「雑踏の中の痴漢」(2018年08月29日)

18年8月26日(日)夕方、西ジャカルタ市南パルメラ通りをDさん(女性23歳)は
四人の女性仲間たちと歩いていた。五人が進んで行く前方の道路脇にオートバイにまたが
った男性がひとり、たたずんでいる。道路脇は多くの通行人が右往左往しており、決して
寂しい場所ではない。雑踏の語感が示すほどの混雑でないものの、雑踏の語義から外れて
いるほどでもない。

五人がオートバイのすぐそばまで来たとき、五人のだれひとりとして予想もしていなかっ
たことが起こった。男はいきなり手を伸ばしてDさんの胸をもみしだくと、即座にオート
バイを発進させて交通繁華な往来の中に乗り入れたのだ。被害を受けたDさんの心は、言
葉で言い尽くせるものではない。

Dさんがその瞬間に挙げた悲鳴を聞いて、近くの事務所の警備に就いていた警備員が飛ん
できたが、痴漢オートバイは既に遠くの距離に離れていた。

警備員は五人の女性に事情を尋ね、被害を受けたDさんに警察に届け出るよう勧めた。し
かしDさんは、暗い色のフルフェースヘルメットをかぶり、黒いジャケットに身を包んで
いた痴漢に関する人定情報があまりにも薄弱であり、その逮捕は不可能と考えて、警察に
届け出るのをやめた。


公共スペースにおけるこの種のセクハラ行為は、首都ジャカルタの中でも頻繁に起こって
いる。女性を対等の人間と見なさずにレイプに走るあの感覚と根をひとつにするものだ。
通学のためにオートバイオジェッに乗せた小学生女児の性器に、運転手が走行中に手を伸
ばすようなことすら起こるのである。

女性保護国家コミッション副長官は今回の事件について、被害者が勇気を持って警察に届
け出ることが、このような社会風潮を正すきっかけになるのだ、とコメントした。

公共スペースで傍若無人に女性の身体に手を伸ばす男は、被害者が恥を感じて自分の秘密
の中にその事件を封じ込めるか、あるいは家族のだれかに話しても、世間体を考えて一家
の秘密の中に封じ込められるものと多寡をくくっている。それが警察沙汰になれば、そん
な男たちは怖くなって痴漢行為をしなくなる、というのが副長官の論旨だ。

Dさんの事件は、かの女が勤めている報道機関が支援を与えてこの事件を警察に届け出さ
せ、捜査が開始された。警察は事件現場の監視カメラ画像チェックを開始している。

法医学心理学者は、公共スペースにおけるセクハラ行為は明るみに出るものよりも水面下
に隠されてしまうものが圧倒的に多いのが実情であり、そのような対応が続けられるかぎ
り、この種の事件はなくならない、とコメントしている。