「ボロブドゥル英語村(前)」(2018年01月15日)

サダッ・アル・ムザキくん19歳は、中学生時代に英語の授業が嫌いで、教室内では寝て
いるほうが多かった、と昔を回想する。そんなかれが、今や信頼の厚い英語の教員になっ
ているのだ。かれが教えているのは中部ジャワ州マグラン県ガルゴゴンド村(Desa Ngargo-
gondo)の英語学校。

中部ジャワ州ウォノソボの出身であるかれは、2014年にガルゴゴンド村の英語学校に
入学した。英語だけでなく、宗教についてもさまざまなことを学び、またアントレプルヌ
ールに関しても知識を深めた。英語学校とはいうものの、ガルゴゴンド村民が必要として
いる学問知識をも教育のメニューに加えているこの学校は、言ってみれば村興し塾と言い
換えることもできそうな性格をしている。

かれ自身、この英語学校で一年間学んだあと、「教員としてここで働きたい」と申し出て
採用された。一年間、見習い教員として働いてから、正教員に格上げされた。かれは子供
たちに英語を教え、イスラム社会の宗教師、大学教官、さらに海外の教育機関に研修を受
けに行きたい教授候補者までもがかれの生徒になった。大学教官たちは海外に出て能力を
高めたいと希望しているのだが、英語の実力が不足しているために希望に邁進するのをた
めらっている。そんなかれらに、容易で迅速に英語を身に着けることのできるガルゴゴン
ド村の英語学校は、力強い頼みの綱なのである。サダッくんはその英語学校で教員をして
いるだけでなく、グラフィックデザイナーの仕事までこなしている。

マグラン県というのは、あの有名なチャンディボロブドゥルのある場所だ。英語学校の名
も、ボロブドゥル英語村という。チャンディボロブドゥルから4キロほど東南に離れたガ
ルゴゴンド村を、村民のひとりが英語村にしようとして立ち上がった。
ガルゴゴンド村に住むハニ・ストリスノさん43歳は、英語をさまざまな場所で学んでき
た。ある教育機関の英語コースをも卒業した。かれは英語教育に関する書物をもう9冊も
世に送り出しているのだ。


村の経済高揚のためにガルゴゴンド村を観光村にする戦略は、誰もが思いつくことだ。な
にしろチャンディボロブドゥルという歴史遺産を見るために世界中から観光客がやってく
るのだから。ガルゴゴンドが観光村になれば、村を訪れる客の半分は外国人になるかもし
れない。

観光ビジネスを行う村人が観光客と意思疎通できないなら、何をしていることかわからな
い。だから観光村にする以前に、英語村にするステップを踏むべきだ。多少とも英語に慣
れて、さらにアントレプルヌールについても勉強すれば、村人たちは観光関連ビジネスを
行って収入を増やすことができる。

ハニさんは1998年に英語教室を開いた。「容易に、スピーディに、楽しみながら学ぶ
英語」がモットーで、教育メソッドはかれが独自に考え出したものが使われている。村人
はその学校で、無料で英語を学ぶことができる。

「村民のほとんどは天水農業を行っている。だから乾季になると、収入の道はきわめて困
難になる。だからかれらに『英語を勉強しよう』と誘った。はじめはたいていみんな、拒
否した。でも少しずつ生徒は増えて行った。」[ 続く ]