「ナシゴレン(2)」(2018年02月27日)

日本語訳はおおよそ、こんなところ

「ナシゴレンをちょうだい」

インドネシアから着いたとき、
オランダがこんな寒いところだなんて、思ってもみなかった
一番ひどいのは食べ物。旅行中よりもっとひどいんだから
ジャガイモ・肉・野菜・砂糖がご飯の上に

(Chorus)
目玉焼きの載ったナシゴレンをちょうだい
サンバルとクルプッと、それからおいしいビールを一杯
目玉焼きの載ったナシゴレンをちょうだい
サンバルとクルプッと、それからおいしいビールを一杯

ロントンもサテバビもなし、辛みもなし
トラシもスルンデンもバンデンもタフプティスもなし
クエラピス・オンデオンデ・シンコン・バパウもなし
もち米なし、グラジャワなし、だからわたしは言うの

(Chorus)

でもわたしはもう慣れた。キャベツにサヤインゲン
ヤシの果肉とミルク入りのフッツポット、エンダイブ入りスタンポット
スプライチェスにエルチス入りスープ
でもそんなものよりご飯が一番、だからわたしは言うの

(Chorus)

少女期までスラバヤに住んでいたオランダ系の女性が作って1979年に発表した軽快で
楽しい「ナシゴレンをちょうだい」というポップソングがこれ。
1957年にインドネシアがパプアをオランダから手に入れるために行ったトリコラ作戦
で、かの女の一家もインドネシアから離れざるを得なくなり、当時まだ14歳だったかの
女が、気楽で、伸び伸びして、大らかな熱帯暮らしからヨーロッパ社会に適応せざるを得
なくなった時の心情がその歌詞に込められているように感じられる。

その実態は、ヨーロッパ人の家庭の子供なんだから、という先入観からは大外れであり、
この種の精神傾向はオランダ東インド文学の中に頻繁に見受けることができる。歴代の家
系のどこかにプリブミの血が混じり、何代にもわたって受け継がれてきた東インド文化の
混じり込んだ生活習慣がインド(オランダ語Indo-Europeaanの省略形)であるかれらをし
て、生粋のオランダ人との間に埋めきれない溝を感じさせるのである。[ 続く ]