「スラバヤ・スー(48)」(2017年03月01日)

タントリはモネム氏の任務を成功させ、インドネシア共和国の国際社会への登場を実現さ
せる努力に邁進しようと決意した。

ふたたび中国人やインドネシア人の間を回って可能性を探るが、以前に行ったときと同じ
ように成果は得られない。そんな中で、インドネシア共和国に同情的なイギリス人実業家
を訪れてはどうかとアドバイスされたので、タントリはその実業家を訪問した。

タントリはモネム氏のことを伏せて、自分がある任務のためにインドネシアに戻りたいの
だとかれに話した。するとその実業家は「フィリピンから飛行機をチャーターしてあげよ
う。パイロットとナビゲータはアメリカ人だ。ただし金額は相当高いものになるだろう。」
と言う。

「払える金には限度がある」とタントリが言うとかれは、「とりあえず、その線を当たっ
てみよう。ひとつの可能性ということだ。」と言い、世界的に名前の通ったイギリスの大
企業の役員を紹介してくれた。


その役員の話によれば、その会社がマニラからシンガポールに飛行機を呼び寄せ、その飛
行機がヨグヤカルタまでタントリを運んでくれた上、ヨグヤカルタで三日間待ってから、
タントリをシンガポールまで運んでくれるという提案だ。その費用はすべて込みで1万米
ドルになる。

タントリはそれを罠ではないかと警戒したが、情報を集めたところ、その企業はその飛行
機の運用で大儲けをしていることが明らかになり、かの女は警戒を解いた。


タントリは費用の問題をモネム氏に諮った。もっと大きな金を自分は動かせるので金額の
問題はないが、その支払いのために本国政府に連絡しなければならない。しかし盗聴され
る危険があるため、電話は使えず、手紙でのやりとりになるから、しばらく時間がかかる。
多分数週間かかるだろう。モネム氏はそう語った。

それではその計画の先行きが怪しくなる。タントリは自分が金策に走ることにした。

ところが、オランダの海上封鎖の強化によってインドネシアからのゴムの密輸が入ってこ
なくなり、シンガポールにあるインドネシアの資金が細ってしまっていることがわかった。
他の可能性も当たってみたが、良い反応はない。

タントリはイギリス企業の役員を訪れ、支払いについて、シンガポールから戻ってニ〜三
日後にしたいから、その猶予をもらえないかと相談した。

誰が保証人になるのか、と役員が尋ねる。タントリは、インドネシア共和国国防省が支払
いを行う、と請負った。役員は保証書を作れと言うので、タントリは保証書にサインした。
実際に、国防省の誰ひとりとしてそれを承知していないというのに。[ 続く ]