「インドネシア語大辞典KBBI」(2017年10月27日)

インドネシアでもっとも権威のあるインドネシア語辞典、いわゆる国語辞典がインドネシ
ア共和国教育文化省国語センターの編纂したKBBI(Kamus Besar Bahasa Indonesia = 
インドネシア語大辞典)と略称されているものだ。KBBIは現在既に第5版と改定を重
ねられてきた。この第5版は印刷製本されたもの、インターネットオンラインのもの、オ
フラインのものの三種類が出されており、特に2016年10月28日から登場したKB
BIオンライン版は既に7百万利用者に愛用されている。フリーアクセスなので、インド
ネシア語学習者は「kbbi.kemdikbud.go.id」を大いに利用すればよいと思う。

この第5版は語彙数が10万8千にのぼっており、新語を更に増やしてインドネシア語を
豊かなものにするべく、関係当局は鋭意その姿勢を強めている。ある単語がこのKBBI
に入ったかどうかということを、その単語がインドネシア語として認定されたかどうかの
判断に使うことができるにちがいない。その意味からもKBBIが持っている権威はゆる
ぎないものであるという理解が持てそうだ。

KBBIは数十人の著名なインドネシアの国語学者や言語学者が編纂や改定に参加してお
り、インドネシア語語彙や文法の扱いは国家レベルにあると言うことができる。

インドネシア語はインドネシア共和国統一国家のシンボルであり、同時に国民の団結を実
現させる共通資産である。一方で地方語は、国是であるビンネカトゥンガルイカの基盤を
なすものであり、多種多様な地方語が併存して文化の多様性を支えている。地方語が絶滅
することは国是が守られていないことを意味するために、地方語も育成発展を目指さなけ
ればならない。つまり国家存立が国民の多重言語性を培養する構造になっていることから、
インドネシア国民の大半は生まれながらにして重言語者になることを宿命付けられている
と言うことができるだろう。


特にかなり以前から、インドネシア国民が英語をそのままインドネシア語表現の中に用い
ることが一般化していて、近年その傾向は強まりこそすれ、外国語の直使用を自粛して、
対応するインドネシア語に替えていこうとする運動はあまり見られない状況になっている。
言うまでもなく、その傾向はインドネシア語育成発展という国家目標に反するものであり、
教育文化省の国語育成機関は国民が頻用する外国語に相当するインドネシア語を必ず用意
することで外国語使用者にエクスキューズを与えない環境を確保しようと努めており、お
のずと新語の増加を支える傾向が生じている。

英語の頻用傾向は地方自治体も持っている。新たな施設が設けられると、地方自治体はそ
の名称を英語のまま使いたがる。たとえば首都ジャカルタのスマンギ立体交差に高架橋を
設けて三層のものになった際、都庁はSemanggi Interchangeを公式名称にしようとした。
その案は反対を受けて、Jembatan Layang Simpan Susun Semanggiという名称に取って代
わられている。スカルノハッタ空港に建設されたターミナル間を結ぶスカイトレインも、
インドネシア語の公式名称が提案されている。英語のスカイトレインに対応するインドネ
シア語名称はkalayangでどうだろうか、というのである。kereta api layangが一語にさ
れたものがkalayangだ。

教育文化省国語育成開発センター長官によれば、地方語や外国語がたくさんインドネシア
語に取り込まれている。地方語のトップはムラユ語で、ジャワ語・ミナン語・スンダ語が
続いている。外国語では、アラブ語が最大で、次にポルトガル語・オランダ語という順位
になっているそうだ。

今現在検討されている新語は2万3千語彙あり、そのうちの10〜15%がKBBI入り
を果たすだろうとされている。