「庶民化が進むバリ島観光(前)」(2016年09月21日)

観光旅行先としてのバリ島は、過去10年くらいの間に庶民化が激しく進んだ。かつての
バリ島はインドネシア人にとって、小金を貯めて豪勢な旅を楽しむために行く場所という
印象が強かった。

もちろん昔でも、夜行バスに乗って車中泊し、バリでは廉くごみごみしたロスメンに泊ま
り、島内をベモと呼ばれるアンコッで回るという廉価旅行がなかったわけではない。ただ、
そういう廉価旅行と豪華旅行の中間がなかったということだ。


ちなみに、ベモというのはダイハツミゼットの後部を改造して乗合自動車にしたもので、
インドネシアでは1962年から使われ始めた。ジャカルタのみならず全国の地方都市へ
も普及し、デンパサルでも使われた。1970年代初めごろ、遊びに来たサヌールからデ
ンパサル市内へわたしはベモで往復した記憶がある。1970年代終わりごろに四輪のミ
ニバス型乗合自動車がベモの座を奪い始めるのだが、ジャカルタではその四輪ミニバスタ
イプがアンコッやミクロレッと呼ばれるように変わったにもかかわらず、地方都市の中に
は車種が変わったのにベモという名称を使い続けたところがいくつかあるらしい。デンパ
サルもそのひとつだ。だからジャカルタ住民にとって、バリでベモという言葉を聞かされ
るのは違和感が強い。


昨今の2百万ルピアというのは、小金を貯めるという表現にふさわしい金額ではない。そ
の2百万ルピアでジャカルタから二泊三日のバリ島旅行ができる時代がやってきている。
ジャカルタに住むリニさん39歳は四人の子供を持つキャリアウーマン。かの女は友人5
人と二泊三日の経済的バリ島旅行を計画した。宿泊・航空券・バリ島での現地ツアー・食
事。それらの費用の中でメインを占めるのは、やはり宿泊と航空券。6人は手分けして、
割引宿泊とプロモ航空券を探し回った。インターネット情報を探る方法がもっとも多用さ
れた。

そうして立地条件にすぐれ、安全性も問題なく、施設もまあまあという物件がクタに近い
レギアンで見つかった。一泊6人で20万ルピアだという。更に廉価なプロモ航空券を見
つけ出した次は、現地での観光ツアー。インターネットでブログや観光地紹介記事を探し
回り、いくつかの訪問先をみんなで合議した。

クタビーチ、ウルワトゥ寺院、パンダワビーチ、サゲ(Sangeh)モンキーフォレスト、タナ
ロッ(Tanah Lot)寺院、タマンアユン寺院、サヌールビーチ、ウブッ(Ubud)の街、スカワ
ティ市場。観光の足は運転手付きレンタカーを使う。料金は時間制だから、時間のロスを
出さないように訪問先をうまくまとめる。こうして6人の熟女たちはひとり2百万ルピア
の予算をまっとうしたのだった。


そのようなことが可能になった背景には、バリ島側での受け皿が充実したことが大きい要
因だ。たとえば過去数年間に、バリ島南部地域ではシティホテルが街中に雨後の筍のよう
に林立した。観光スポットから離れてはいるが、一泊一部屋30万ルピア台という料金と、
まだ新しい施設がもたらす快適さは、既に古くなった5〜4星級老舗ホテルの強敵であり、
また安かろう悪かろうのロスメンにとっても強敵となる。[ 続く ]