「クローブ原産地は北マルク(2)」(2019年02月15日) 「クローブ原産地は北マルク(2)」(2019年2月15日) その一方で、島々をめぐる海域にパトロール船を巡回させ、接近してくる密買船らしきも のを容赦なく攻撃した。1652年にVOCが北マルクで始めたその方針はホンギトッテ ン(hongi tochten)と呼ばれた。ホンギは北マルク地方固有の船の名称らしい。つまり地 元北マルクの船を使ってVOC戦闘部隊が周辺海域をパトロールするありさまを表現した 言葉だ。 テルナーテ島ガマラマ火山の中腹、海抜500〜550メートルほどの位置にあるハゲ (Hange)地区に、クローブの巨木が立っている。ふたりの大人が両手を広げて抱えても、 互いの手に触れることができない。幹の円周は320センチあった。周辺に生えているさ まざまな木を見下ろして立っているこのクローブの木は数百年の樹齢を経ている。VOC が見つけていれば、ホンギトッテンに触れて切り倒されていたはずだ。 「VOCはクローブの木を見つけたら届け出るように命じていたが、われわれの先祖は口 をつぐんでこの木を温存した。わたしの曾祖父や村人たちがこれを守ったんだ。誰ひとり、 オランダ人にこのことを知らせる者はいなかった。これはテルナーテのオリジナル種チュ ンケアフォ(cengkeh Afo)の第二世代だ。」マリクルブ村農業グループのリーダー、ハマ ダル・ミンゴさん65歳は語る。 マリクルブの登山口から踏み分け道を徒歩でおよそ1時間、ほとんど30度という傾斜地 を登るのは厳しかった。ガマラマ火山の中腹にあるクローブ農園を往復する地元民たちが 通常通っている道だ。クローブの老木はたいてい、この高さの場所にある。数百年の老木 とはいえ、葉も茂り、頑丈な根はしっかりと巨大な幹を支えており、その生命力はまだま だ旺盛に見える。 この一帯にあるクローブの老木は持ち主がいる。ハマダルさんの義兄弟であるユスマンさ ん49歳とムッタルさん50歳の兄弟で、その木を含む数本の巨木は先祖からの遺産だ。 四代前の先祖アハディさんが18世紀末に植えたものと言われており、次の代のアリフさ んに相続された。アリフさんは1977年に122歳で亡くなっている。アリフさんから はアバヒさんに相続されたそうだ。 その木は樹齢が217年で、その親に当たる第一世代の木は1989年に死んだ。親木は 樹齢3百年超だったとされている。第二世代の木は他にもいくつかあるが、ハゲ地区にあ るこの木が一番古い。[ 続く ]