「児童婚緊急事態(2)」(2017年11月30日)

そして児童婚の結末は往々にして離婚に至る。そうなると、その家の娘は結婚で生まれた
子供を連れてまた実家に戻ってくることになる。親の負担は一層重くなるという結末だ。
もし親が娘を結婚させるために巨額の結婚費用を借金していたなら、娘が子連れで戻って
来たときにその借金返済はまだ終わっていないかもしれない。銀行や公的融資機関と縁の
ない農村部の農民が手続きの簡単な高金利の金貸しから借金するのはよくあるストーリー
であり、こうしてその一家は最悪の事態へと落ち込んで行くことになる。

二つ目、教育を受ける権利、性行為や生殖に関する標準的なレベルの健康が守られる権利
など、子供たちが当然受けるべき権利を享受するのを児童婚は困難にする。

三つ目、妊娠・暴力・性病の伝染などによって身体面で致命的な死に至るリスクを児童婚
はもたらす。インドネシアで出産時の母体や新生児の死亡が多いのは、出産者が未成年で
あることが大きい要因になっている。未成年者の身体器官や生殖器官が未完成であるのが
その原因である。要するに妊娠する準備がまだ整っていないということなのだ。そんな状
態で妊娠すれば、胎児の成育にも影響が出てくる。

クエンティン・ウォドン世銀プロジェクトダイレクターの言を借りれば、若者の安全・保
全・健康・教育・人生の選択と決定といった諸権利が、しばしば結婚によって強奪されて
いるのである。未成年結婚は女性の希望を打ち壊すだけでなく、貧困を減らす努力や経済
成長とジェンダー対等への努力すら踏みにじっている。

< 国家経済への負担 >
未成年結婚は保健や民生面に影響を及ぼすだけでなく、その巨額の保健コストのために国
家経済にも影響を与えている。従来この面にはあまり関心が払われず、適正な政策も取ら
れていなかった。世銀と女性リサーチ国際センターの出した「児童婚の経済的影響」と題
する最新報告によれば、未成年結婚を廃止しなければ2030年には発展途上国に数兆米
ドルの損失が発生するとのことだ。

反対に結婚年齢を引き上げて行くことで女子と児童の教育レベル向上、人口コントロール、
家庭と職場での女性福祉向上に大きな貢献がもたらされる。その分析の根拠は次のように
述べられている。

一、18歳未満で結婚した女性の出産は健康面のリスクが高く、必然的に費用が高くなる
という帰結に向かう。結婚年齢をより成熟した年齢に引き上げることで保健費用の出費が
抑えられる。未成年結婚と望まれない出産は大きな問題を成しているのである。

二、多くの国では結婚を遅らせることで住民人口が統御され、教育予算が少なくとも5%
は節減されている。未成年結婚を廃止したことで2015年には年間220億米ドルのグ
ローバル福祉向上が実現したと分析結果は示している。2030年にそれは年間5,66
0億米ドルに達すると見込まれている。[ 続く ]