「人間愛に無縁な社会」(2017年08月07日) 夜中の路上暴力行為が激化したため、都内の各市警は犯罪対策特別チームを編成してパト ロールを強化している。中でも、オートバイギャングの一般市民に対する無差別襲撃やギ ャング同士のタウランが増加したことから、警察のパトロール部隊は夜中にオートバイに 乗っている若者集団、路上無法レース、武器を所持している者、ナルコバ所持者や使用者 などを対象にして、不審を抱いた相手に対するアプローチを励行している。 この市警犯罪抑止特別チームには固有名称が付けられて、有能な警察員チームとして警察 部内のみならず社会からもヒーロー扱いされている。東ジャカルタ市警では、ラジャワリ チームというのがそのヒーロー集団だ。 2017年7月26日(水)23時25分、ラジャワリ第二チームが夜間パトロールに出 動した。パトロールは東ジャティヌガラ通りからオティスタラヤ通り〜デウィサルティカ 通りと下り、チリリタン卸売センターからラヤボゴール通りに出て、パサルボ交差点から PBスディルマン校の前でターンしたあとラヤボゴール通りを上り、ストポ少将通りから UKI大学を経てデウィサルティカ通り〜オティスタラヤ通り〜西ジャティヌガラ通り〜 東ジャカルタ市警本部というルートを取った。 パトロール中に出会った若者の群れにはそのつどアプローチをかけて、犯罪に関わってい ないかどうかをチェックする。PBスディルマン校の表にあるジャムウのワルンとトゥガ ル食堂に若者たちがたむろしていたので近付いたところ、強いアルコール臭が捜査員の鼻 を打った。 深夜に暴力行為を行う若者のほとんどはアルコールを飲んだ上で狂気に走り、他人を痛め つけて死に至らしめるパターンがマジョリティを占めていることが警察の中では既に常識 になっている。夜中+若者+アルコールという組合せすなわち路上暴力行為の取っ掛かり という方程式を崩すために全国の警察はアルコールの取締まりに注力し、中でも家内工業 で作られる不法アルコール飲料や、オプロサンと呼ばれる不法のアルコール混入飲料をか れらは目の敵にしている。 ワルンと食堂に集まっていた若者たちからアルコール臭が漂ったことは、かれらがそこで 廉価な不法製造アルコール飲料を飲んでいたことを示すものだ。捜査員はそこに集まって いた者たちから事情を聴取し、ジャムウのワルンが不法アルコール飲料を販売していたこ とを突き止めた。ワルンの店番をしていた35歳と27歳の男ふたりが逮捕されたが、ワ ルンのオーナーは行方をくらましている。 店番の二人を取り調べたところ、不法家内工業で製造されたアルコール飲料はリッター当 たり2万ルピアで販売され、毎日平均百リッター前後が販売されて一日の売上は200万 ルピアに達し、80万ルピアの純利があがっていることが判明した。 もっと驚いたことは、その製造過程でペンキの溶剤であるシンナーが製品に混入されてい た事実だ。明らかに人体に有害な物質を混ぜて購入者に飲ませていたのは、重大な犯罪行 為になる。このシンナー入りアルコール飲料は2年前から販売されていたとのことで、警 察はただちにワルンオーナーの捜索に取り掛かった。 ワルンの店番への取り調べの中で、それを飲ませた客の中に犠牲者が出たかと取調官が質 問したところ、まだひとりも出ていないという返事が返ってきたが、即死しなければよい というものでもあるまい。数日後に死んだ者があったとしても、ワルンの店番にわかるは ずがないのではあるまいか。 ホットな暴力行為で他人の生命を奪い、クールに有害物質を飲食させて他人を死に至らし める。他人・よそ者・部外者・異邦人・・・の生命は虫けらのようなもの。幾千年もかけ て人類が文明の中で構築してきたヒューマニズムや人間愛に無縁な社会がいまだに存在し ている。