「前払い携帯電話番号再登録のリスク」(2018年03月12日)

2005年から十数年かかって、政府はやっと念願のプリペイド携帯電話番号利用者の正
確な身元データを確立することができた。これにはもちろん、国民のアイデンティティ登
録システムの完璧さの向上が大きく関わっており、加えて電話通信オペレータの非協力姿
勢も長年の依怙地さが蝕まれて諦めの境地に達したのではないかという雰囲気が感じられ
る。あるいは、現政権の担当高官の説得が功を奏したのかもしれない。

18年2月28日24時を再登録期限とするという日程計画が謳われ、それまでに再登録
の行われなかった番号は即時発信不能にされ、4月末日まで受信だけは可能でも5月1日
からは全面ブロックされると言われていたにもかかわらず、3月1日以後も再登録は受付
が継続し、3月5日午前8時25分時点での再登録総数は323、129,315番号で、
2月28日昼頃の総数3億5百万から2千万近く増加した。わずか半日で2千万番号の追
加というのは、ちょっと考えにくい話ではないだろうか。

実は、インドネシアンメンタリティを踏まえて見るなら、上の表現が示しているものの見
方は正確でないことがわかる。発信ブロック日程、全面ブロック日程に「それまでに再登
録がなされないなら」という条件が添えられており、つまり4月末日まで既に持っている
SIMカードが無効にされることはない、というのがその意味しているところなのだとい
う、行間を読む習慣の有無がそこに関わってきているのかもしれない。

期限と言う言葉に引きずられて悲観的な考えを持っていた外国人には、だったら2月28
日24時を再登録期限という言葉で呼んだのはなぜかという疑問が湧くに違いない。それ
がきっと非インドネシアンメンタリティということなのだろう。

プリペイド電話番号利用者に国民アイデンティティ登録システムのひもをつけることが今
回行われた内容であり、今後もそれが継続される。だが政府通信情報省の仕事がそのフェ
ーズだけで終わると思ったら大間違いなのだ。

政府はまず、3億5百万にしろ、3億2千3百万にしろ、再登録が成功したとされている
番号の検証を計画している。各通信オペレータの顧客管理上では、ひもが付いた電話番号
とひもがつかなかった電話番号が併存しているわけだが、その内容が正しいという保証を
政府は自ら手にしなければならない。加えて、そのひもが付かなかった電話番号を確実に
ボツにさせる仕事も控えている。その作業は18年5月に完了させる計画であり、そのプ
ロセスを経ない間は正確な有効プリペイド電話番号の数が決まらない。

このプロジェクトにはオペレータとレギュレータ間の明白な利害対立が存在しており、オ
ペレータがこれまで示してきた非協力姿勢を思い出すなら、政府がその処理の監督をない
がしろにできないのも当然の帰結となる。


その次に懸念されるのが、オペレータ不良従業員が行う電話番号利用者の個人アイデンテ
ィティ漏洩だ。

これまで海よりも深く山よりも高いたくさんの詐欺事件やゴミSMSが放置されてきたの
を取り締まることがこのプロジェクトの目的のひとつであり、電話番号オーナーの身元が
確実にわかるようにすれば電話を使っての反社会的行為を働く人間をすぐに捕まえること
ができるようになる。

各電話オペレータには、電話番号から政府が持っている国民アイデンティティデータの内
容を知るためのアプリが支給されたため、オペレータレベルで顧客からの苦情に対応する
ことができるようになるわけだが、個人データ売買は暗黒世界の常識であり、法規がいく
ら作られていようがインドネシアは昔からその王国のひとつという名をほしいままにして
きた。

住民基本番号(NIK)よりも家族登録書(KK)の内容明細の方が悪事への使い道は多
様であるらしく、最近はKKの内容が本人の知らない間にネット上で出回っているという
事件が頻発するようになっている。特に母親の名前が詐欺の小道具に使われるケースが増
加しているらしく、通信オペレータの不良従業員は宝の山に入ったようなものと言えそう
だ。