「ロンボッ島の新商品」(2016年10月21日)

観光セクターが顕著な発展を示している西ヌサトゥンガラ州ロンボッ島でも、昔ながらの
農村経済は苦しい状況が続いている。そんな中で、東ロンボッ県テララ村ムニェル集落か
ら新商品が打ち出されてきた。ユニークな食品に全国からいま、関心が集まっている。

ロンボック島では、観光地の繁栄をよそに、農村部は貧窮が常態になっている。収穫期が
過ぎ去れば仕事はほとんどなくなり、ひとびとは収入を得るために出稼ぎを余儀なくされ
る。西ヌサトゥンガラ州都であるマタラム市から東におよそ30km離れたテララ村は住
民3千5百世帯人口8,974人で、年間百人近い住民がサウジアラビア・シンガポール
・マレーシア・台湾などへ海外出稼ぎに出ている。

そんな暮らしに陥る者を減らそうとして、ムニェル集落ではアヒルを飼育して塩漬け卵を
生産することを始めた。発起人は地元マドラサの非常任教員で、2009年に125羽の
アヒルを購入してトライアルを開始した。アヒルを選んだのは、育てやすいことと餌が地
元の環境内で容易に得られるのが理由だ。いま、この事業組合には1千羽のアヒルが飼育
され、毎日塩漬け卵が生産されている。

telur asinと呼ばれるアヒルの塩漬け卵は、全国どこででも作られており、何ら珍しいも
のではない。ではいったい何がユニークなのか?この集落が商品化したのは、できあがっ
た塩漬け卵を焼いたものなのだ。つまり焼き塩漬け卵telur asin bakarなのである。

焼き塩漬け卵は集落民女性10人男性5人が手ずから作り上げている。産み落とされたア
ヒルの卵は粘土と砥ぎ灰をこねあわせたもので包み、10〜15日間発酵させる。それか
ら土を落として茹で、干して乾燥させたものを炉の中に入れて4時間焼く。燃料はヤシの
実の殻だ。

こうしてサウォの実のような褐色の殻を持つ焼き塩漬け卵が出来上がる。塩気が強く、卵
の黄身は赤さが増し、咬んでも水分がない。焼くことで、水気とともにコレステロールも
低下することが明らかになっている。ひと月間も日持ちがし、ご飯のおかずに最適で、ま
たおやつにもなる。

一日の生産量は3百個だが、最大1千5百個まで増やすことも可能だそうだ。東ロンボッ
県と中部ロンボッ県にあるミニマーケット25店で、この焼き塩漬け卵は一個4千ルピア
で販売されている。また、デンパサル、スラバヤ、リアウ、バリッパパンにはこの商品の
愛好者がいて、ソーシャルメディアを通して一回40〜80個の注文を送って来るそうだ。
この事業が当たっていることから、焼き塩漬け卵の材料としてアヒルの未加工卵を供給す
る村も増加中で、現在東ロンボッ県で5カ村、中部ロンボッ県で2カ村がアヒル卵生産事
業を進めている。