「パサルクナリ(前)」(2018年03月05日)

ジャカルタで照明器具を探すなら、まず最初に名前が挙がるのがパサルクナリ(Pasar 
Kenari)だろう。場所は中央ジャカルタ市スネン郡クナリ町にあり、その町名がパサルに
冠せられた。サレンバラヤ通り(Jl Salemba Raya)添いだから探しやすく、行きやすい。
道路の西側でインドネシア大学サレンバキャンパスの北方にあるパサルクナリは都営企業
PD Pasar Jayaが興したもので、1970年代に自然発生的に始まった市を行政が恒久化
したものだ。

70年代にカキリマ商人たちが電気器具やサニタリー製品を持ってやってくると、その土
地に仮設売場を建てて商売を始めた。消費者が集まるようになると、売り手の人間も増加
する。こうして市場として発展したのを市行政が取り込んだということだ。

ところが1995年に民間企業がその南側に市場を建設してテナントを集めたために、そ
の両者は、lamaとbaruの形容詞で区別されるようになった。

パサルクナリバルが購買客を引き寄せたことから、パサルクナリラマの商人たちの中に電
気部品や付属品類の取り扱いに注力する者が増え、特色が分化するできごとも起こってい
る。

パサルクナリラマは2階建て、パサルクナリバルは4階建てだが、パサルクナリバルもに
ぎやかなのは2階までで、主要扱い商品にはたいした違いがない。照明器具、スイッチ類、
電線、配電パネルなど、建物の建設の際に必要とされる電気関連の品物が多種多彩に集ま
っていると言える。更に、そういう需要を抱いてやってくる購買客が「あれも買わなけれ
ば・・」と思っている商品を扱う店もそこに店開きする。扉や窓の鍵類や把手、窓用シー
ルド、壁紙、木製の床、はては家具までもが参入した。

その傾向は、パサルクナリからサレンバラヤ通りを隔てて向こう側に1998年にオープ
ンした店舗ビル「プラザクナリマス(Plaza Kenari Mas)」で一層顕著に見ることができる。
そこでは、発電機からコンプレッサー、温水器、ジャワー設備など、あらゆるものが売ら
れている。

多少の価格差よりも、エアコン完備でモールに似た雰囲気のショッピングを希望する消費
者はプラザに向かうが、価格比較を重要視する消費者は暑くて人いきれの激しいパサルバ
ルとプラザを股にかけることになる。

インドネシアのあらゆる店舗ビルと同じように、パサルの売場やプラザのテナントは限ら
れた資本で商品ストックを持つため、同じブランドの同じ型番であろうとも仕入れ時期が
異なり、また仕入れルートが違うことによるコスト差があるのが普通で、必然的に販売価
格も異なってくる。同一パサル、同一プラザの一階の店と二階の店で同じ商品の値段が違
っているほうが、インドネシアでは当たり前なのである。そういう市場の特性がインドネ
シアの消費者に対して、価格に対する鋭敏さを養う傾向を持つようになるのである。それ
はつまり、ごみごみしたパサルの売場で買う商品が、快適なプラザに入っている店で買う
のより廉いということを必ずしも保証しないということを意味している。[ 続く ]