「キリストの名はキリストにあらず(前)」(2019年01月28日) ライター: 神学学士、倫理学修士、サムスディン・ブルリアン ソース: 2018年12月22日付けコンパス紙 "Yesus Almasih" そのユダヤ人の男は紀元前4年に生まれ、30歳のときローマ人支配者によって磔刑に処 せられて死んだ。インドネシアでかれは普通、Yesus, Jesus, あるいはIsaという名で知 られている。さらにかれの称号にはKristus, Mesias, Almasihなどがある。 YesusやJesusの語源はギリシャ語のIesousだった。キリスト教の聖書がギリシャ語で書か れたとはいえ、地球上の歴史を通して紛争のリスクを最大限に抱え続けているあの地域に おいて、Yesusの時代の日常生活に使われていたのはアラム語であり、宗教言語はヘブラ イ語だった。だからアラム語におけるYesusの呼称はIsho' であり、ヘブライ語ではYe- shua' あるいはYehoshua' だった可能性が高い。通常われわれが知っているそれらの名の 異種は、YosuaやYusakだ。 それらの名称にあるYe-・Yeho-・I-などの要素は、ユダヤ人にとっての神聖なる四文字 YHWH、つまりかれらの神の名、の一部分だ。あまりにも神聖であったがために、信徒 たちはそれを声に出すことを畏れた。トーラの書の根幹部分をなす十戒の一項には「汝ら のAllahであるYHWHの名前をみだりに唱えること」への禁止が記されている。たいて いの人間にとって、自分の行為が「みだり」に該当するのかどうかを判断するのが困難だ ったために、イスラエル人は最終的に確実な方法を選択した。口をつぐんだのだ。過ちが 怖い。今日に至るまで、その四文字に出会うたびにかれらは別の語に読み替えている。 Adonai (Tuhan お方)、Ha-Shem (Sang Nama お名前)、Ha-Kadosh (Sang Kudus 神聖なる 者) 等々で。 何世紀もに渡って音にされなかったそれらの文字がもたらした帰結は明らかだ。今や、そ の四文字がもともとどのように発音されていたのかを知っている人間はもういない。「文 字があるのに読み方がわからないだって?そんな馬鹿な・・・」 ヘブライ語はアラブ語と同様にセミ語族に属しており、母音の文字を持たないのだ。読み 方は文脈状況と文法に依存する。表記上の語義と元々の文脈のすべてが失われたら、音を 再現する手掛かりは残されていない。ここ2百年くらいの間にやっと、信仰心の深くない 現代専門家たちが畏怖心もなく、昔その語はYAHWEHと読んだのだ、と提案した。小 辞-shua'や-sho'は安全無事を意味している。つまりYHWH (TUHAN) を意味するYesus の字義は、セキュリティ、安全無難である。[ 続く ]