「asliインドネシア人(後)」(2017年06月22日)

改定国籍法を制定させた当時のハミッ・アワルディン法務人権大臣は、その画期的な観念
の転換を実現させた3分間を次のように物語る。
「国会の改定国籍法案審議特別委員会議長にわたしは迫った。われわれは法律を作ろうと
しているのか、それともインドネシアに新たな歴史の幕開けをもたらそうとしているのか、
と。わたしはこう説明した。法律を作るだけなら、条文をいじくっていればよい。しかし
歴史を変えるのなら、考え方を変えなければならない。パラダイムを変えるのだよ。
国民の国籍に関するものの見方はオランダ植民地政庁の血統をベースに置く観念に強く影
響されすぎている。当時オランダ人は人間を三つの階層に分けた。オランダ人とヨーロッ
パ人、極東民族、そしてプリブミだ。そのような区分法はなくさなければならない。イン
ドネシア民族というものを肌の色や人種的特徴で規定してはならない。そうでなく、もっ
と法的な定義が用いられるべきなのだ。」

3分後に議長は大臣の主張に同意した。改定国籍法案の審議はその後、流れるように進ん
だ。法律が制定されると、orang Indonesia asliという意味は法的ステータスを指すよう
になった。だがこの観念の転換はいまだに国民生活の中に浸透していない。

外国人の血が混じっているから、その人間はその外国の血のゆえにその血が由来する民族
のために働くにちがいない、というものの見方がどれほど時代錯誤的であり、またヒュー
マニズムを欠くものであるのかということが理解できない者があまりにも多いように思わ
れる。自分の先祖に何国人がいようが、人間は生まれ育った土地と文化を愛するものだと
いう人間の資質が、敵を作って対立し、敵を打ちのめして勝利しようという動物じみた欲
求によって目隠しされている姿は決してインドネシアに限ったものでないだろう。

ジャカルタ都知事選挙がpribumiとnon-pribumiのプライモーディアルな対立構図を一般大
衆にリマインドさせることに利用された。感情で動く一般大衆の操作に対して、観念の転
換など何の力もない。インドネシアはいま、国家転覆を企てる一派の執拗な攻撃にさらさ
れている。国民の間に対立構図を作ることが国家の維持にとってどれほど大きな損失にな
るのかは国家指導者が熟知しているはずだが、政府はラディカリズム対策に没頭していて、
国民の間の差別と対立の解消に対するフレッシュな動きはいまだ見られない。[ 完 ]