「ナイトトレイン(5)」(2025年12月25日) この列車がパサルトゥリ駅を出るとき、車内灯は点いていた。ところが走っているうちに 消えて真っ暗になった。駅に到着すると駅の明かりが差し込んでくるが、走っている間は 客車内は真っ暗のまま。ときどき物売りが携帯ライトを持って通るから、それが唯一の明 かりだった。 スマランポンチョルを出てから、列車はほぼ各駅に停車するような感じになった。ちょっ と走ったらまたすぐに停まる。ジャカルタのはるか手前で夜が明け、パサルスネンに到着 した時はもう陽が高かった。3時間の遅延だ。 バンドゥン〜スラバヤ線のエグゼクティブ列車トゥランガ号に乗ったとき、4時間遅れた ので2回食事が出たという話にクルタジャヤ号乗客のひとりはこうコメントした。「そり ゃ、エコノミー列車に乗ったあんたが悪い。高い料金を払ってエグゼクティブ列車に乗れ ば、待遇が違って当然だよ。」 2000年9月1日からエコノミー客車の設備が改善された。インドネシア国鉄ジュンブ ル第9操車区がそれを行ったのは、乗客基本料金の改定が行われたからだ。エコノミー乗 車料金はそれまでの21.68ルピア/人パーKMから37.36ルピアに引き上げられた のである。その上昇率は7割。 そんな大幅値上げにもかかわらず、国鉄のエコノミー列車運行コストは53.66ルピア /人パーKMなのであり、依然として逆ザヤになっている。その差額分の補填は国が国民に 対して持っているPSO(Passenger Service Obligation)原則に従って国費から補助金が 国鉄に与えられている。ただし国鉄のすべての赤字が補助金で補填されるということでな く、あくまでもエコノミー列車運行だけを対象にして行われているやりくりだ。全車エコ ノミー客車の場合にPSOが適用されるのであり、ビジネスクラス列車にエコノミー客車 が繋げられたら、それはPSOの適用外になる。 乗客の基本需要をその値上げに相応しいクオリティで満たすために、客車の設備改善は不 可欠なものだった。乗降扉は内側からカギがかけられるもの、窓ガラスは割れない安全ガ ラスを使い、雨水の車内浸入を完全にシャットアウトする。トイレの水の確保、車内の照 明と扇風機の機能をより確実で効果的なものにする。 この設備改善に関連して国鉄側は乗客に対し、客車内の設備を正しく丁寧に使用するよう に協力を求めた。公共の物や他人の物を破壊して喜ぶヴァンダリズムはもってのほかであ り、トイレの水についても蛇口を開いたあと、それを閉じないまま立去る乗客がいるため にタンクの水が空になるので、自分の所有物・自分の家の設備という感覚で使用していた だきたいという表明が出された。 壊れたり無くなったりしないように大切にするために、「公共物を自分の私物と見なせ」 だって?日本文化とまるで正反対のこの価値観に接して、インドネシア文化内の公徳心欠 如を象徴的に示すサンプルと考えた日本人は数多いはずだ。だがインドネシア人は本当に 公徳心を持っていないのだろうか?日本文化との間で発現形態が違っているだけなのにそ のスピリット自体が存在しないと判断するのは短慮ではあるまいか。この世に存在する公 徳心はすべからく日本文化のような形態で実現されなければならないという考えは独善的 すぎないだろうか?[ 続く ]