「家庭排出汚水の悪循環」(2017年11月17日) インドネシアの家庭はやっと89.2%が汚水設備を備えたものになったことを保健大臣 が明らかにした。それは一般家庭についての統計であって、トイレと上水のない学校につ いてはその統計に含まれていない。そのような学校は地方部の、まだ開発の遅れている遠 隔地に少なくない。 汚水設備がないと、下痢・チフス・ジフテリア・コレラなど感染型の病気が広まる原因と なる。また上水がない場合、それが飲食に使われたなら腎不全や他の非伝染型病気の罹患 を煽ることになる。社会保障催行庁の2016年データによると、腎不全は188万件あ って、心臓疾患に次ぐ二番目の国民病であるとのことだ。 保健大臣によれば、国民にとって上水と汚水の問題は、健康な暮らしを阻むいくつかの要 因が影響をもたらしていて、そのウエイトの比率は環境要因45%、国民の保健に関する ビヘイビア30%、保健サービス20%、遺伝的要因5%となっている由。 国家開発企画大臣は汚水設備について、これまで推進されてきた各家屋ごとにトイレを設 けて汚水はセプティックタンクに溜める方式よりも、各家屋から出る汚水を流して地域の 共同タンクに集める方式のほうがはるかに環境に優しく、また衛生面でのリスク予防にも つながるため、これまで汚水システムのなかった地区にこの方式を進めていることを報告 した。 言うまでもなく、共同タンクには汚水処理施設が備えられ、集まった汚水は処理プロセス を経て投棄される。今行われているセプティックタンクを使ったシステムでは、県や市の 自治体が設けた汚水処理場に民間の汲み取り業者が持ち込むことが義務付けられているも のの、実態はかなりのパーセンテージで業者が勝手にどこかにそのまま捨てているケース が見られ、現在のシステムが環境に優しくないものになっている原因のひとつを成してい る。 セプティックタンクそのものもまだ標準構造が定められておらず、実際には家屋が建設さ れるときにまちまちの形が採られている。地中に埋められたセプティックタンクから水分 が土中に滲出すると、井戸を使っている家庭では地下水に汚水が混じり込むことになる。 おまけにタンクの汲み取りを定期的に行っている家庭ばかりでもない。 汚水処理施設付きの共同タンク方式というのはまだあまり実例がなく、首都ジャカルタに は2カ所だけあって、都内全家庭から出る汚水の2%だけがそのシステムに乗っている。 政府は今後、住宅地開発にその方式を推進しようと考えており、将来的には民間宅地開発 会社に下駄を預ける形になりそう。 地方部では南スラウェシ州シデンレンラッパン県や北ルウ県がその方式を推進している。 地方部の場合はこれまでトイレのなかった村々にトイレを設ける運動が自治体の肝いりで 何年も前から継続されており、そこにこのシステムが持ち込まれるため、自治体の予算に よる建設の形が採られている。 上水・汚水設備のなかった村々で設備が完備されるようになり、かつては川や泉に水を汲 みに行っていた家庭が、自宅にいながらにしてきれいな水が使える状態になってきた。ト イレについても、どの家にも便器が置かれるようになった。ところが便器とセプティック タンクが整ったにも関わらず、今まで同様に川へMCKをしに行くひとが決してひとりふ たりではない、とのこと。生活習慣はやはりそう簡単に変わるものではないようだ。ちな みにMCKとはMandi-Cuci-Kakusのこと。