「ソントロヨ(1)」(2019年04月24日) [ I ] 2018年11月7日付けコンパス紙への投書"Sontoloyo"から 拝啓、編集部殿。米国には放牧された牛を監視する牧童という職業があり、コボイ(koboi, cowboyに由来するインドネシア語)と呼ばれています。インドネシアにはアヒルの集団放 牧を誘導する職業があります。昔、その仕事はソントロヨと呼ばれました。 ジャワの田舎では、ソントロヨの職業をsontoloyo angon bebek ilang loro(ソントロヨ、 アヒル使い、二羽失う)という決まり文句で揶揄していました。その決まり文句の意味は、 ソントロヨになった人間が世の期待に沿わないでいい加減な仕事をするために、そのだら しないありさまを皮肉る内容だったのです。 1950年代にわたしの故郷の村では、つぎのようなケースにソントロヨという言葉が使 われていました。 1.砂と赤レンガの粉と石灰を混ぜ合わせる下働きの者がきちんとした仕事をしなかった とき、石工がかれをソントロヨと呼んだ。 2.田植えの際に日雇い農民が整然と苗を植え付けなかったとき、地主が作業者に対して ソントロヨと言った。 コボイの姿とは違って、ソントロヨはヤシの葉で編んだ直径100〜120センチの帽子 をかぶり、長さ140〜160センチの木や竹の棒を手にしてアヒルの群れを行列行進さ せるのです。笛や太鼓がかれらの手慰み物でした。コボイが射撃の名手なら、ソントロヨ は歌やパントゥンがお得意でした。かれらはアヒルを世話しながらそんなことをして自ら を慰めていたのです。 それがわたしの理解しているソントロヨという言葉の意味です。他の意味は多分世間一般 の皆さんがご存知のところでしょう。昨今、ソントロヨという言葉は地方部でさえ、もう あまり聞かれなくなりました。[ 西ジャワ州ボゴール県在住、ワルシト ] [ II ] 2018年12月6日付けコンパス紙への投書"Sontoloyo 1"から ソントロヨが今、人気急上昇中。この言葉は実は、ジャワ人社会で頻繁に使われている日 常交際語で、うんざりした気持ちや驚きを表現したり、友人同士で揶揄し合う場合などに 使われます。 ソントロヨはスペシフィックな意味を持っていないので、適切な別の言葉に置き換えるの が困難です。予想外な事態に直面して、口を衝いて出て来る言葉がこれなのですから。次 のような例文から、言葉のニュアンスを汲み取っていただけると思います。 Sontoloyo, ke mana saja kamu, kenapa baru muncul? Sontoloyo, bikin kaget saja kamu ini. Sontoloyo, ngerjain begini saja sampai berjam-jam. [ 続く ]