「多様性を構成する閉鎖的同質集団(後)」(2018年12月19日)

現代化への適応を容易にするベーシックな性格と技能を受け継いだグループがある。かれ
らはそこから素早くメリットを引出す。反対に進歩発展がうまく行かず、取り残されるグ
ループもある。たとえば華人やミナン人はモダン経済のチャンスを素早く取り込み、島々
や国境を越えたネットワーク、あるいはより開けた伝統や知識の資本に支えられて、奥地
ダヤッ人やジャワ農民よりも長足の発展を遂げるようなことが起こりがちだ。

この文化的歴史的な事情は往々にして競争状態を激化させ、それどころか緊張状態を招き
寄せることになる。そんな事態に立ち至り、慣習すら力及ばなくなったとき、的を射た統
合的政策で最悪の事態を回避させるための政府の務めがそこに存在する。しかし言うは易
くだ。あらゆる争いごとが容易に溶け去るわけではない。

この社会変革の混乱の中で頻繁に起こるのは、インドネシアの諸種族の悲劇に目を開かず、
民族のすべてに繁栄をもたらすという国家生活の本質を忘れた政治家の姿勢だ。かれらは
支配権独占のために特定グループの利益を叫んで角突き合わせるばかりだ。


2019年にインドネシアは総選挙の時期に入る。競争が危険をもたらしている社会経済
状況の真っただ中で角突き合いを包含する宗教言辞が放置されるなら、その総選挙に影を
落としているリスクは想像に余りある。きわめて遺憾なことに、特に移住の流れが古い社
会的宗教的バランスを変えつつあるジャワ島外で、民族の社会的ダイナミズムはその方向
に向かって邁進しているのである。

移住の結果デモグラフィが変化して、外来者が国会・地方議会・地元の政治地図を書き換
えてしまう。しかし冒頭で述べたような集団傾向が移住に付随し、経済ダイナミズムが較
差を発生させるかぎり、宗教政治はたいへん危険である。バリであろうが、パプアや他の
どこであろうが、それは回避されなければならない。

この問題においては、たとえ宗教的スローガンが中道的であろうとも、自己の信奉する宗
教を政治基盤にして立った者がその宗教信奉者の政治舞台における結晶化を草の根レベル
で引き起こすに十分であるという事実を政治家たちは覚るべきだろう。国民の代表者にな
ろうとしている貴顕淑女のみなさんは、そのことを自覚してほしい。あなたがたがパンチ
ャシラ・インドネシア共和国統一国家・ビンネカトゥンガルイカなどのスローガンをキャ
ンペーンの間中叫び続けて民族の一体化を主張しても、あなたがたがこの論説に述べられ
ている社会学メカニズムを理解しない限り、効用は生まれないのだ。アンカラムルカの欲
望を招き寄せてはならない。[ 完 ]