「ルバラン帰省は国家行事」(2019年06月07日) インドネシアでルバランと言えば、帰省がその焦点をなす。都会という異郷に出てきて生 活し、一家をなしたひとびとが故郷の両親家族親類縁者や、やはり別の都会に出て一家を なした兄弟たちと懐かしい邂逅を果たすのが、年に一度のその機会なのだ。だからルバラ ン帰省の目的は親睦を深め、旧交を温めるのが昔からの基本だった。そこに旅行とレジャ ーというライフスタイルが新たに勃興してきたことで、ルバランはバリエーションに彩ら れることになった。 2019年5月25〜26日にコンパス紙R&Dが全国16都市の電話帳からランダム抽 出した17歳超の回答者620人から集めたデータは次のようになっている。バンダアチ ェ、メダン、パレンバン、ジャカルタ、バンドン、スマラン、ヨグヤカルタ、スラバヤ、 マラン、デンパサル、ポンティアナッ、サマリンダ、マナド、マカッサル、アンボン、ジ ャヤプラがその16都市。 1.ルバラン帰省の頻度 毎年39.8%、毎年ではない26.9%、帰省しない31.9% 2.帰省の主目的 親睦と旧交83.4%、習慣7.9%、長期休暇だから6.2% 3.頻繁に使う交通機関 自家用四輪車・レンタカー38.9% バス・トラベル17.7% 自家用二輪車・レンタル二輪15.4% 汽車10.6% 飛行機10.4% 船3.9% 4.帰省先 中部ジャワ23.9% スマトラ21.3% 東ジャワ19.0% 西ジャワ15.1% スラウェシ6.3% ヨグヤカルタ4.2% バリ・ヌサトゥンガラ2.8% マルク・パプア2.3% カリマンタン1.4% バンテン0.7% 回答者がすべてムスリムだったかと言うと、決してそうではない。ルバラン帰省をすると 答えたひとのうち16.3%は非ムスリムだった。イドゥルフィトリというイスラムの祝 祭のために故郷で全員が顔を合わせるムスリムとは違って、非ムスリムは宗教上の祝祭と は無関係に故郷に集まるひともいるということなのだ。 そして祝祭を祝った後は、近場のレジャーや、あるいは多少遠い観光地に旅行するひとび とも少なくない。年に一度のこのシーズンに、都会に集まった金が地方部に大量に流れる。 一見非効率に見えるルバラン帰省は、インドネシアの消費経済にとってきわめて重要な現 象であり、同時に都市と村落部の経済平準化の機能を多少なりとも果たしている。政府が 国民のルバラン帰省に大きな関心と支援を与えているのは、単に国民の習慣や祭事への保 護支援という側面だけでなく、国家経済の骨組みのひとつになっているからであることを 忘れてはなるまい。