「ランファンコンス(終)」(2025年12月09日) ポンティアナッやシンカワンの町に入ると、街中のいたるところに中国寺院の建物を見出 すことができる。地元民の異人種間社会交際も円滑に行われていて、マンダリンの会話が しばしば耳に入り、プリブミと華人系がマンダリンで流ちょうに会話している姿を目にす ることも稀でない。 イドゥルフィトリ・クリスマス・陰暦正月の日はすべてが同じような賑わいを示す。特定 種族のマジョリティが抱く宗教の祝祭日であるにも関わらず、その宗教信徒でないひとび とが隣人・友人・知人にとっての祝祭日の祝詞を伝えるために訪問し合うのだ。ポンティ アナッやシンカワンの住民には一年の祭りの日が他地方よりもたくさんあるということに なりそうだ。 シンカワンという地名を客家人は山口洋と解いた。客家語でそれはSan-Khew-Jongと発音 される。ロバン山のふもとにあって河が海に注いでいる土地という意味をその言葉が示し ている。地元ダヤッサラコ族の言葉でそこの地名はSakawokngと言い、海岸の広い湿地帯 を意味していた。そこは元々サンバススルタン国の領内にあって、モントラドゥッの黄金 を船で積み出す港として、またモントラドゥッに向かう金鉱労働者が上陸してから休養を 取る行楽地として使われる土地になった。 元々はダヤッ人の部落があっただけの未開の土地に交通路ができて、華人やムラユ人の中 にそこで生計を得る者が住むようになったのだろう。現在のシンカワン在住華人系の中で は客家人が最大だが、他にも潮州・福建・海南・その他の中華種族が含まれている。住民 人口の6割超が中華系なのだから、華人コロニーという雰囲気が強く感じられる町であり、 インドネシアのたいていの町にはチャイナタウンがあるのが普通だが、シンカワンだけは インドネシア国のチャイナタウンという異名を与えられている。この町の建物は中華様式 の古い建築物が多く、シンガポールのチャイナタウンを彷彿とさせてくれる。 ロバン山から南に5キロ弱離れたラヤパシ自然保護公園にはラフレシアが咲くそうで、開 花すると評判になる。町の中心部から17キロ離れたパシルパンジャンビーチには宿泊施 設もあって、海遊びも楽しめる。そして極めつけのグルメ観光。シンカワンは中華料理の 宝庫なのである。 レストランから食堂ワルンまで、中華料理がメインを占めている。そしてこの町で有名な のがルジャッジュヒ。干しイカと野菜やジャガイモなどを混ぜて、甘辛いソースまたはピ ーナツソースで食べるものだ。クンバンタフも有名だ。コーヒーで一服したければコピテ ィアムがあちこちにある。コピティアムは珈琲店(中国語でコーヒーは王扁が口扁に替わ る)の福建語発音であり、客家語ではカピティアンになるようだ。苦みのきいたロブスタ ーコーヒーがきっと観光客の気持ちをシャキッとさせてくれることだろう。 モンテラドの辺縁部には巨大な穴がいくつも開いていて、そこに雨水が溜まって池になっ ている。バンカブリトゥンにある錫鉱採掘穴と似たようなものがそこにあって、子供たち にはたいへん危険な場所になっている。現在もマンドルやモンテラドには1千人を超える 黄金採鉱者がいて、活動を続けている。[ 完 ]