「スラバヤの戦闘(18)」(2016年12月05日)

叛乱ラジオが放送するのはストモの愛国スピーチであり、インドネシア共和国の独立を護
持するために、独立を崩壊させようと画策しているNICAとそれに協力するイギリスに
対して臆することなく闘おう、とスラバヤの市民に呼び掛けた。かれは天性のデマゴ−グ
だったらしく、心地よい言い回しと心を揺さぶる抑揚表現に、聴衆の人気は高まった。そ
してかれの愛称としてブントモという名前が定着した。

ジャカルタの共和国政府は叛乱ラジオ局の活動が好戦的扇動的であるために否定的姿勢を
採っていた。かれが共和国政府上層部からならず者視されていたのは疑いあるまい。だが
ジャカルタの中央政府にブントモの活動を制限する手だてはひとつもなかった。


ブントモの演説は常に、アラーフアクバルで始まり、アラーフアクバルで終わる形式を採
ったが、それはインドネシア共和国独立に対して明確な姿勢を決めていないサントリ層に
意識付けを進めるための作戦だったらしい。

そして10月22日、ナフダトゥルウラマ最高指導者ハシム・アシアリ師が、「独立イン
ドネシア共和国とイスラム教に危険をもたらすオランダとその手先に対する戦いはジハー
ドである」とのファトワを出した。ジハードを行うとき、もし生命を落としても天国の扉
は保証されている。その信念が共和国独立擁護の戦闘に参加するムスリム国民に大きなエ
ネルギーを与えたことは間違いないだろう。

ハシム・アシアリ師のファトワは、スカルノ大統領がイスラム宗教界に出した「祖国を守
ることについて、イスラム法はどう定めているのか?」という問いに対する回答だった。


AFNEI進駐軍がスラバヤに到着する前日の10月24日、ブントモは次のような内容
のスピーチを放送している。
「われわれ過激派と民衆はもう甘い言葉を信じない。独立共和国をかれらが認めないかぎ
り、われわれはかれらの動きを何一つ信用しない。われわれは発砲する。われらの進む道
を邪魔する者は誰であれ、血を流させずにはおかない。われわれに完全独立を与えないの
なら、われわれは帝国主義者のビルや工場を手りゅう弾やダイナマイトで爆破するのだ・
・・
植民地支配者に卑しめられてきた、裸で飢えた数千の民衆がこの革命を遂行するのだ。か
つて植民地支配者に蹂躙されたわれわれ過激派、革命精神に満ちて叛乱するわれわれはイ
ンドネシアの民衆と共にある。植民地支配下に戻されるよりは、この国土を血の洪水が埋
め、大海の底に沈むのを見るほうがはるかにマシだ。神はわれわれを守ってくれる。ムル
デカ!アラーフアクバル!アラーフアクバル!アラーフアクバル!」[ 続く ]