会を増大させるのだから、外国直接投資は必要なのである。その場合、外国人勤労者は国民勤労者の雇用を補完するものと考えられる。外国資本がインドネシアに会社を興したとき、その会社がインドネシア人だけを雇用するようなことはありえないのだから。
< 政策のオリエンテーション >
だから、外国人勤労者に関する政府の方針は昔からはっきりしている。一面では、政府は外国人勤労者の許認可に便宜をはかっている。しかし他面では、国民勤労者の雇用に悪影響を及ぼさないよう、外国人勤労者の総数に統制をかけている。
どの事業セクターが外国人勤労者を雇用でき、またどのような職務に就くことが認められるか、という制限を核にすえた一連の労働大臣規則が存在している。例を示すなら、農業セクターでは畜産業だけが外国人勤労者に開かれている。製造業セクターで雇用が開かれているのは、飲料・非機械金属・タバコ・砂糖・?衣料品・家具・繊維・履物・食品の9分野だけ。サービス業では宿泊・飲食・廃棄物処理の3分野だけだ。
更に、外国人が就ける職務にも制限がある。さまざまな大臣規則で外国人が就ける職務レベルが定められている。要約すれば、外国人勤労者は中級から上のレベルの管理業務に就くしか許されていない、と言うことができるだろう。たとえば、スーパーバイザー/アドバイザー、スペシャリスト、マネージャー、取締役、監査役がそれだ。現場作業者やオペレータのような仕事が外国人勤労者に開かれていないことは明らかだ。
それ以外に、外国人勤労者に閉鎖されている役職が大臣決定書で個別に指定されている。閉鎖されている役職は19あり、採用・人事・労組折衝・労働安全に関連する職務がそこに記されている。このネガティブリストは、先にあげた外国人勤労者に許されている種々の職務の例外と見ることができる。
他の重要な方針?としては、外国人勤労者を雇用する者に与えられた、外国人から国民勤労者への知識と技術の移転義務だ。それとは別に、使われる外国人勤労者ひとりにつき100米ドルを雇用者は政府に代償金として納めなければならない。書類上、政府は国民勤労者のクオリティ向上のためにその代償金を使うことができる。
より詳細な注意を払うなら、外国人勤労者がインドネシアにやってくることを容易にするような方針変更を見出すこともできる。その変更の中には、外国人勤労者をひとり雇用するごとに国民勤労者を10人以上雇用する義務や、外国人勤労者への給与をルピアで支払わなければならない義務の廃止がある。既に触れたように、それらの変更はインドネシアへの外国投資誘致を目的にしているように思われる。
< データと監視 >
それらのさまざまな方針をもとに、インドネシアにいる外国人勤労者数は68,742人であることを労働トランスミグラシ省2014年データが示している。噂されている1千万人にはとても及ばない数字だ。
外国人勤労者の出身国を見ると、中国が最大の24.5%、日本16.2%、韓国9.2%、インド7,5%、マレーシア6%といった順位になっている。それに続いてたくさんの国があるが、それぞれ外国人勤労者数総数の5%に満たない。
政府公式データの総数が小さいことに疑問が湧かないわけではない。もちろん、外国人就労者総数に関する統合的な研究がなされたことはない。しかし現場の実態を顧みるなら、外国人就労者数は公式データの数よりはるかに多いことが暗示されている。
労働トランスミグラシ省2014年データは同省が許可を与えた件数だけが数えられている懸念が強い。無許可就労を含めて、雇用現場で働いている外国人を効果的に監視するメカニズムがいまだに存在していない事実が、その推測に確信をもたらしている。
そのため、「外国人労働者1千万人」の噂に関する数字の議論はひとまず置いておこう。より必要なのは、政府の方針が適切なルートに乗っているのかどうかについての検討なのである。
外国人勤労者の許可手続きをどのように行うかについての政府規則はたくさん作られているが、許可手続きを行わない者のデータをどのように集め、またかれらの監視をどう行うかについての規則はほとんどない。労働大臣は折々抜き打ち視察を行っているが、システマチックな方針設定でフォローされなければ、そのような散発的なやり方は効果的でない。
地方自治制度が労働省と地方政府労働局の直接的関係を断絶させたために監視体制が弱体化したという理由で地方自治制度を悪者にする声が多いのだが、監視体制は地方自治制度が始まる前から弱かったのだから、その非難はナンセンスだ。この問題が強まったのは、国際間の労働力移動がますます高まる傾向を示しているからだ。
インドネシアの外国人雇用統制を政府が本気で望むのなら、この監視の問題は改善されなければならない。能動的受動的メカニズムを稼働させる方式の監視システムを構築する必要がある。監視は外国人勤労者に対してだけでなく、雇用者および外国人勤労者の双方が外国人雇用条件を満たしていることも対象にしなければならない。
能動的監視メカニズムにおいては、中央政府は地方政府と共同で雇用現場をランダム検問するべきだ。現場で摘発された違反者(外国人勤労者と雇用者)には厳罰が科されなければならない。
それに加えて、住民から届けられる訴えをベースにした受動的監視メカニズムをも設けなければならない。外国人勤労者雇用に規則違反の疑いを見出した諸方面から政府への連絡ルートは必要不可欠なのである。特に国民の間でもっとも普及している携帯電話を軸にした情報技術に支えられたものであるのは言うまでもない。インターネットオンラインシステムをベースにするものは推薦できない。なぜなら、?住民からのアクセスはあまり顕著でないからだ。


「再び中国人不法就労者」(2016年8月8日)
バンテン州警察特殊犯罪捜査局が16年8月1日バンテン州セランにあるセメント会社を強制捜査し、同社が雇用している5百人の中国人のうち70人を就労違反の容疑で取調べるため連行した。この強制捜査は住民からの訴えによる。
中国人勤労者は全員がインドネシア語をまったく理解できず、通訳を介して得た供述から、70人中37人は就労関連並びに居留関連の許認可書類を何一つ持っていないことが明らかになった。ほかの者はKITASを所有していたので身柄は工場に戻されたが、KITASに記載されている役職が本当に同社の業務メカニズム内に存在しており、且つその役職にふさわしい業務を本人が行っていたかどうかについて、警察は更に調査を続けている。たとえば、KITASにはエンジニアリングマネージャーと記載されているにもかかわらず、捜査が行われたときその者は工場作業現場で肉体労働を行っていた。
インドネシア人でもできる肉体労働の就労許可は外国人に絶対下りないことになっているため、警察が連行した70人は作業現場にいて肉体労働に従事していたことが最優先の根拠になっている。
この会社は従業員総数の7割が中国人で占められ、インドネシア人は地域周辺に住む者が3割しか雇用されておらず、工場内の現場作業つまり肉体労働を大勢の中国人がインドネシア人と一緒に行っていた。しかも、同じ肉体労働をしているインドネシア人の月給は2百万ルピアしかないのに対して、中国人は月給1千5百万ルピアを支給されていたらしい。
外国人雇用手続きは、まず外国人雇用計画の許可を得た上で雇用する外国人の承認を受けるといったプロセスを経なければならず、その手続き主体者は雇用主たる会社になる。つまり会社はそれらの手続き書類から許可書までを社内管理部門で保管していなければならず、会社がそういう書類を提示できないのであれば、その手続きが行われていないと判断されて当然ということになる。
2003年法律13号「労働法」第185条によれば、無許可で外国人を雇用した会社に対する罰則が、最大入獄4年罰金4億ルピアと定められており、警察はこの会社責任者にその罰則を適用して送検する考えでいる。
許認可書類を一切持っていなかった37人は本国に強制送還される見込みで、身柄は法務人権省バンテン地方事務所に引き渡される予定。かれらはこの会社で3ヵ月から1年働いていた。


「中国人不法就労者がまた」(2016年8月9日)
西スマトラ州パダン一級イミグレーション事務所は、観光ビザで入国しながら黄金採掘鉱山でブローカー仕事をしていた中国人3人を、2016年8月5日にジャカルタ経由で国外追放処分した。3人の中国人は33歳・36歳・45歳の男性。
西スマトラ州南ソロッ県コトパリガダンディアテ郡にはピンティカユ金山があり、公的には採鉱権が鉱業会社に与えられているものの、民衆がその中に入り込んで勝手に金鉱を探して掘り、かれらが集めた黄金をブローカーが買い上げて独自の販売ルートに流すということが半ば公然と行われている。鉱業会社は地元民や余所からやってきた不法採鉱者と事を構えるのを嫌がり、民衆が掘り返している地区はアンタッチャブル扱いするケーズが大半だ。インドネシアにはたくさんの金山があるが、ほとんどどこでも似たような状態になっている。
最近では、ブル島の不法採鉱金山に万を数える男たちが国中から集まり、掘り出した金鉱石から黄金を分離するために使われる水銀の量が膨れ上がって、山の周辺から海にまで激しい水銀汚染が一帯を襲ったため、政府が山を強制閉鎖して採鉱者を追い払うという事件が起こっている。
2009年にはアチェ州のウジュン金山で行われている不法採鉱の現場で、インドネシア人採鉱者に混じって中国人が金鉱石を掘り集めている姿が見られ、不法採鉱者からの訴えでアチェジャヤ県警が9人の中国人を逮捕した。中国人はイミグレーションに引き渡されて、国外追放処分を与えられている。
今回、西スマトラ州で逮捕された3人も同様で、警察は民衆からの訴えを元に3人をマークし、数日間密かに監視を続けてから不法採鉱場に踏み込んで逮捕した。3人のひとりは16年5月から、ほかのふたりは16年7月からそこに滞在していた。かれらは鉱脈を見つける、いわゆる山師であり、インドネシア人採鉱者に指示して掘らせ、またインドネシア人採鉱者に資金融通を行って採鉱の成果を集めていたらしい。


「不法就労者はアチェへ行け」(2016年10月5日)
アチェ州で外国人の不法就労が盛んに行われているが、州庁労働監督機関にはほとんど打つ手がない。州庁によれば、それは外国人を雇用している事業者が不法就労外国人を全力をあげてかばうためだそうだ。
インドネシアの外国人就労手続きを見る限り、外国人を雇用する法人が前もって行う許認可手続きが必須になっており、外国人の就労はその上で許可されることになる。つまり外国人が個人で就労許可を得ようとしても、絶対に交付されないのである。だからインドネシアで就労できる許可を持つ外国人をインドネシアの法人が雇用するという図式は存在しえず、国内にいる外国人が雇用されて就労するケースはすべからくイミグレーション法規違反ということになる。
そのようなイミグレ法規違反者が国内法人に雇用されることはアチェと言わず国内のあらゆる場所で現実に起こってはいるものの、違反者に官憲の手が回れば雇用者はあっさりとその外国人と関係を断つのが普通で、事業主はそうやって自己保身をはかろうとする。ところがアチェの事業者は官憲に対し、そんなことをされては事業が立ち行かなくなり、雇っている州民○○人が路頭に迷うことになる、という掛け合いを持ち込んでいくらしい。
アチェ州には登録企業が8千社あるが、外国人雇用手続きを法規通りに行っているのは数十社しかなく、2016年8月時点で友好なIMTAは164件しか交付されていない。
一方、どのくらいの不法就労外国人が州内にいるのか、その実態は神のみぞ知るだが、文化の影響でモダン経済活動が実践できる人材は地元に払底しているらしく、自分の国ではありきたりのレベルでしかない外国人でもそんな環境に入れば優秀この上ない人材という評価が与えられるようだ。その面から見るなら、中東社会に類似しているアチェ文化はインドネシアの中でもユニークな存在であり、経済競争力を持つ人材の厚みは他州とは比較のしようがないありさまになっている印象を受ける。
闇就労を辞さない外国人にとって、アチェは思いがけない穴場かもしれないが、日々の生活を愉しめる環境であるかどうかは保証の限りではない。


「中国人の違法観光ビジネス」(2016年10月6日)
バリ島でローカルツアーや航空券販売などをインターネットで行っている外国人がおり、正規の旅行代理店事業許可を得ていないのが確実と見られるために、政府はただちに取締を行って欲しい、とインドネシア旅行代理店協会会員が要請した。
「今現在、協会会員の多くはその悪影響をまだあまり感じていないかもしれないが、このような事態を放置すれば、将来必ず困った状況に立ち至るのは目に見えており、政府当局はそれらの違法行為を温存しないよう、ただちに手を打ってほしい。その種のビジネスは地元代理店業界にとっての手本となりうるものでもあり、正規の資格を持っている業界者がその分野にもっと参入して事業の枠を広げていくのも重要なことである。」
その事業分野が国内の業界者でかためられていけば、もぐりの異分子である不法業者の発見も容易になろうというものだ。
同会員が指摘した不法外国人とは中国人で、観光ビザで入国し、インドネシア国内での航空券販売からバリ島や周辺地域をカバーするローカルパッケージツアーをアレンジしたあと、また中国に戻ってそれらの販売活動をインターネットで行い、低料金で販売している。外国人観光客の中には最初からそういう廉価版ローカルツアーを買ってバリ島へ来て、バリ島の現地観光産業に何らの恩恵をも与えないまま帰国していく者が混じっている。160万の外国人観光客のうちで10%前後がその不法ビジネスに掠め取られており、バリ島とロンボッ島がメインの被害者になっている。
そのようなビジネス活動は労働法・イミグレーション法・商業法に抵触するものであり、国民のビジネス活動を横取りするものであるため、厳格な措置が執られなければならない。協会はそれについて、既に観光省への届出を行い、またデンパサルの中国領事館にも要望書が提出されている、と語っている。
観光省観光目的地開発担当デピュティはそれに関して、観光省は事業許認可交付機関でないが、この問題は今後さらに掘り下げていく所存である、と述べている。


「不法在留外国人取締」(2016年10月19日)
法務人権省北スラウェシ地方事務所外国人監視チームが北スラウェシ州ビトゥン市でひと月間に26人の不法在留外国人を逮捕した。この26人はビトゥン市イミグレーション事務所に拘留されて取調べを受けている。かれらはインドネシア国籍でなくフィリピン国籍であると見られており、インドネシアの在留許可関連書類を持っておらず、またパスポートも持っていない。ところがかれらの一部はビトゥン市のKTP(住民証明書)を持っていることから、その入手経路についても取調べが広げられている。
先に駐フィリピンインドネシア大使が北スラウェシ州知事に面会して伝えたところによれば、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領が国内麻薬犯罪撲滅のために激しい措置を執っているため、その措置の対象者がフィリピンから北スラウェシ州に逃亡して来ることが懸念されており、北スラウェシ州は特に警戒を強めるよう要請されている。
それとは別に、昔からフィリピン漁民が行ってきたインドネシア領海内での密漁/盗漁の関連で、フィリピン人漁船乗組員がインドネシア国籍者になりすまして北スラウェシ州に上陸することも一般的に行われており、拘留されたフィリピン国籍者と見られている26人に対する取調べはそれらのふたつの容疑を中心にして進められている。前者の関連であるなら、逃亡と共にインドネシアへナルコバを持ち込んでいる可能性が高い。
ところが、26人の大半は自らをサギヘ(Sangihe)諸島の地元漁民であると主張しており、インドネシア政府にとっては泣き所を衝かれて問題の白黒がつけにくい状況に追い込まれていることも事実だ。
ミンダナオ島に近いサギヘ諸島住民は古い時代からミンダナオ島との深い交流の中にあったことから、マナドやビトゥンよりもミンダナオへの依存度が大きく、人間の移動にもそちらの方が太い流れを形成して来た。現代国民管理行政が開始されたとき、自国内に住み着いている隣国領土の原住民を自国民にするかしないかは、その時代の国際情勢と為政者の考え方次第だろう。最終的にミンダナオに先祖代々居住してきたサギヘ島民およそ1千人は、フィリピン国籍を与えられることなく居留許可だけを得てきた。その一方で、かれらの中にインドネシア国籍を得ようとする意欲も小さかったことから、sapiと呼ばれる無国籍者が生まれることになった。sapiとはSAngihe-PHIlippinesのアクロニムで、SAPHIがインドネシアではサピと発音され、その発音に従ってSAPIと綴られている。
26人が本当にサピであるなら密漁/盗漁に関わっている可能性が大きく、そうでないならサピを隠れみのにした麻薬犯罪関係者なのかもしれない。そのあたりの真実は追々明らかになっていくにちがいない。
ジャカルタでも、北ジャカルタ市スンテル地区にあるアパルトメンスンテルパークビュー住民に対するイミグレーション取締が16年10月12日に実施され、ナイジェリア人とモザンビーク人合計13人が逮捕された。そのうちの8人は在留許可を持っておらず、不法居留者と判定された。残る5人は入国許可の期限内にあるため、イミグレーション法規関連の違反者ではないが、インドネシア国民に対する迷惑行為があったことから、その点に関する取調べが行われている。
このイミグレーション取締はインドネシア国民であるアパートメント住民数人からの訴えに応じて行われたもので、訴え内容はアパートメント住民がリフト内や通路で外国人から迷惑な行為を蒙ったというもの。
北ジャカルタ一級イミグレーション事務所はイミグレ法規違反の8人を本国に強制送還する意向。


「不法就労外国人の後ろに雇用者の影」(2016年10月20日)
労働省に今年訴えがなされた外国人雇用法規違反は41件あり、ジャワ・スラウェシ・カリマンタンにある商業サービス・鉱業・電力セクターの41社が訴えられている。訴えの内容については、外国人雇用手続きを完遂してIMTA(外国人雇用許可)の交付を得ているにもかかわらず、外国人の就労内容がIMTAに記載されているものと異なっているケース、IMTAを悪用しているケース、IMTAの期限が切れているのに放置されているケース、外国人雇用手続きをまったく無視して外国人を就労させているケース、法規で定められているインドネシア人業務移管者を指定していないケースなどさまざま。
外国人勤労者雇用手続きに関する2015年労働大臣規則第35号では、外国人は取締役・監査役・アドバイザー・マネージメントの職にしか就くことができないと定められている。雇用年数は二年間だが、延長することは可能。さらに外国人を雇用するインドネシア法人は、その外国人から知識や技能を移転させるために移転を受けるインドネシア人従業員を指定し、マンツーマンでの学習や訓練を受けさせる義務を負わされている。
またその規則ではIMTAを交付できる業務内容が規定され、半年間あるいは暫定期間という期間条件も付随している。
年間のIMTA交付件数はここ数年7万件弱のレベルが続いている。詳細は下の通り。
セクター別  2016 2015 2014 2013
商業サービス  31,064 40,491 36,702 36,913
工業     11,577 26,317 24,041 24,029
農業     1,175 2,217 8,019 8,015

国別     2016 2015 2014 2013
中国    14,547 17,515 16,328 14,371
   日本      6,655 12,653 10,838 11,081
韓国      5,894 7,590 8,172 9,075
インド     2,857 5,900 4,981 6,047
マレーシア   2,393 4,305 4,022 4,962
米国      1,469 3,731 2,658 2,197
タイ     923 3,557 1,002 1,841
オーストラリア 1,471 3,069 2,664 3,376
フィリピン 2,159 3,126 2,670 2,601
イギリス 1,238 2,531 2,227 2,631
シンガポール 968 1,245 1,835 1,814
その他 3,242 3,803 11,365 8,961

合計      43,816 69,025 68,762 68,957
(2016年は1〜6月)


「最近のイミグレ関連事件」(2016年11月25日)
スカルノハッタ空港イミグレーションは2016年11月17日にクアラルンプルからガルーダ航空で到着した23歳のカザフスタン人女性とドハからカタル航空で到着した24歳のモロッコ人女性の入国審査で不審を抱き、パスポートに記載されている各国でのビザと入出国記録を詳細にチェックし、インドネシアへ来るまでの旅程を調べ、別室でのインタビューを行った結果、そのふたりは国内にある国際売春シンジケートで働く目的を裏に隠していると判断したため、入国を拒否して国外退去を命じた。10月から11月半ばまでのひと月半に、22人の外国人女性が同様の措置を受けている。
北スマトラ州警察特殊犯罪捜査局が11月14日にランカッ県パンカランススで建設工事中の火力発電所工事現場で働いていた中国人15人を無許可就労容疑で逮捕し、北スマトラ州メダン第一級特別イミグレーション事務所に身柄を引き渡した。警察は最初20人を逮捕したが、5人はかれらを働かせている会社が就労許可を示したために釈放された。残る15人は就労許可の手続き中であるとの釈明を得ているものの、就労許可そのものがない状態で働いているため、当局は違反行為であるとしてかれらを逮捕した。
かれらを働かせていたのはPTシノハイドロエレクター、PTヘイベイジアンカンインドネシア、PTインドプサッブミの三社で、会社側はその15人についてのRPTKA(外国人雇用計画)を既に認可されており、KITAS(暫定居住許可証)とIMTA(外国人雇用許可)の手続きを行っている最中だと釈明している。しかしイミグレーション側はまだ会社側が言うRPTKAを検分していない。建設工事を請け負っているその三社は、工期を予定通りに完了させなければならないために、就労許可がない状態でかれらを働かせざるをえない状況なのであり、必要な手続きは実施中なのであって、決して許認可を無視しているわけではないと自己弁護を行っている。
身柄を拘留された中国人15人は20代の年齢で、2〜3ヵ月前から現場で働いている。この事件が刑法犯罪であると判定された場合、就労者と会社は5年以下の入獄および最高5億ルピアの罰金が科されることになる。
メダン第一級特別イミグレーション事務所は今年すでに中国人7人、インド人2人、パキスタン人2人、マレーシア人2人を国外追放しており、またマレーシア人と台湾人が偽造書類を使ってインドネシアのパスポートを申請した事件を摘発している。
ジャカルタでは首都警察西ジャカルタ市警と西ジャカルタ一級イミグレーション事務所が11月17日にクンバガンにあるアパルトメン・プリパークビューの住人に対する検問取締りを行い、在留許可違反と麻薬所持の容疑で外国人12人を逮捕した。
この検問取締作戦は、150人の要員を動員して三時間にわたって実施された。西ジャカルタ市民登録住民管理局、郡長、町長もこの作戦に参加している。この作戦はしばらく前にこのアパート近辺で国家麻薬庁捜査員に射殺されたアフリカ人の関係者を発見することがひとつの目的となっている。
この作戦の結果、アフリカ人11人とマレーシア人ひとりが逮捕された。麻薬関連ではふたりが尿検査でポジティブ判定されており、また居住ユニットからも麻薬が見つかっている。
イミグレーション関連では、在留許認可関連の書類をまったく所持していない者や、オーバーステイになっている者がおり、いつインドネシアへ入国したのかすら覚えていない者がほとんどだった。
アパートメント管理者によれば、アパートメント居住者は2千5百人いて、そのうち外国人は240人とのこと。外国人犯罪者が捜査員に射殺される事件が起こったため、管理者は外国人の入居に対して条件を厳しくするようになった。賃貸入居者はパスポートとビザデータを管理者に提示するだけでなく、身柄に責任を負うエージェントの届出もしなければならない。またインドネシア人名義でユニットを借り、外国人がそこに住むことは認められなくなった。そのような厳格化を行った結果、アフリカ人入居者は35人から12人に減ったそうだ。しかしそのうちの11人は今回逮捕されているのである。


「中国人不法就労で政府を攻撃?」(2016年12月27日)
4ヵ月ほど前から西ジャワ州ボゴール県スカマッムール郡スカダマイ村に住み着いた中国人4人が4Haの広大な土地にトウガラシ畑を作って栽培していたのに不審を抱いた村民が2016年11月初旬に警察に訴え、53歳・52歳・51歳・37歳の中国籍男性4人がイミグレーションと警察の合同部隊に逮捕された。
合同部隊がその畑を訪れた日は雨で、4人のひとりが畑に消毒薬を散布しており、3人は家の中にいた。4人のうちふたりはパスポートも在留許認可関連書類もまったく所持しておらず、他のふたりはパスポートを持っていたが、ひとりは観光ビザでの入国、もうひとりはタングランのイミグレーションが発行した期限切れのKITASを持っていた。そのKITASは金属セクター工場の電気専門技師の資格になっており、農園セクターとは関連性がない。しかし4人は何も違反を犯していないと頑強に言い張ったため、合同部隊は先に証拠固めをしてから11月10日に四人を外国人抑留施設に入れた。
かれらはトウガラシ畑の作業に親方を雇い、親方を通じておよそ30人の村民を日当6万ルピアで働かせていた。更にトウガラシの種をかれらが中国から持ち込んでいたことが判明したため、植物検疫センターが栽培されているトウガラシを検査したところ、黒あし病の病原菌に汚染されていることがわかり、放置すれば国内生産食用植物に大規模な被害がもたらされる恐れが強いことから、かれらが作っていたトウガラシ畑にあるおよそ5千本の木をすべて廃却処分することにしている。
ところが今度は、再び四人の不法滞在中国人が北スマトラ州ランカッ県ブシタン郡で輸出用に檳榔樹加工事業を行うための準備を進めていたのが摘発された。4人のうちふたりは観光入国ビザフリー制度を使って入国し、もうふたりはKITASを所持していたが実際の活動と合致しておらず、また事業許認可も取得していない。4人は12月のクリスマス前に外国人抑留施設に収容された。
ついしばらく前は数十人の不法滞在中国人が豪邸を借りてインターネット詐欺を行う事件が全国各地で摘発されていたが、最近は農園事業へと多角化が進められているようだ。
こういった不法滞在(不法就労)中国人の摘発が多発するにつれて、現政権打倒を狙う勢力が政府批判の虚偽情報をソーシャルメディアに流し、ヒーロー願望をオブセッションに持つ若者がそれに呼応しようとする。
ジョコ・ウィドド政府がジャカルタ〜バンドン高速鉄道工事に中国を起用し、全国各地の発電所やインフラ工事に中国資本を使うなど、中国寄りの政策を増やすようになったことをその勢力が利用しているのは明らかだ。政府が1千万人の中国人観光客誘致目標を表明すると、それがいつの間にか1千万人の中国人労働者誘致にすり替えられ、12月19日に新ルピア貨幣発行が公表されると、新紙幣のデザインは人民元にそっくりだと言い出す書き込みがソーシャルメディアに流れる。中国人に向けられた人種嫌悪は果たしていまだに有効性を保っているのだろうか?