「ロンタルは生命の木(終)」(2018年12月20日)

ムルタトゥリ著の小説マックス・ハフェラール(副題オランダ商社のコーヒー競売)の中
で、アムステルダムのコーヒー商人が東インドの見聞を物語る中に、ロテはティモール島
南部にある国で、住民は食事をしない、という文が見つかる。

米国人人類学者ジェームス・フォックス氏も、ロテとサウの調査を行った後、その住民は
食べ物を飲む世界唯一の人種だという表現を使っている。1965年にインドネシア全土
を食糧危機が襲ったとき、ロテはそれを免れた。ロンタルの存在と、それが築き上げてき
た生活習慣のおかげだ。


ロテ一帯の気象条件は決してよいものでない。雨季は都市によって大きくぶれ、乾季は長
期化し、暴風雨が襲う。土地は水分の浸透が難しく、水を貯える能力が小さいために、乾
季は土がカラカラに乾いてしまう。年間降水量は1,165ミリだが、都市によってはそ
れよりも少ない。雨が少ないために日中の暑熱は強烈で、土はひび割れを起こし、木は立
ち枯れて残骸に変わる。

昔、ニラ生産期が終わると、ひとびとは得られた恵みを感謝して祭を行った。神体を担い
で練り歩き、ササンドが祝いを華やかなものにした。

ロテの民衆のロンタル利用は、昔ながらの伝統的な規模と方式による個人需要を満たすも
のでしかない。ロンタルから得られるものを商業利益に結びつけることが行われてもよい
のではないかという意見が、調査などの学術活動でロテに関わりを持った外国人学者の口
から聞こえてくることがある。ロテ民衆の窮状を見かねてのアドバイスにちがいないのだ
ろうが、国内の現状はその方向へのオリエンテーションにあまり迫力がなく、結局は地元
民にその意欲を促して創造性を踏まえたビジネスの開発を期待するしかないのだろうが、
国内経済界にそのオリエンテーションが希薄であるなら、必要な資金が転がり出てくる可
能性は小さい。

しょせん、生きることの幸不幸を何をもって測るかという命題が優先されることになるの
かもしれない。

ちなみに、ロテンダオ県庁データによれば、ロンタルの生育面積は16,606Ha、2
016年のニラ生産は929.8トン。ちなみにロテンダオ県の住民人口は143,15
5人で、総面積1,280平方キロに居住している。[ 完 ]