「嘘は罪じゃない」(2019年02月18日)

南タングラン市スルポンのBSDで珍しいできごとが起こった。

その日白昼、市内交通繁華な大通りをサンタウルスラ学園の方からチアテル方面に向かっ
てやってくるふたり乗りオートバイがあった。乗っている若者男女カップルはヘルメット
をかぶっていない。前方で交通警察が検問しているのに気付いた男は即座にUターンして
逃れようとしたが、その対策を講じていない南タングラン市警ではなかった。

警官のひとりがそのオートバイを止めた。ヘルメットをかぶっていないし、道路逆走まで
したことを指摘して交通違反を宣告し、免許証と自動車書類を示すよう求める。すると男
は、その赤色スクーピーはかの女のもので、自分は自動車書類を持っていないと言い、ヘ
ルメットも家がすぐそばだからかぶらないで出た、と言う。ここまでは特に珍しいことで
はない。日常茶飯のできごとだ。

「じゃあ、家に戻って自動車書類を持ってきてください。」と警官が言ったとたん、その
男は荒れ狂い始めた。乗っていた赤色スクーピーを警官の目の前で破壊し始めたのである。
ボディの部分をむしり取り、あるいは折り捨て、ボデイを持ち上げてひっくり返し、ボロ
ボロにした。警官はその行為をただ見守るばかり。

通行人がそのシーンをビデオに撮ってソスメドに流したことで、大きな話題を呼んだ。違
反を咎められてかの女のオートバイに八つ当たりするサイテーの男だというコメントがソ
スメドにあふれた。「たいへんな癇癪持ちだ。警官の眼前でよくあんなことができるもの
だ。」「あんな男を絶対に夫にしちゃいかんよ。」などという諸評に混じって、とあるオ
ンラインオジェッがその気の毒な女性に対し、ひと月間無料でオジェッサービスを提供す
ると宣言したから、またまた諸評が乱れ飛んだ。だが、男の言った話は真実だったのだろ
うか?


アディ・サプトラという名のその男21歳は、違反切符を切られて放免された。ところが、
ナンバープレートB6382 VDL のデータを調べると、持ち主はヌル・イッサンであること
が判明した。真の持ち主に問い合わせをかけたところ、すべての裏が明るみに出た。

ヌルは6カ月前にそのスクーピーをかたにしてDから6百万ルピアを借金した。当然なが
らオートバイとSTNK(自動車番号証明書)はDの手に渡る。借金返済の都合がついた
ヌルは自分のオートバイを取り戻そうとしたが、Dとのコンタクトができなくなっていた。


スクーピーの履歴が判明したため、警察はアディを自宅で逮捕した。アディの自供によれ
ば、そのスクーピーはフェイスブックに出ていたポスティングを見て、知らない者から3
百万ルピアで買ったとのことだった。BPKB(自動車所有者謄本)なしでSTNKだけ
が付いていた。

長い間苦労して貯めた金で買ったオートバイが没収されることにアディは激しく失望し、
癇癪が爆発してあの破壊行為を行ったという説明だったが、どうせ取り上げられるのなら
潰してやろうという精神がそこに働いた可能性はなかっただろか。

オレンジの地色に31番と記された拘置者シャツを着せられたアディは、お騒がせをしま
したと涙ながらに謝罪し、警官に慰められていたが、かれの行為は四つの刑法違反に抵触
する。

詐欺もしくは横領された物品の受領引受(つまり盗品故買だ)、官憲の眼前での証拠品破
壊、他人の所有物破壊などがその罪状であり、最長6年の入獄刑に該当している。またD
も警察の指名手配リストに載った。