「不倫罪(前)」(2018年08月23日) インドネシアで不倫は刑事罰の対象になる。イスラム教が罪悪としているため、社会規範 の上から反社会的人間としての制裁を受けるということに加えて、刑法典にも不倫に関す る条項があって、不倫が刑法犯罪とされている。誤解してならないのは、刑法典を作った のはオランダ植民地政庁であり、オランダ人や非ムスリム外国人ならびにプリブミ層に適 用される一般法として編成されたもので、イスラム法とは何の関係もないことだ。 妻を四人まで持てるというイスラム法は一夫四婦制という原理で理解されるべきものであ り、そこで行われる婚姻の法的性格は一夫一婦制と変わらない。要するに法律と社会が公 認している正式な妻が最大四人いるということなのであり、第二妻以降は「めかけ」と同 じということでは決してない。そうであるからこそ、姦通・密通という行為がイスラム法 で禁止されているのである。 刑法典第284条にはこう定められている。 (1)次の行為は最長9カ月の刑事罰入獄の対象になる。 1. a. 一夫一婦制原則が自分に適用されることを知っている妻帯男性が姦通を犯した場合 1. b. 一夫一婦制原則が自分に適用されることを知っている夫帯女性が姦通を犯した場合 2. a. 姦通者が1.対象者であることを知りつつ、その姦通に関与した男性 2. b. 姦通者が1.対象者であることを知りつつ、その姦通に関与した女性 (2)夫または妻に名誉を汚された伴侶がその妻または夫を告訴し、その妻/夫に一夫一 婦制原則が適用されることが判明した場合、三カ月以内にその告訴に基づいて離婚請求も しくは同衾同席破棄請求がなされる場合は、刑事罰を適用しない。 (3)この告訴に、第72・73・75条は適用されない。 (4)法廷での審理が開始される前であれば、告訴を取り下げることができる。 (5)一夫一婦制原則が適用される夫婦の間で、離婚による夫婦関係の消滅あるいは同衾 同席破棄判決が確定されていない場合の告訴には対応がなされない。 この刑法条文を盾にして他人を強請る輩がいる。 B33歳は恋人M20歳と18年8月11日23時ごろ、北ジャカルタ市西クラパガディ ンのプルタミナ第3橋に近い暗がりの中で、心地よい逢瀬を愉しんでいた。Bのオートバ イでやってきたふたりは、恋の情熱に駆られて片時も離れられないでいる。[ 続く ]