「ナシゴレン(終)」(2018年03月09日)

そのロントンをもっと?大型にして、竹筒に入れて火で焼くという、野趣満点の飯がインド
ネシアの各地にある。このルマン(lemang)と呼ばれる料理は、もち米が使われ、また水で
なくココナツミルクが混ぜられるから、それを飯と思えないひとがいるかもしれないが、
ルンダンや他のおかずと一緒に味わってみるのも悪くあるまい。作り方はこうだ。

もち米を洗ってから4時間ほど水に浸しておく。水を切って、塩とココナツミルクを混ぜ
る。竹の一節を切り取ったものを外も中もよく洗浄する。節の残っている側を底にし、口
が開いている側を上にして、その中にバナナの葉を円筒状にして底まで差し込む。バナナ
の葉の端が竹筒の外に少し出るようにしておく。

バナナ葉の筒の中にもち米を竹筒の長さの4分の3くらいまで入れてから、バナナの葉の
口を閉める。熾火を作り、竹筒は口を上にして熾火の上に斜めに立てかける。熾火は十分
熱いものにすること。竹筒はときどき回転させて火が全体に行き渡るようにする。

竹筒の中身が煮えたら、熾火から離して食べごろの熱さまで冷ます。温かくなったところ
で竹を割り、バナナの葉を開いて適切な長さに切り、みんなでルマンを賞味する。

甘いものやドリアンのようなフルーツと一緒におやつとして食べてもよいし、あるいはル
ンダンや魚料理と一緒に食事として食べてもよい。

ルマンはジャワ語で「焼く」を意味しているそうだから、これもナシバカルのひとつと言
えそうだ。全国各地にあるこの料理は昔、地方によってはもち米でなく普通のコメが使わ
れていたらしい。1864年ごろに英国植民地政府が、マラヤ半島で地元民がそのように
してコメを食べていることを記述した報告を残している。


もち米と言えば、インドネシアの食べ物の中にも餅がある。中国や日本の餅とよく似てい
るが、インドネシアらしい違いがある。ウリ(uli)と呼ばれているその餅の作り方はこう
だ。

もち米をよく洗って6時間ほど水に浸し、蒸し器に入れてヤシの果肉のおろしたものを上
にかける。半熟まで蒸されたら、それを容器に移して塩を混ぜ、よくかきまぜてから、ま
た蒸し器で蒸す。

蒸しあがったら容器に移して、まだ熱いうちに粒粒をつぶす。ペースト状になればできあ
がり。

このウリはオンチョムや砂糖、煎ったヤシの果肉おろしなどと一緒に食べる。あるいはシ
ロップを塗ったり、甘くしたヤシの果肉を載せて、焼いて食べることもする。ジャカルタ
では、パサルの片隅でウリバカルを焼いて売っている物売りにときどき出くわすことがあ
る。

ブタウィではタペウリと称して、タペクタン(tape ketan もち米を発酵させたもの)と
ウリを一緒に食べる。これはブタウィ文化の産物のひとつだとする意見もあり、ジャカル
タに住んでいるころは確かによく口にしたものだが、それが定説となっているかどうかは
わからない。

日本のように搗くプロセスがないので、ウリには日本人が期待する餅特有のあの粘り気が
ないのが残念と言えば残念だ。[ 完 ]