「スラムでも幸福か?」(2019年06月13日)

ライター: コラムニスト、アグス・ヘルマワン
ソース: 2019年5月26日付けコンパス紙 "Kumuh, tapi Bahagia"

結局は暴動に行き着いた19年5月21日の夜、デモの群衆から離れて路上で靴を売って
いるひとりの男の姿がツイッターに登場した。オーストラリアABCの特派員デビッド・
リプソン氏のツイッターだ。歩道上には数足の靴が整然と並べられ、背景にはデモの群衆
が写っている。
「この人物は暴動のさ中に靴をわたしに売ろうと努めた。ミステル!オンリーワンハンド
レッドサウザンド!」リプソン氏はそう書いた。

この靴売り以外にも、スタルリンstarlingと呼ばれるコーヒーベンダーが何人も、群衆と
治安要員の間を歩き回っている。スタルリンとはStarbucks kelilingのプレセタンだ。そ
こで一旦暴動が起こったならどれほど危険になるかということを、かれらは全く気にかけ
ていない。

最初は穏やかな陳情行動が行われていたタムリン通りの総選挙監督庁本部周辺では、深夜
になって石・ガラス瓶・爆竹・催涙ガス・ゴム弾の飛び交う戦場になった。


カキリマ商人をはじめとする、忍耐強く粘り強い路上ベンダーの特質は、ジャカルタのあ
ちらこちらにカキリマ溜まりをますます増加させている。統制が緩んだことで、以前は秩
序のあった中央ジャカルタ市タナアバンだけでなく、都内のさまざまな地区にカキリマた
ちはますます溢れかえるようになっている。

オンラインオジェッたちもモール・鉄道駅・MRT駅周辺などに集まって客を待ち、結果
的にそこは自動的に路上ベンダー、特に飲食品販売カキリマのたまり場になる。オンライ
ンオジェッ運転者たちは歩道にたむろし、座り込んで世間話に花を咲かせる。そこは歩行
者のための社会施設であるというのに。

既に報道されているように、首都の歩道を占拠している路上ベンダーのありさまは、懸念
を深める一方だ。都内のあちこちにある歩行者のための施設は路上ベンダーに占拠され、
歩行者は仕方なく車道の端を歩いている。

歩道の上で商売しているベンダーたちは、みんながみんな仮の営みを行っているわけでは
ない。場所によっては軽量鉄骨材を使った売場が用意されているところさえある。このよ
うなありさまは、都庁行政がかれらに容認と支持を与えていることを示すもの以外の何者
でもあるまい。

都庁公共事業局長は、路上ベンダーの統制は歩道整備とシンクロさせて行われると述べて
いる。歩道は幅1.5メートル超でなければならず、また歩道上で商うカキリマ商人には
特定の条件が課せられる。

しかしベンダーが歩道上で商売することは、多少でも歩行者のためのスペースを奪うこと
になるだけでなく、新たな問題を引き起こすことにもなるのである。そこへ四輪二輪の車
でやってきた買い物客が駐車するなら、新しい交通渋滞ポイントが生まれることになる。

2015年都知事規則第10号はカキリマ商人が暫定的に歩道を使うことを可能にしてい
る。しかしそれが可能なのは、公共・社会・文化的な利益、美観・経済性・治安・保健・
環境衛生に関する検討並びに地域レイアウト計画に沿ったものであるのを条件にしている
のだ。もちろん、ジャカルタが汚いスラムと化しても、都民が幸福でありさえすればよい、
というのを目的にしているのなら、話しはまた別なのだが。