「ウブッの旅(前)」(2018年05月16日)

バリ州ギアニャル県ウブッ(Ubud)の町は、グラライ空港(Bandara I Gusti Ngurah Rai)か
らおよそ1時間の距離。森・水田・プラ・美術館がカフェやレストラン、そして商店の合
間に散らばっている。町中には、外国人観光客と国内観光客が入り乱れ、混じり合い、落
ち着いた環境の中に独特の雰囲気を醸し出している。

18年4月中旬の週末、コンパス紙記者は一泊二日の旅を楽しんだ。

2018年4月13日
13時: モンキーフォレスト
マンダラスチウナラワナ(Mandala Suci Wenara Wana)別名モンキーフォレストに一歩足
を踏み入れると、摂氏32℃の気温が瞬時に何度か下がった思いがした。
森林の緑蔭と尾の長いサルたちが来訪者を迎えてくれる。
この森の中にはヒンドゥ寺院プラダルムアグンパダントゥガル(Pura Dalem Agung Pa-
dangtegal)がある。そう、ここは聖地なのだ。何千匹ものサルが、聖地の周辺に住む人間
と平和に共存している。
観光客はサルたちの生態を見に、ここへやってくる。バナナや芋を食べる姿、群れをなし
て座り、ノミを獲り、木に登ったり、寝そべったり。来訪者は入り口付近でバナナを買う。
するとほどなく、サルたちがバナナをくれと言う顔で集まってくる。

15時: ネカ美術館
ウブッは美術館の町だ。そのひとつがラヤサンギガン通り(Jl. Raya Sanggingan)にあるネ
カ美術館。緑あふれる広い前庭とバリ様式の建物が訪問者を迎えてくれる。
ここはネカ・ステジャ氏(現78歳)が1982年に開いたもので、かれが1960年代
から収集した絵画・彫刻・バリ王家の宝物などが展示されている。ここはしばしば芸術関
連諸活動の舞台としても使われている。
中にはいくつかの棟があってテーマ別に展示品が集められ、更にルンパッ(I Gusti Nyoman 
Lempad)館やアリ・スミット(Arie Smit)館などの別棟が設けられてかれら巨匠の作品を集
中的に堪能できるようになっている。
バリを愛しバリに留まって当時のバリの美をキャンバスに塗りこめたそれらの作品は、ネ
カ氏にとってたいへん愛しいものであるに違いないだろう。

17時: チャンプハンの丘
チャンプハンの丘(Bukit Campuhan)に足跡を残すのは、夕方がベスト。太陽が沈みかか
るころ、丘の尾根を縦走する道は観光客でにぎわう。写真を撮るひと、散歩するひと、ス
ポーツするひと。
ここへ来るのは簡単だ。野草の茂る野原の中を貫通するブロックを敷き詰めたおよそ2キ
ロの登り道を、徒歩で進むだけ。登り詰めれば、道の両側が谷になっている尾根の一本道
が待ち受けている。そこにはパームの木が一本だけ生えている。
目の届く限り、大自然に抱かれた水田・森林・村のたたずまい。吹き渡る夕暮れの風がロ
マンを掻き立てる。一日の終わりを象徴する紫色の空を置き土産に、太陽はゆっくりと西
の果てへ滑り落ちて行く。[ 続く ]