「アンチ中国感情は政治ツール(2)」(2018年07月26日)

2016年末のサイフル・ムジャニ、リサーチ&コンサルティング調査は、世の中でもっ
とも嫌われている集団が5つあることを浮き彫りにした。イスラム国(ISIS)25.
5%、LGBT16.6%、共産主義11.8%、ユダヤ5.0%。中国に対するネガテ
ィブ感情は0.8%しかない。2001年から2016年までの期間、宗教マイノリティ
(カソリック・プロテスタント)と中国人へのネガティブ感情は安定している。アンチ共
産主義感情に顕著な低下が見られ、2002年の59%から15年後の2016年には1
1.8%になっている。その現象は、アンチ中国アンチ共産主義感情の育成が支持基盤と
しての大衆確保のためという政治要因と政治エリートによる創造を決定要因にしているこ
とを示している。

< 単眼視はできない >
レオ・スルヤダルマは中国との関係における華人社会の姿勢を三つのパースペクティブの
中でマッピングした。ひとつは中国との政治と文化のつながりを育成したいグループ、二
つ目は中国との文化的つながりを維持したいだけのグループ、三つ目は父祖の地との政治
的文化的絆を断ち切るべく努めているグループ。しかし第一グループはインドネシアに基
盤を持っていない。

1945年7月11日に独立準備調査委員会総会でのスピーチで1932年に設立された
インドネシア中華党党首のリム・クンヒアンは、作成中の憲法の中にインドネシアで生ま
れた華人がインドネシア国籍者であると言明されるよう強く主張した。この政党は華人プ
ラナカン層のナショナリズム振興者であり、インドネシアの独立を支持していた。(スル
ヤディナタ、2005:119)

カレン・ストラスラーによれば、独立インドネシアの民族形成プロセスにおける華人プラ
ナカンの関与は人種を超越した協力関係を生み出し、この民族の基礎構造にコスモポリタ
ニズムの根を植え付けた。(ヘルヤント、2018:227)

華人プラナカンの位置付けは、アラブ・インド・日本の現地化した子孫と同一である。オ
ルバ政権の弾圧政治は、共産党独裁の中国を政治センターの一頂点に持ち上げて単眼視的
に中華アイデンティティを凍結した。オルバレジームが打ち込んだアンチ共産主義プロパ
ガンダはレジームが幕を閉じるまでアンチ中華政策の中に注ぎ込まれた。

華人が受け入れられ、レーシズム攻撃から免れられるようになるべく、華人有力者層が提
案する解決案はたくさんある。ユヌス・ヤッヤ(ラウ・チュアント)の言うトータル融合
もそのひとつだ。イスラム教がプリブミのマジョリティ宗教であることを考えれば、華人
社会がイスラム化することで華人は受け入れらるようになる。宗教上の連帯感が人種イシ
ューを埋没させるのである。ハリー・チャン・シララヒはインドネシア民族内に華人が包
含されることについて、複合性を持つ民族基盤を考えるなら、きわめて妥当なことがらだ
と述べている。[ 続く ]