「人類の女性化は殺しを忌む(終)」(2019年04月04日)

ボゴール県チアンペア郡でその種の男たちというか、少年ふたりが刃物で決闘し、敗者が
死亡する事件が起こった。ふたりは感情に駆られて突発的に刃物で対決したのでなく、自
己の信奉する価値観に従って冷静に果し合いを行ったことを指摘しておきたい。


少年A16歳と少年M13歳は別々の学校に通っている。このふたりは事件の前から互い
に面識があり、しかも接触があったことを地元の大人が証言している。

昨今の大統領選挙キャンペーンにからんでソスメドに時節の話題が絶えないのだが、他人
を見下すことに自己の存在証明を見出す者たちの応酬がそのトピックの中で行われ、ふた
りは互いに相手を罵倒し合い、一方が「オメーはオカマだ。」と書いたことで、書かれた
方が受けて立った。

その種の男たちは自分が男の中の男であることの証明が暴力闘争行動の中でなされるべき
ものと考えており、「男じゃねえ」と言われたらどこへ行き着くかは想像に難くない。そ
してその通りの展開となったのである。オレが男か男じゃねえかは生命を賭けた果し合い
で示してやらあ。


ボゴール県タポス地区のラヤチナンネン通りの少し人家から離れた場所で19時ごろ、ふ
たりは鎌を手にして対決した。鎌を使ったのは決して洒落ではない。インドネシアで鎌は
鉈と同じように、戦闘用刃物として使われている。

そこは道路の両側に水田が広がっている遮蔽物の何もない場所で、街灯の光があまり届か
ないため、四輪や二輪の車両が10分おきくらいに街道を通過するものの、通行者の注意
を引くような状況になっていなかった。Aがよく仲間とつるむコーヒーワルンはそこから
250メートルほど離れている。

ふたりは介添人として仲間を連れて来ていた。Aは三人、Mはふたりで、全員が高校生だ。
Mが高校生であると明言している記事が見つからないのだが、高校生である印象が強く感
じられる文調になっていることだけを述べるに留めておきたい。

後に警察の取調べの中でかれら5人にそれぞれ、どうして仲間が殺し合いをするのを止め
ようとしなかったのかという質問が出されたとき、「他人のことに首を突っ込むのはお互
いに嫌だから。」「下手に割って入れば自分が鎌を受けることになる。」などの返事が戻
って来たそうだ。

鎌での斬り合いが行われて双方あちこちに刃物傷を作ったが、深手はMの右肩とAの頭だ
った。Aは地面に崩れ落ちた。Mは血を流しながらその場を立ち去った。介添人たちはそ
のまま解散した。


地面に倒れているAを見つけたのは、アンコッの運転手をしているAの兄だった。その日
の稼ぎを終えて帰宅するため街道を通りかかった兄が、路傍に行倒れている人間を見つけ
て近寄った。そしてなんとその行倒れが自分の弟であることを知って愕然とした。かれは
弟をアンコッに乗せてローカル病院に担ぎ込んだが、頭の傷が深いことから病院側はチア
ウィの地方総合病院に行くよう指示した。兄はそのとき7千ルピアしか所持していなかっ
たため、地方総合病院へ行くのをやめて弟を家に運んだ。

Aの状態は既に風前の灯火になっており、うわごとを言い続けていたらしい。一夜明ける
と家族が金を工面してからチアウィの病院に運んだものの、完全に手遅れだった。警察は
その日、Mを自宅で逮捕した。

2017年11月にやはりボゴール県で15歳と16歳の少年が決闘を行い、ひとりが死
んだ。事件の詳細はこちらで ↓↓↓
「続不死身の術(後)」(2017年12月01日)
http://indojoho.ciao.jp/2017/1201_3.htm
[ 完 ]