「オールドソロワイン」(2019年04月11日) ジャワのジャムウの中にブラスクンチュル(beras kencur)という強壮飲料がある。胃壁を 強化して食欲増進をもたらすのと、体調をリフレッシュさせる効果があるので、大衆に好 まれている。 クンチュルというのは日本語でバンウコン、学名Kaempferia galanga、英語でaromatic ginger, sand gingerなどと呼ばれるものだ。食用にするのは普通、地下茎で、ブラスク ンチュルの作り方はコメの粉とクンチュルをすりおろしたもの、ショウガをすりおろした もの、タマリンド、ウコンと塩砂糖などと一緒に飲み物にする。スーパーやハイパーマー ケットへ行けば市販されているものが手に入るので、話の種に一度チョバして見るのも面 白いだろう。 このブラスクンチュルが1966年に中部ジャワ州ソロから日本へ輸出された。いや日本 だけでなく、ドイツやフィリピンにもだ。そのときの商品名はなんと、Old Solo Wine と 銘打たれたのだが、輸出先の国でホンモノのワインと思って飲んだひとがいたかどうか・ ・・? 1968年には透明のブラスクンチュルが生産され、ジャカルタのホテルインドネシアで はそれがチェックイン客のウエルカムドリンクに供された。そればかりか、パンナムの機 内でもそれが乗客に供されたそうだ。 当時、中部ジャワの民衆はジャムウを自宅で作るひとも多かった。もちろんジャムウ売り のお姉さん(おばさんかな?)がたくさんのビンを入れた籠を抱えて村々を巡り、売り歩 いていたのもジャワの風物詩だ。 自宅でブラスクンチュルを作る場合は、gandikと呼ばれる潰し台とpipisanというすりこ 木様のもので素材をすりつぶして作っていた。それらの道具は石から作られており、風情 の感じられるものだった。中には金属製の鉢とすりこ木もあったようだが、庶民は一般的 に石製の道具を使ったようだ。