「ジャカルタっ子はプライド(前)」(2018年07月05日) 何年か前までは、ルバラン帰省逆流者が故郷の親戚や知人に頼まれてお上りさんをジャカ ルタや大都市に連れて来るケースが一般的だった。しかしジャカルタについては、その傾 向が下降している。 「都会へ出れば暮らしは何とかなるだろう。」という楽観論で動いていたメカニズムは、 貧困層の人口増大とスラム地区拡大というリスクを行政にもたらしている。かつては行政 側がお上りさんを減らそうと躍起になっていたが、最近は帰省逆流者の自覚が高まったよ うで、楽観論には簡単に乗らなくなっているという話だ。 ジャカルタの人口はもう目いっぱいなのだから、特別に高い技能を持っていないなら何事 もそう簡単にはいかない、という理解が深まっているらしい。その一方で、もう何年もジ ャカルタに定住したかつてのお上りさんたちは、こよなくジャカルタを愛している風情だ。 これはエゴイズムなのだろうか? 確かに、首都ジャカルタの生活インフラレベルに匹敵する場所は他にない。公共交通機関 も有り余るほど存在していて都内たいていの場所に容易に到達でき、はたまた賃金を得る ための仕事もたくさんあって、フォーマルセクターの仕事すら間口が広い。ジャカルタの フォーマルセクター就労者は69%おり、全国平均42%をはるかに凌駕している。 生活消費物資も豊富でバラエティに富み、出費を惜しまなければ外国で消費していた品物 をジャカルタのどこかで入手することも可能だ。他にも、教育や医療へのアクセスの容易 さや層の厚さという特長がある。 一方、どの都会にも弱点はある。都市計画専門家会が2017年に行った住みやすい都市 評価でジャカルタは対象26都市中の第15位だった。「それでもジャカルタがいい」と 言うのは、首都という政治経済の国内最高峰に自分が関わっていることへのプライドが混 じっていることも否定できないにちがいない。 2018年5月26〜27日の二日間、ジャボデタベッ住民448人にコンパス紙R&D が行ったアンケート調査では、ジャカルタでの生活が快適であると答えたひとは7割に上 った。激しい交通渋滞、バンジル、犯罪多発といった実態を踏まえた上での感想だ。 [ 続く ]