「続・男を釣る餌は女(後)」(2019年03月28日)

キジャンイノヴァはまた動き出すと、行方を定めずだらだらと走り続ける。ハナフィの全
身がサンドバッグにされる。ハナフィが男たちにいたぶられ始めると、女の声がまったく
しなくなった。女たちの心は暴力シーンに弱かったということなのだろうか?

男たちはハナフィの持ち物を調べ、スマホとサムスンギャラクシを取り上げた。
「財布はどこだ?」
「財布は持ってないよ。」
「嘘をつけ。ギャラクシを持ってるからには、金持ちのドラ息子にちがいあるめえ。現金
を出すんだよ。」
「そのギャラクシは親戚からのもらい物だ。俺んちは貧乏だ。」

そのうちに陽が落ちて、車は夜の路上を走り続ける。

夜もだいぶ経過して、さんざんに殴りつけられたあげく、ハナフィは衣服を全部脱がされ、
パンツひとつにはだしのままで、眼と口にガムテープ、手と足はひもで縛られて、車の外
に放り出された。

苦労して手を縛っているひもをほどき、ガムテープをはがしたら、ハナフィは自分がジャ
ゴラウィ自動車道のボゴールにある住宅地に近い場所にいることがわかった。

痛む身体をがまんして道路フェンスを越えたハナフィは、近くの住宅の表門を叩いて助け
を求めた。時間は21時を回っていた。その家のひとがすぐに警察を呼んでくれ、ハナフ
ィを乗せたパトカーはボゴール市内の赤十字病院救急治療室に向かった。

左目は充血し、こめかみは腫れ上がっている。口は切れて出血し、左腕があまり動かせな
い。そして胸・背・脚に無数の打撲傷。ハナフィはただ自分の非運を嘆くばかりだった。