「ラ ガリゴ(3)」(2025年06月06日)

サウリガディンがトンポティッカ(陽出る国)を訪れて祖母の墓参を行ったとき、王国最
大の秘密をかれは知った。王宮の禁裏に絶世の美女が住んでいることを。そのうら若い美
女は質素な衣服を身にまとい、花咲く庭園で水浴びし、花樹に集まる鳥たちと会話して日
々を送っている。この世に預けられた天上の世界の生き物だ。

サウリガディンは王宮に戻ると、あらゆる手段を尽くして禁裏に入ろうとし、終にはそれ
に成功した。その娘を目にしたサウリガディンの魂はその瞬間にかれの体内から飛び去っ
た。重い恋に落ちてしまったのだ。ウィ テンリアベンという名のこの娘は、ブギス人の
宇宙界に存在する最大の知性を持つ者、そしてああ、なんということだろうか、サウリガ
ディンの双子の妹だったのである。


この皇太子には既に妻が何人もいた。闘鶏を好む無類の賭博好きである皇太子は美女を我
が物にする大きい欲望を抱え、そのためには地獄に入り込むことさえ怖じない性格をして
いた。かつてかれはひとりの姫に恋したが、その姫は世を去った。かれは軍船隊を一隻残
らず召集して海を渡り、恋人を冥界の王から奪い返すために死者の世界に攻め入った。サ
ウリガディンの軍勢は死の世界を侵略して大混乱に陥れたのである。

自分の肉親と夫婦になることは禁じられている。諫められたサウリガディンはその恋を諦
めようと考え、軍船隊を引き連れてルウを去った。そして何をしたかと言うと、ウィ テ
ンリアベンを忘れるためにかれは海上を荒らしまわることに専心したのである。しばらく
してから、国王夫妻からサウリガディンに連絡が届いたので、軍船隊は故国に舳先を向け
て波を蹴立てた。

王宮に戻ったサウリガディンは再び両親に、ウィ テンリアベンを妻にしたいと願い出た
のだ。国王夫妻は無理を言う息子を叱る気力を失って、「インセストはタブーだ」と語る
のみだった。


ある日、国王夫妻の招きに応じてしわくちゃの老婆がひとり、王宮に現れた。人類が発祥
したころから生き続けているような老婆だ。国王夫妻に頼まれて、老婆はインセストが何
を引き起こすかという解説をサウリガディンに聞かせた。おまえの子孫に、そして人類の
未来に破滅が訪れるのだ。サウリガディンは老婆の頭を胴から切り離した。

サウリガディンの狂気はとめどもなく進展した。これでは王国が立ち行かなくなる。つい
に、神々にまさる知性を持つウィ テンリアベンが悪魔のようになった兄のもとにやって
きた。かの女もインセストの弊害を説き、そして自分よりもっと美しいチナの姫を妻にし
ろと勧める。だがサウリガディンはそんな話に耳を貸さず、妻になってくれ、この思いを
遂げさせてくれ、と妹に迫るばかりだ。そこまで自分のことを・・・と妹も心を動かされ
る。しかしタブーを冒せばふたりの破滅。

ウィ テンリアベンは自分の手の指の爪にチナの姫ウィ チダイッの面影を映し出して兄に
見せた。兄はそれに見惚れた。続いて兄に横になるように言い、兄に夢を吹きかけた。サ
ウリガディンとウィ チダイッのセックスシーンだ。兄は恍惚の中に浸った。

妹は兄に言う。もしもウィ チダイッがわたしより美しくなかったら、ルウに戻っておい
で。わたしたちは夫婦になり、天を崩壊させて神々が作った決まりを破るのよ。月を埋め、
タブーを踏みにじり、兄と妹が夫婦として玉座に並ぶ。[ 続く ]