「ジャカルタ〜バンドン高速鉄道はシルクロードの一部(終)」(2017年11月16日)

取り消されたものには、リビアのカダフィ政権崩壊、ベネズエラの政治経済危機といった
ものがあり、、そしてまたハンガリー〜セルビアはプロセス中で確定のめどが立たず、ジ
ャカルタ〜バンドンや中国〜ラオスのように進行が順調でないものもある。政治状況や政
治システムあるいは政府運営が国によって異なっているのだということに中国政府はあま
り意を払っていないように見える。

プロジェクト費用の面についても明確な計算がなされておらず、楽観的な計画の匂いが立
ち込めている。その中には、実現性の十分な検討がなされないまま援助や借款の約束が与
えられているものも含まれている。たとえばGDPが123億米ドルのラオスにこのプロ
ジェクトの費用として58億米ドルの長期借入を作らせようとしているが、ラオスにとっ
てその経済価値はまだ判然としていない。現実的かどうかは誰が見てもわかるだろう。

プロジェクト受け入れ国がスムースな実施を行うのを困難にする障害の発生リスクについ
ても、十分な斟酌がなされていないように見える。たとえば大量の中国人労働力の使用は
プロジェクト受け入れ国の社会的安定を阻害するものになる。インドネシア、ラオス、そ
の他各国で見られるように、それがプログラムのスムースな進行の障害になるのは言うま
でもない。

中国にとってはもちろん、このような方法による開発は国内経済問題に解決をもたらすも
のになる。中国では全国でもう十年以上インフラ建設キャパシティがオーバーサプライに
なっており、中国が当面必要としていないキャパシティがこのプログラムの中で使われる
ことになるのである。OBORプログラムに参加する諸国で使われないなら、そのキャパ
シティは完全に遊休状態のままだ。

< 国内ファクター >
ニューシルクロード建設のスムースな実施を阻害するいくつかの要因のうちで、一部は高
速鉄道建設を受け入れる国の国内事情に由来するものがあり、また一部は中国側自身が持
っているファクターから来るものがある。資金面を見るなら、中国は現在ますます上昇し
ている借入比率(レバレッジ)の影響に直面している。2016年は260%だった。た
とえば不良債権増加問題対策が、きわめて巨額なプロジェクト費用を支える原資のパワー
を弱いものにするのである。BRIの総費用は9千億米ドルであり、そのうちの1,43
0億が高速鉄道網の建設に振り向けられる。

受け入れる側の国は高速鉄道網建設プロジェクトの費用に関連して借入が増加することが
無視できない障害になってくる。それ以外にも、プロジェクト受け入れ国で多数の中国人
労働者が使われることに関連して起こる社会問題に注意する必要がある。

おまけに費用の原資として借入を使うことすら障害に直面することになるだろう。なぜな
ら、借入を受け入れた参加国の経済が、借入総額の増加によって財務面の安定に不安要因
を抱えることになるだろうから。


以上が、最初のコンセプトほどスムースに進展していないニューシルクロードプロジェク
トの一部をなしている中国高速鉄道建設実施に関するメモである。

インドネシアにとってそれらすべては、高速鉄道建設におけるものだけでなく、中国のB
RIネットワークの一部をなす港湾建設に関連しても、政府が既に検討を加えている。生
産プロセスネットワークにおけるサプライチェーンとプロダクションチェーンの中で、そ
のネットワークに参加する者のメリットは明白だ。しかしながら、OBORネットワーク
の中では、そのようなものにならないとわたしは思う。このケースにおいてわれわれは、
オファーに同意する前にインドネシア経済にもたらされるものに対して常に国益を最重視
しなければならない。いざふたを開けてみれば、最初の話ほど旨いものでなかったという
こともあるのだから。[ 完 ]