「海洋プラスチック汚染と食物連環の恐怖」(2017年10月06日)

中国に次ぐ海洋プラスチック汚染の元凶と名指しされているインドネシアでは、周辺の海
でいったい何が起こっているのだろうか?きわめて危険な食物連環が進行しつつあるとい
う研究成果を、スエーデンのルンド大学研究者カリン・マッツソン率いる研究チームが2
017年9月13日版ネイチャー誌に発表した。

330ミクロンより小さいナノプラスチック分子はまず海草などの海中植物に吸収され、
それをプランクトンが取り込み、次いで魚がプランクトンを食べる。魚の体内でその微粒
分子は血液中に浸透し、最終的に脳細胞に蓄積される。脳中の蓄積量が増大すると魚は病
気になり、食欲が減退し、動作も緩慢になる。一方ナノプラスチック分子に汚染されたプ
ランクトンは死ぬ、というのがその研究成果だ。


それに関連してインドネシア科学院研究者は、インドネシア海域におけるナノプラスチッ
ク調査研究は調査分析機器がまだ用意されていないために開始されていない、と語る。来
年には用意されることが期待されているそうだ。かれは言う。「5〜0.33ミリのマイ
クロプラスチックに関する調査はマカッサルのハサヌディン大学とアメリカのカリフォル
ニア大学が既に共同調査を行っているが、ナノプラスチックの魚に対する影響はまだ手が
着けられていない。マイクロプラスチックについては、マカッサルの魚市場に揚がってい
る魚が汚染していることが判明している。マイクロプラスチックは魚の消化器官から見つ
かっている。」

ボゴール農大海洋漁業学部海洋資源マネージメント学科教官はネイチャー誌の論文につい
て、ナノプラスチックが魚の体内に蓄積されているという発見はプラスチックゴミの海洋
汚染に関する強力な警告である、と語る。「理論的には、ナノプラスチックという微粒子
が体内に入ると、血液中に浸透することは起こりうる。白血球がそれを認識できずに放置
してしまうため、脳細胞まで運ばれてしまうだろう。ナノプラスチックのもっとすさまじ
い脅威は、それが自然界にある有害危険物質のキャリヤーになりうることにある。そうな
れば危険は極大化する。」

先述のインドネシア科学院研究者はマイクロプラスチック汚染調査結果について、サバン
・バタム・ジャカルタ・チレボン・デンパサル・ワカトビ・テルナーテで行われた調査結
果は、近海の汚染度が遠洋のレベルとほとんど同じものであったことを示している、と述
べている。「であるなら、ナノプラスチックの汚染分布も、同じような状況になっている
ことが推測される。マイクロプラスチックがインドネシアの沿岸部や近海に溜まるのでは
なくて、インドネシアの海域から外洋へ流出して行くものがあるのではないだろうか?ま
た外洋からインドネシア近海に流れ込んでくるものもあるにちがいない。その実態はもっ
と調査研究を積み重ねなければなんとも言えないものだ。われわれは少なくとも、プラス
チックゴミを無制限に投棄することだけは、より強く阻んで行かなければならない。」

あたかも、脅威や危険が証明されたからプラスチックゴミ投棄にはじめて危機感を持つと
いう姿勢ではだめだ、とかれは批判しているかのようだ。