「暴力体質を断つ(後)」(2018年10月31日)

< 暴力の根を断つ >
ブルデューの「資本・フィールド・気質」弁証法を借りるなら、暴力行為を断つためには
暴力行為のその三つの根をターゲットにしなければならない。ひとつは、社会・経済・文
化・象徴の四資本にある較差を、無くすことはできないにしてもミニマイズしなければな
らない。社会的資本である交友ネットワークの大小の差、経済的資本である資金の量、文
化的資本である教育レベルの高低、象徴的資本である評判や評価の違いが世の中に絶えな
い暴力の火に油を注いでいるのである。暴力行為を断つ努力の中で、それら世の中にある
不均等要素にもっと目が向けられるよう、われわれは意識を持たなければならない。

第二は、暴力行為が発生しているフィールドを統合的に把握しなければならないことだ。
暴力行為のひとつひとつは、異なる社会・経済・文化空間の中で起こっている。フィール
ドごとのルールや感触はそれぞれ違う。(ブルデュー、1972年)

サッカーチームサポーター暴力行為事件におけるサポーターのフィールド感触はプサント
レンの教育フィールドや国会議事堂のフィールドと異なっている。文化的・非法曹的・非
構造的アプローチは罰や制裁を謳う公式的・法的・構造的なものに比べて、サッカー競技
場での暴力事件の再発を防止するために取られるべき妥当な対策である。

第三は、暴力行為気質の連鎖を断ち切ることだ。サッカーチームサポーター暴力事件に戻
って、このフィールドにおける暴力ナレーションは種々サポーター組織名のニックネーム
(ヴァイキング、ブルーパンサー)、掛け声(度胸一つ、勇気)、組織ロゴ(クマヨラン
の虎、狂い獅子)、イエール(心ひとつに命ひとつ)、唄や振り付け、ソスメドのサッカ
ーチームサポーター組織が書き込むファナティックなツイートなどから読み取れる深層意
識の表われと見ることもできる。

サッカーチームサポーター組織と会員が多分無意識に構築した暴力ナレーションは今すぐ
終わりにさせなければならない。一般論として、家族・学校・社会・マスメディアが暴力
行為気質の連鎖断絶に重要な役割を果たすことができるだろう。

真の暴力行為の根は暴力フィールドそれ自体の中にだけあるものではない。暴力行為はよ
り広範で複雑な資本・フィールド・気質の弁証法的計算の積層の中にある。最近また発生
したサッカーチームサポーター暴力事件のような種々の暴力事件でいくつかの側だけを悪
者にする傾向を持つ部分的アプローチでは、決して問題解決に至らないだろう。

暴力トラジェディを防止するための統合的アプローチが必要とされている。サッカーフィ
ールドでのみならず、さまざまな他の生活フィールドでも同じように。[ 完 ]